コラム・海外種牡馬特集【1】欧州繋養種牡馬の現況を俯瞰する

1・はじめに

本稿は今季の欧州繋養種牡馬の父系別の産駒活躍状況をまとめて、現在の勢力図、勢いを俯瞰する目的でまとめている。尚、今回は欧州繋養種牡馬の内、北半球で産まれた産駒が世界で獲得した賞金上位100頭の種牡馬をピックアップし、これらの種牡馬がどれだけのG1馬、重賞勝ち馬を輩出しているのか、「頭数」に着目してまとめたデータになる。おおまかな傾向、トレンドを掴む用途でお読み頂ければ幸いである。最後にBMSの現況についてもまとめているので合わせてご参照頂きたい。

※データは現地時間10/24の2:31時点のTDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)にてアップされたものを参照している。

※カウント対象は世界になり、欧州、北米、日本、ドバイ、南半球等となる。欧州繋養のKingman産駒で北半球のドイツで産まれたシュネルマイスターはカウント対象となるが、欧州繋養のFrankel産駒で南半球のオーストラリアで産まれたHungry Heart(今年G1・2勝)はカウント対象外となる。

2・概要

上位100頭の種牡馬の産駒が今年輩出したG1馬は74頭、重賞勝ち馬は314頭になるが、これを大まかに3分類すると以下のようになる。併記した全体比はG1馬は74を、重賞勝ち馬は314を分母にして算定したものとなる。

始祖G1馬数全体比重賞勝ち馬数全体比
Northern Dancerを始祖とする系統5979.73%24878.98%
Mr. Prospectorを始祖とする系統1216.22%5316.88%
その他の系統34.05%134.14%

・Northern Dancerを始祖とする系統が8割近い占拠率を誇り、圧倒的な優位性を示していることが分かる。

2-1・Northern Dancerを始祖とする系統の主力種牡馬

・Northern Dancerを始祖とする種牡馬の内、G1馬輩出頭数と重賞勝ち馬輩出頭数の上位種牡馬は以下の通りとなる。

G1馬輩出頭数の上位種牡馬

Frankel(6頭)
 Adayar(英ダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS)
 Hurricane Lane(愛ダービー、パリ大賞、英セントレジャー)
 Alpinista(ベルリン大賞、オイロパ賞)
 Snow Lantern(ファルマスS)
 Inspiral(フィリーズマイル)
 Wild Beauty(ナタルマS)

Galileo(4頭)
 Love(プリンスオブウェールズS)
 Joan Of Arc(仏オークス)
 Empress Josephine(愛1000ギニー)
 Bolshoi Ballet(ベルモントダービー招待S)

Camelot(3頭)
 Santa Barbara(ビヴァリーD.ステークス、ベルモントオークス招待S)
 Sir Dragonet(H E タンクレッドS)
 Luxembourg(フューチュリティトロフィー)

Kingman(3頭)
 Palace Pier(ジャックルマロワ賞、クイーンアンS、ロッキンジS)
 Domestic Spending(マンハッタンS、ターフクラシックS)
 シュネルマイスター(NHKマイルC)

Dark Angel(3頭)
 Althiqa(ダイアナS、ジャストアゲームS)
 Angel Bleu(ジャンリュックラガルデール賞、クリテリウムアンテルナシオナル)
 Raging Bull(メイカーズ46マイルS)

重賞勝ち馬輩出頭数のベスト10

Galileo(16頭)
Sea the Stars(14頭)
FrankelKingman(12頭)
Dark Angel(11頭)
Lope de Vega(10頭)
AustraliaZoffanyShamardalSiyouni(8頭)

2-2・Mr. Prospectorを始祖とする系統の主力種牡馬

・Mr. Prospectorを始祖とする種牡馬の内、G1馬輩出頭数首位種牡馬と重賞勝ち馬輩出頭数の上位種牡馬は以下の通りとなる。

G1馬輩出頭数の首位種牡馬

Dubawi(4頭)
 Lord North(ドバイターフ)
 Albahr(サマーターフ)
 Space Blues(フォレ賞)
 Creative Force(ブリティッシュチャンピオンズスプリントS)

