現地時間6/4(金)に英エプソム競馬場にて行われた、G1-英オークス(芝1m4f6yds)、G1-コロネーションC(芝1m4f6yds)の結果と動画をお届けする。ディープインパクト産駒・Snowfallが衝撃的なパフォーマンスで英オークスを制覇し、新たなスターホースが誕生している。
Cazoo Oaks(G1・芝1m4f6yds・3歳牝馬)(British Champions Series)
・紫の帽子のSnowfallは序盤は外目の後方を追走。4角手前では各馬外ラチ沿いに誘導される形になり、Snowfallは持ったままの絶好の手応えでポジションを押し上げ、好位で直線へ。デットーリの手が動くと一気に弾け、独走状態となり最後は持ったままで1着ゴール。2着につけた着差は16馬身という歴史的な圧勝。1番人気のSanta Barbaraは5着。
1着:Snowfall
牝3、父・ディープインパクト、母・Best In The World、母父・Galileo
調教師:A P O’Brien、騎手:Frankie Dettori
・今回の勝利で通算9戦3勝、G1初制覇、重賞2勝目。2歳時はデビュー3戦目で勝ち上がるも、その後、重賞では4着→5着→9着→8着と精彩を欠くレースが続いたが、冬を越しフィジカル面で進化(A P O’Brien師曰く「She did very well over the winter physically」)。今年初戦となった前走5/12のG3-ムシドラS(芝1m2f56yds)を2着に3馬身3/4差をつけて逃げ切り勝ち。今回はRyan Mooreが同厩のSanta Barbara(1番人気)に騎乗するため、手が空いていたFrankie Dettoriを鞍上に迎え、2番人気で臨んでいた。2着につけた着差の16馬身は過去の英オークスでは1983年にSun Princess(フサイチコンコルドの祖母)が12馬身差で勝った記録を破る、最大着差での勝利。A P O’Brien師は英オークス9勝目、Frankie Dettori騎手は英オークス6勝目、英クラシック競走21勝目。
・今回の英オークスのRPR(レーシングポストレーティング)は123。ちなみに昨年9馬身差で勝ったLoveは122、2017年に5馬身差で勝ったEnableは123。英オークスに関してはEnable級のパフォーマンスだったという評価になる。今回の勝利を受けてウィリアムヒルでは追加登録が必要な身ながら、10/3の凱旋門賞のアンティポストでSnowfallを1番人気(7.00倍)に設定しているが、Enable級の勝ち方をした馬なら当然の評価で、今後のローテーションもここへ向けてのものとなろう。次走についてレース後にFrankie Dettoriが「この馬なら古馬相手でも恐れることはなく、古馬と対戦するのはまだ早いと恐れることもない」と言っていたとA P O’Brien師がコメント。2人との会話で7/17のアイリッシュオークスも検討されたようだが、このコメントからは7/24のキングジョージへ進むのが有力にみえるがどうなるか。
・鞍上のFrankie Dettoriは「これまでに多くのクラシックを勝ってきたが、これほど簡単なものはなかった」とコメント。仕掛けた際の手応えを「it was like a hot knife through butter」と表現。この表現は英語の慣用表現にあるもので辞書的に和訳すると、楽々と、簡単に、すばやく、いとも簡単に、たやすく、などとなる。
・ディープインパクト産駒が欧州クラシックを制するのはこれで5頭目。残り2世代(※2019年は3月末以降、種付けを行っていないため、2020年産まれの最終世代は頭数が限られる)となったディープインパクト産駒の中からこれらの馬に並ぶ馬が現れるか、注目となる。尚、2019年産の現2歳馬の中にはSnowfallの全弟、母が英オークスなどG1・7勝のマインディングの牡馬、母がG1・4勝のウィンターの牝馬、従兄にSaxon Warriorを持つ牡馬2頭などが含まれている。
Beauty Parlour(2009年産・牝馬):仏1000ギニー(プールデッセデプーリッシュ)
Saxon Warrior(2015年産・牡馬):英2000ギニー
Study of Man(2015年産・牡馬):仏ダービー(ジョッケクルブ賞)
Fancy Blue(2017年産・牝馬):仏オークス(ディアヌ賞)
Snowfall(2018年産・牝馬):英オークス