重賞勝ち馬輩出頭数のベスト7

Dubawi(23頭)
Wootton Bassett(8頭)
Night of ThunderIffraaj(5頭)
Make BelieveNew Bay(3頭)
Pride of Dubai(2頭)

2-3・その他の馬を始祖とする系統

・その他の馬を始祖とする種牡馬の内、今年G1馬を輩出した種牡馬はKendargentDream AheadLeroidesanimauxの3頭。重賞勝ち馬輩出頭数のベスト3は、Le Havre(4頭)、Kendargent(3頭)、Maxios(2頭)になる。

3・Northern Dancerを始祖とする系統

以下は先述の「Northern Dancerを始祖とする系統」を細分化して示したものになる。併記した全体比はG1馬は74を、重賞勝ち馬は314を分母にして算定したものとなる。

始祖G1馬数全体比重賞勝ち馬数全体比
Sadler's Wells2533.78%8226.11%
Danzig→デインヒル1216.22%4514.33%
Danzig→Green Desert1114.86%5216.56%
トライマイベスト68.11%288.92%
Storm Bird→Storm Cat34.05%247.64%
Nureyev22.70%144.46%
その他00%30.96%

3-1・Sadler’s Wells系

・Sadler’s Wells系の概要は以下の通り。Galileo、Montjeu、In The Wings、High Chaparralの4頭からサイアーラインが伸びている。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Sadler’s Wells
└Galileo(4,16)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
 └Frankel(6,12)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
 └Australia(2,8):Broome(サンクルー大賞)、Mare Australis(ガネー賞)
 └Nathaniel(2,4):Lady Bowthorpe(ナッソーS)、Mutamakina(E.P.テイラーS)
 └Gleneagles(1,6):Loving Dream(ロワイヤリュー賞)
 └Teofilo(1,4):Subjectivist(ゴールドC)※集計締切後にScopeがロワイヤルオーク賞を制覇
 └Galiway(1,2):Sealiway(英チャンピオンS)
 └Intello(0,4)、The Gurkha(0,1)
 └New Approach(2,2):Mac Swiney(愛2000ギニー)、Cascadian(ドンカスターマイル)
  └Dawn Approach(1,1):Poetic Flare(英2000ギニー、セントジェームズパレスS)

└Montjeu
 └Camelot(3,6)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
 └Motivator(0,1)

└In The Wings
 └Adlerflug(1,4):Torquator Tasso(凱旋門賞、バーデン大賞)
 └Soldier Hollow(0,6)

└High Chaparral
 └Toronado(1,2):Tribhuvan(ユナイテッドネーションズS)
 └So You Think(0,2)、Free Eagle(0,1)

注目種牡馬:Galiway

・英チャンピオンSの勝ち馬・Sealiwayを輩出したことで注目を集めているが、今年は40頭しか産駒が出走しておらず、その中からSealiway、Esopeの2頭が重賞制覇。40分の2=5.0%で重賞勝ち馬を輩出しているというのはかなりのハイレートで、5%超の種牡馬を列記すると、Dubawi(7.1%)、Sea the Stars(6.0%)、Galileo(5.8%)、Kingman(5.2%)、Adlerflug(5.0%)と一流種牡馬の名前がずらりと並ぶ。

3-2・Danzig→デインヒル系

・Danzig→デインヒル系の概要は以下の通り。欧州では主に、Dansili、Kodiac、Danehill Dancer、Exceed and Excelを経由して広がっているサイアーライン。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

デインヒル
└Dansili(2,5):Blowout(ファーストレディS)、Juliet Foxtrot(ジェニーワイリーS)
 └Zoffany(1,8):Mother Earth(英1000ギニー、ロートシルト賞)
 └Bated Breath(0,4)

└Kodiac(2,7):Campanelle(コモンウェルスC)、El Bodegon(クリテリウムドサンクルー)
 └Kodi Bear(0,1)

└Danehill Dancer
 └Mastercraftsman(1,4):Discoveries(モイグレアスタッドS)
 └Choisir
  └Starspangledbanner(1,3):State Of Rest(コックスプレート)
  └Olympic Glory(1,3):Grand Glory(ジャンロマネ賞)
 └Planteur(1,1):Trueshan(カドラン賞、グッドウッドカップ)

└Champs Elysees(1,3):Selino(シドニーカップ)

└Exceed and Excel
 └Bungle Inthejungle(1,1):Winter Power(ナンソープS)
 └Excelebration(0,1)

└Holy Roman Emperor(1,1):Rockemperor(ジョーハーシュターフクラシックS)

└Mozart
 └Dandy Man(0,3)

3-3・Danzig→Green Desert系

・Danzig→Green Desert系の概要は以下の通り。Invincible Spirit、Cape Cross、Oasis Dreamの3頭の種牡馬を主に経由して発展中のサイアーライン。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Green Desert
└Invincible Spirit(0,5)
 └Kingman(3,12)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
 └Mayson(1,2):Oxted(キングズスタンドS)
 └Territories(1,1):Rougir(オペラ賞)
 └Shalaa(1,1):No Speak Alexander(メイトロンS)
 └Cable Bay(0,2)、Born To Sea(0,1)
 └I Am Invincible
  └Brazen Beau(0,1)

└Cape Cross(1,2):Walton Street(カナディアンインターナショナルS)
 └Sea the Stars(2,14):Baaeed(クイーンエリザベス2世S、モーリスドゲスト賞)、Teona(ヴェルメイユ賞)
  └Sea the Moon(0,3)

└Oasis Dream(1,5):Native Trail(デューハーストS、ヴィンセントオブライエンナショナルS)
 └Muhaarar(1,1):Eshaada(ブリティッシュチャンピオンズフィリー&メアS)
 └Showcasing(0,1)

3-4・トライマイベスト系

・トライマイベスト系の概要は以下の通り。トライマイベストの曾孫・AcclamationがDark Angelを筆頭に多くの後継種牡馬を出し、サイアーラインが紡がれている現況。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

トライマイベスト
└ワージブ
 └Royal Applause
  └Acclamation(0,5)
   └Dark Angel(3,11)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
   └Harbour Watch(2,3):Pyledriver(コロネーションC)、Waikuku(クイーンズシルバージュビリーC)
   └Mehmas(1,7):Going Global(デルマーオークス)
   └Equiano(0,2)

注目種牡馬:Mehmas

・昨年の2歳戦で101頭の産駒が出走し56頭が勝ち上がり(55.45%)、SupremacyがG1-ミドルパークS、G2-リッチモンドSを制するなど圧倒的な成績を残し、欧州リーディングフレッシュマンサイアーに輝いた新進気鋭の種牡馬。2世代の稼働でG1馬2頭を含む9頭の重賞勝ち馬を輩出中で、今年の2歳戦も勝ち上がり率45.45%、欧州2歳リーディング3位と好調。

・先のG1-ブリティッシュチャンピオンズスプリントSで産駒のMinzaal(牡3)が3着に食い込んでおり、2歳戦だけではなく、このように3歳以降も産駒の活躍が見られるようになればさらに種牡馬としての評価も上がる印象。昨年の産駒の活躍を受けて今年交配された繁殖の質はかなり上がっているはずで、3年後以降の産駒動向には特に注目が集まる。

3-5・Storm Bird→Storm Cat系

・Storm Bird→Storm Cat系の概要は以下の通り。Storm CatからGiant’s Causewayを経由する父系と、Storm Catからヘネシー→ヨハネスブルグ→Scat Daddyを経由する父系がある。今年はG1馬が出ていないが、Lope de Vegaが10頭の重賞勝ち馬を出しているのは目立つ数字。Shamardalの後継種牡馬はこれから産駒がデビューするPinatubo、Blue Pointが控えており、さらに父系が繁栄しそうだがどうなるか。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Storm Cat
└Giant’s Causeway
 └Shamardal(1,8):Emaraaty Ana(スプリントC)
  └Lope de Vega(0,10)
 └Footstepsinthesand(1,2):Marianafoot(モーリスドゲスト賞)