・母のBest In The Worldは2013年愛国産、9戦2勝、G3-ギブサンクスS(芝12f)、Listed-Staffordstown Stud Stakes(芝8f)の勝ち馬で、G2-ブランドフォードS(芝10f)2着、G3-ムンスターオークス(芝12f)3着。凱旋門賞、BCターフなどG1・3勝のFoundの全妹。Snowfallは初仔になる。
・祖母のRed Evieは英G1-ロッキンジS、愛G1-メイトロンS、英G2-ハンガーフォードS、英G3-オークツリーSの勝ち馬。繁殖牝馬として優秀な成績をおさめており、Best In The Worldの全姉・Foundは仏G1-凱旋門賞、米G1-BCターフ、仏2歳G1-マルセルブサック賞の3つのG1を含む重賞5勝、全姉・Magical Dreamは愛G3の勝ち馬、全妹・Divinelyも愛G3の勝ち馬で今回の英オークスに出走していたが3着に入線。
・父・ディープインパクト、母父・Galileoの配合はSaxon Warriorを筆頭に、カンタービレ(ローズS、フラワーC)、ヴァンキッシュラン(青葉賞)、Harajuku(クレオパトル賞)が重賞勝ち。母父としてのGalileoも続々と活躍馬を輩出中で、Ghaiyyath、Sottsass、Night Of Thunder、Galileo Gold、Magna Grecia、St Mark’s BasilicaなどがG1で結果を残している。
※レーシングポストのFULL result
https://www.racingpost.com/results/17/epsom/2021-06-04/780497
Coral Coronation Cup(G1・芝1m4f6yds・4歳以上)(British Champions Series)
・番手追走の赤の帽子のPyledriverがタッテナムコーナー手前で早めに先頭に立ち直線へ。直線は道中最後方を追走していた1番人気のAl Aasyが外から脚を伸ばし、Pyledriverに並びかけると2頭のマッチレースとなり、Al Aasyが抜け出たシーンもあったが、最後、内からPyledriverがしぶとく差し返して1着。
1着:Pyledriver
牡4、父・Harbour Watch、母・La Pyle、母父・Le Havre
調教師:William Muir & Chris Grassick、騎手:Martin Dwyer
・今回の勝利で通算11戦4勝、G1初制覇、重賞3勝目。昨年6/16のロイヤルアスコットのG2-キングエドワード7世S(芝1m3f211yds)で重賞初制覇。次走7/4のG1-英ダービーは11着。その後、8/19のG2-グレートヴォルティジュールS(芝1m3f188yds)に出走し1着。以後、G1-セントレジャーで3着、G1-英チャンピオンSで7着。今年は5/1のニューマーケットでのG2-ジョッキークラブS(芝1m4f)から始動し2着。今回は叩き2戦目でのレース。
・父のHarbour Watchは2009年愛国産のAcclamation産駒。現役時は2歳時のみ稼働し3戦3勝、英2歳G2-リッチモンドS(芝6f)の勝ち馬。6/12のデビュー戦から7/29のリッチモンドSまでの約1か月半の間に走った3戦とも圧勝続きで、翌年の英2000ギニーの最有力候補と目されていたがデューハーストSの前に後肢を故障し、その後、復帰することなく引退。Frankelと同じく2016年に産駒がデビューし、2歳戦から大きな期待を集めていたが、同年のファーストクロップサイアーランキングは7位と不発に終わる(79頭がデビューし勝ち上がったのは16頭のみ)。これまでの代表産駒はいずれもせん馬で、香港G1-香港スチュワーズC、香港G1-クイーンズシルバージュビリーCの勝ち馬・Waikuku、仏G2-コンセイユドパリ賞、愛G3-ヴィンテージクロップSの勝ち馬・Baron Samedi。Pyledriverは2頭目の産駒G1馬となる。
・母のLa Pyleは2011年仏国産、平地で11戦2勝、障害で4戦未勝利。Pyledriverは初仔。叔父のHelene Charisma(父・Air Chief Marshal)は仏G1-パリ大賞典の勝ち馬。叔母のNormandel(父・Le Havre)は愛G3-パークエキスプレスSの勝ち馬。母の叔母のLinngari(父・Indian Ridge)は独G1-バイエルンツフトレネン(ダルマイヤー大賞)、伊G1-ヴィットーリオディカープア賞など重賞6勝の活躍馬。
※レーシングポストのFULL result
https://www.racingpost.com/results/17/epsom/2021-06-04/780498