└ヘネシー
 └ヨハネスブルグ
  └Scat Daddy
   └No Nay Never(1,4):Alcohol Free(サセックスS、コロネーションS)

3-6・Nureyev系

・Nureyev系の概要は以下の通り。Pivotalの直仔・Siyouniが大物・St Mark’s Basilicaを出したことで、今後さらなる隆盛が見込まれる父系である。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Nureyev
└Polar Falcon
 └Pivotal(1,4):Addeybb(クイーンエリザベスS)
  └Siyouni(1,8):St Mark’s Basilica(愛チャンピオンS、エクリプスS、仏ダービー、仏2000ギニー)
  └Kyllachy
   └Twilight Son(0,2)

St Mark’s Basilicaの5代血統表について

・以下の血統表を見ると、St Mark’s Basilica産駒は「4」の位置にデインヒル、Sadler’s Wellsが位置し、「3」の位置にGalileoが位置することになる母父・Galileoの繁殖牝馬と交配された場合、産駒はGalileoの3×3のクロスを持つことになる。尚、昨年の凱旋門賞馬で同じSiyouni産駒のSottsassの母父もSt Mark’s Basilica同様、Galileoのため、Sottsass産駒についても同じことが言える。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001349309/pedigree/

3-7・その他の父系

・その他の父系はDanzigからデインヒル、Green Desertを経由しない2系統から2頭の種牡馬がランクインしているが、いずれもG1馬は出せていない。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Danzig
 └Anabaa
  └Anodin(0,2)
 └War Front
  └War Command(0,1)

4・Mr. Prospectorを始祖とする系統

・概要は以下の通り。主軸はDubawiとその後継種牡馬になるが、Wootton Bassettが今年よりクールモアスタッド供用となり、繁殖の質が上がることから突き抜けた大物誕生の期待が高まっている現況。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Mr. Prospector
└Seeking the Gold
 └Dubai Millennium
  └Dubawi(4,23)※G1勝利馬名とレース名は前掲済
   └Night of Thunder(1,5):Thundering Nights(プリティポリーS)
   └Make Believe(1,3):Mishriff(インターナショナルS、ドバイシーマクラシック)
   └New Bay(1,3):Saffron Beach(サンチャリオットS)
   └Poet’s Voice(0,1)

└Gone West
 └Zafonic
  └Iffraaj(0,5)
   └Wootton Bassett(2,8):Incarville(サンタラリ賞)、Zellie(マルセルブサック賞)

 └Elusive Quality
  └Sepoy(1,1):Salute the Soldier(マクトゥームチャレンジラウンド3)
  └Raven’s Pass(1,1):Romantic Proposal(フライングファイブS)

└Machiavellian
 └Medicean
  └Dutch Art(1,1):Starman(ジュライC)
  └Street Cry
   └Pride of Dubai(0,2)

5・Northern DancerとMr. Prospectorを経由しない系統

・Blushing Groomの孫になるLeroidesanimaux、Grey Sovereignからゼダーンを経由する父系から出たKendargent、Man o’ WarからIntentを経由する父系から出たDream Aheadの3頭がG1馬を輩出している。

※()内の数字は左の赤字が輩出したG1馬の数、右が輩出した重賞勝ち馬の数になり、重賞勝ち馬が出ていない種牡馬は記入していない。各種牡馬の横に今年G1を制した馬とレース名を併記している。

Nasrullah
└Red God
 └Blushing Groom
  └Candy Stripes
   └Leroidesanimaux(1,1):Zaaki(アンダーウッドS、ドゥーンベンC)
  └Rahy
   └Rio de la Plata(0,1)
   └Noverre
    └Le Havre(0,4)

└Grey Sovereign→ゼダーン→Kalamoun→Kenmare→Kendor→Kendargent(1,3):Skalleti(イスパーン賞)

└Never Bend→Mill Reef→Shirley Heights→Darshaan→Dalakhani→Reliable Man(0,1)

Man o’ War→War Relic→Intent→Intentionally→In Reality→Known Fact→ウォーニング→ディクタット→Dream Ahead(1,1):Dream of Dreams(ダイヤモンドジュビリーS)

Blandford→Bahram→PersianGulf→Tamerlane→DschingisKhan→Königsstuhl→Monsun→Maxios(0,2)

6・BMSの現況について

上位100頭のBMSの産駒が今年輩出したG1馬は56頭、重賞勝ち馬は264頭になるが、これを大まかに3分類すると以下のようになる。併記した全体比はG1馬は56を、重賞勝ち馬は264を分母にして算定したものとなる。

始祖G1馬数全体比重賞勝ち馬数全体比
Northern Dancerを始祖とする系統3460.71%18469.70%
Mr. Prospectorを始祖とする系統814.29%3212.12%
その他の系統1425.00%1318.18%

・種牡馬でも同様の3分類で全体比を集計しているが、「Northern Dancerを始祖とする系統」がG1馬数で79.73%→60.71%、重賞勝ち馬数で78.98%→69.70%へ減少。「Mr. Prospectorを始祖とする系統」もG1馬数で16.22%→14.29%、重賞勝ち馬数で16.88%→12.12%へ減少している。

・「その他の系統」がG1馬数で4.05%→25.00%へ大幅増、重賞勝ち馬数も4.14%→18.18%へ大幅増となっており、BMSは父とは若干異なる勢力図となっている。

6-1・BMSのG1馬輩出頭数上位

1位:Danehill Dancer(6頭)

・6頭のG1馬中、4頭は父がSadler’s Wells系の種牡馬。

 Subjectivist(ゴールドカップ、父・Teofilo)
 Empress Josephine(愛1000ギニー、父・Galileo)
 Helvic Dream(タタソールズゴールドC、父・Power)
 Luxembourg(フューチュリティトロフィー、父・Camelot)
 Loving Dream(ロワイヤリュー賞、父・Gleneagles)
 Waikuku(クイーンズシルバージュビリーC、父・Harbour Watch)

2位:Galileo(3頭)

・St Mark’s BasilicaとSnowfallの大物2頭をBMSとして輩出。

 St Mark’s Basilica(愛チャンピオンS、エクリプスS、仏ダービー、仏2000ギニー、父・Siyouni)
 Snowfall(英オークス、愛オークス、ヨークシャーオークス、父・ディープインパクト)
 Angel Bleu(クリテリウムアンテルナシオナル、ジャンリュックラガルデール賞、父・Dark Angel)

2位:Pivotal(3頭)

 Love(プリンスオブウェールズS、父・Galileo)
 Tenebrism(チェヴァリーパークS、父・Caravaggio)
 Wild Beauty(ナタルマS、父・Frankel)

2位:Anabaa(3頭)

 Marianafoot(モーリスドゲスト賞、父・Footstepsinthesand)
 Bolshoi Ballet(ベルモントダービー招待S、父・Galileo)
 Coeursamba(仏1000ギニー、父・The Wow Signal)

5位:Raven’s PassCape CrossデインヒルRed RansomNayefKendargentChoisir(2頭)

6-2・BMSの重賞勝ち馬輩出頭数上位

1位:Galileo(19頭)
2位:Dansili(16頭)
3位:Danehill Dancer(14頭)
4位:Oasis Dream(12頭)
5位:Pivotal(10頭)

6-3・BMSのG1馬輩出率上位(G1馬頭数÷出走頭数)

・KendargentはSealiway(英チャンピオンS、父・Galiway)とSisfahan(ドイチェスダービー、父・Isfahan)の2頭のG1馬をBMSとして輩出し、輩出率トップ。

1位:Kendargent(3.5%・2頭)
2位:Soldier Hollow(3.1%・1頭)
3位:Choisir(2.8%・2頭)
4位:Titus Livius(2.1%・1頭)
5位:Red Clubs(2.0%・1頭)

6-4・BMSの重賞勝ち馬輩出率上位(重賞勝ち馬頭数÷出走頭数)

1位:Le Havre(5.2%・3頭)
2位:Titus Livius(4.2%・2頭)
3位:Muhtathir(3.7%・4頭)
3位:Observatory(3.7%・2頭)
5位:Kendargent(3.5%・2頭)※2頭ともG1勝ち

6-5・系統別のG1馬輩出頭数、重賞勝ち馬輩出頭数について

※()内の数字は左の赤字がBMSとして輩出したG1馬の数、右がBMSとして輩出した重賞勝ち馬の数になる。

Northern Dancerを始祖とする系統

 Sadler’s Wells系(7,56)
 Danzig→デインヒル系(13,61)
 Danzig→Green Desert系(4,29)
 トライマイベスト系(1,8)
 Storm Bird→Storm Cat系(1,5)
 Nureyev系(3,14)
 その他(5,11)

Mr. Prospectorを始祖とする系統(8、32)

Northern DancerとMr. Prospectorを経由しない系統(14、48)

6-6・最も多くG1馬を輩出しているのはNorthern DancerとMr. Prospectorを経由しない系統

・父系としては欧州では傍流になる系統がBMSとして存在感を示しており、Hurricane LaneSealiwayなどの大物がここから出ている。Fancy Blueなど現役時に欧州で実績を残したディープインパクト牝駒が繁殖入りするとまさにこのカテゴリーになり、今の欧州の父系の現況を踏まえると近い未来にBMS・ディープインパクトが欧州で猛威を振るう可能性は決して少なくないだろう。

・以下にNorthern DancerとMr. Prospectorを経由しない系統から出たG1馬14頭の出自を示す。

()内の数字は左の赤字がBMSとして輩出したG1馬の数、右がBMSとして輩出した重賞勝ち馬の数になる。

①Native Dancerを始祖とするBMS

Native Dancer
└エタン
 └Sharpen Up
  └Selkirk(1,5):Inspiral(フィリーズマイル、父・Frankel)
  └Diesis
   └Elmaamul
    └Muhtathir(1,4):Rockemperor(ジョーハーシュターフクラシックS、父・Holy Roman Emperor)

②Grey Sovereign→ゼダーンを始祖とするBMS

Grey Sovereign
└ゼダーン
 └Kalamoun
  └Kenmare
   └Kendor
    └Kendargent(2,2):Sealiway(英チャンピオンS、父・Galiway)、Sisfahan(独ダービー、父・Isfahan)
   └Highest Honor
    └Verglas(1,2):Lady Bowthorpe(ナッソーS、父・Nathaniel)

③Blushing Groomを始祖とするBMS

Blushing Groom
└Rainbow Quest(1,1):Mare Australis(ガネー賞、父・Australia)
└Rahy
 └Noverre
  └Le Havre(1,3):Pyledriver(コロネーションC、父・Harbour Watch)

④Mill Reefを始祖とするBMS

Mill Reef
└Doyoun
 └Daylami(1,1):Grand Glory(ジャンロマネ賞、父・Olympic Glory)
└Shirley Heights
 └Darshaan
  └Dalakhani(1,4):Shantisara(クイーンエリザベス2世チャレンジカップS、父・Coulsty)

⑤Hail to Reason→Robertoを始祖とするBMS

Roberto
└Red Ransom(2,3):Selino(シドニーC、父・Champs Elysees)、Homesman(オーストラリアンC、父・War Front)
 └Red Clubs(1,1):Snow Lantern(ファルマスS、父・Frankel)

⑥その他

Monsunの直仔・Shirocco(1,2)がHurricane Lane(愛ダービー、パリ大賞、英セントレジャー、父・Frankel)を輩出。

ウォーニングの直仔・Diktat(1,3)がRomantic Proposal(フライングファイブS、父・Raven’s Pass)を輩出。

7・最後に

今回は欧州繋養種牡馬の概要にフォーカスしてまとめてきたが、Galileoが亡くなり、その王位の座にFrankelが就くことになりそうな目下の状況は一つの転換期とも言え、大変興味深い状況であることは確かだろう。今後は個別の種牡馬にも着目しつつ、欧州競馬の「今」について種牡馬にフォーカスしながら定期的に触れていく予定である。

次回の本コラムは北米繋養種牡馬にフォーカスしていく。欧州と比べて多様性がある印象のアメリカの血統状況はどうなっているのか、ブリーダーズカップの結果が反映されたデータを元に現況、トレンドを追っていく予定である。