今回も前回に続き世代ごとにまとめたデータを用い、ポストディープの座を巡る争いを考察していく。対象期間は2歳戦開始から3歳11月末までとなり、対象レースはJRAの平地レースになる。今回は産駒の重賞戦績にフォーカスし、どれだけの割合でジャパンC開催週までに重賞勝ち馬を出してきたのか、過去の名種牡馬のデータと比較して数字の価値を探っていく。

1・世代ごとのデータから見る重賞勝ち馬輩出率について

ディープインパクト産駒の栄光の軌跡

・今回は血統登録頭数を分母にして世代ごとの重賞勝ち馬頭数、G1勝ち馬頭数を分子にし、それぞれの率を算出している。対象期間を前述のとおり、2歳戦開始から3歳11月末までとしているため、当該世代のジャパンカップ開催週までにどれくらいの重賞勝ち馬を出しているか、をまとめたものになる。まず、比較の基準となるディープインパクトの数値を以下に示す。

血統登録頭数重賞勝ち馬頭数G1馬数
200814764.1%21.4%
2009159106.3%31.9%
201011754.3%21.7%
201113753.6%32.2%
201214785.4%32.0%
2013153127.8%53.3%
201417663.4%21.1%
201517284.7%42.3%
2016154106.5%53.2%
201715885.1%10.6%
201814142.8%21.4%

・このリストを見ると、ディープインパクト産駒のピークは2013年産の6thクロップになることが分かる。2010年デビューの1stクロップからマルセリーナ(桜花賞)、リアルインパクト(安田記念)が次々とG1を制したのが2011年の春。この翌年2012年に種付けされ、2013年に産まれたのが6thクロップで、この世代からマカヒキ(ダービー)、ディーマジェスティ(皐月賞)、サトノダイヤモンド(菊花賞)、シンハライト(オークス)、ヴィブロス(秋華賞)が出現。3歳牡・牝の3冠6レースの内、桜花賞以外の全レースをディープインパクト産駒が制覇したエポックメイキングな年。

現3歳までの11世代の重賞勝ち馬輩出率の平均は4.9%換言すると約20頭中、1頭は3歳のジャパンカップ開催週までに何らかの重賞は制している、ということになる。ちなみに重賞勝ち馬82頭の内、3歳11月末までに32頭がG1を制しており、G1馬輩出率は1.9%。今後はこのディープインパクト産駒が占拠してきた膨大な枠を獲りあう争いが展開されていくことになる。

一流種牡馬の重賞勝ち馬輩出率、G1馬輩出率とは?

・次に長きに渡りディープインパクトと競い合ってきた有力種牡馬、ハーツクライ、キングカメハメハ、ステイゴールド、ダイワメジャーの数値を示す。尚、対象年度は実際はもっと早く産駒がデビューしている場合でもディープインパクトの1stクロップがデビューした年以降、としており、ディープインパクト産駒がいるのといないのとでは数字の意味が異なると判断させて頂いている。

種牡馬名重賞勝ち馬輩出率最高値最低値G1馬輩出率
ハーツクライ1.6%3.0%0.7%0.6%
キングカメハメハ1.7%4.2%0.0%0.71%
ステイゴールド1.7%4.2%0.7%0.77%
ダイワメジャー1.0%1.9%0.0%0.5%

・ステイゴールドはオルフェーヴル、ゴールドシップらG1馬7頭を輩出し、G1勝利数では対象年度内でディープインパクト(67勝)に次ぐ19勝を記録。キングカメハメハはロードカナロアドゥラメンテ、レイデオロらG1馬10頭を輩出し、G1を16勝。ハーツクライはジャスタウェイ、リスグラシュー、スワーヴリチャードらG1馬8頭を輩出し、G1を12勝。ダイワメジャーはアドマイヤマーズ、メジャーエンブレムらG1馬6頭を輩出し、G1を8勝。

・この4頭の数字を見ると、これら名種牡馬でも世代単位で見ると重賞勝ち馬輩出率が1%未満の年もあり、それなりに浮き沈みがある事が分かるが、平均で見ると重賞勝ち馬輩出率1.7%、G1馬輩出率0.7%ならかなり優秀、と言える。次にポストディープの座を巡る争いを繰り広げている若い種牡馬はどれくらいの数字になっているのか、を見て行くことにする。

キズナの重賞勝ち馬輩出率はキンカメ、ハーツクライ級

・前回取り上げたロードカナロア、キズナエピファネイアモーリス、ドゥラメンテの重賞勝ち馬輩出率を以下に示す。

種牡馬名血統登録頭数重賞勝ち馬頭数
ロードカナロア201518031.7%
ロードカナロア201619563.1%
ロードカナロア201715900.0%
ロードカナロア201817310.6%
キズナ201718252.7%
キズナ201813832.2%
エピファネイア201715710.6%
エピファネイア201814310.7%
モーリス201817631.7%
ドゥラメンテ201818910.5%

・重賞勝ち馬輩出率はロードカナロアが4世代平均で1.3%キズナが2世代平均で2.5%エピファネイアが2世代平均で0.7%モーリスが1.7%ドゥラメンテが0.5%。先に示したかなり優秀なレベルの1.7%をクリアしているのはキズナとモーリスの2頭になる。キズナは1stクロップ、2ndクロップ共に2%超の重賞勝ち馬輩出率をマークしているが、これはオルフェーヴル、ゴールドシップを輩出したステイゴールドの最高潮期(2008年産で4.1%、2009年産で4.2%)には劣るがハーツクライ(2013年産で2.4%、2014年産で2.1%)、キングカメハメハ(2012年産で2.6%、2013年産で2.2%、2014年産で2.0%)に比肩するかなり優秀な実績

・尚、ステイゴールドの上記した最高潮期(2008年産、2009年産)は、2ndクロップのドリームジャーニーの活躍が大きく関係しており、ドリームジャーニーが朝日杯フューチュリティSを制したのが2006年、神戸新聞杯を制したのが2007年。これを受けて種付料は2006年:100万円(受胎条件)→2007年:300万円(受胎条件)→2008年:250万円(受胎条件)と右肩上がりとなり、ステイゴールドの評価が急騰した2007,2008年に種付けされ、次の年に産まれた世代から以下の重賞勝ち馬を3歳11月末までに出している。

 2008年産のステイゴールド産駒(※重賞9勝はディープインパクトの6勝を凌ぎ、この世代1位)

 オルフェーヴル:皐月賞、日本ダービー、菊花賞、スプリングS、神戸新聞杯
 フェイトフルウォー:セントライト記念、京成杯
 バウンシーチューン:フローラS
 ナカヤマナイト:共同通信杯

 2009年産のステイゴールド産駒(※重賞6勝はディープインパクトの16勝に次ぐこの世代2位)
 
 ゴールドシップ:皐月賞、菊花賞、神戸新聞杯、共同通信杯
 フェノーメノ:青葉賞、セントライト記念

・モーリスの1stクロップでの1.7%はロードカナロアの1stクロップでの数字とほぼ同じ。1stクロップで1.7%という数字はカレンブラックヒル、エピセアローム、トーセンベニザクラが出たダイワメジャーの1stクロップ(1.9%)の数字に近く、優秀。ドゥラメンテの1stクロップでの0.5%という数字は同じ1stクロップでの比較でルーラーシップ(0.8%)、ハービンジャー(0.7%)より劣る数字で物足りなくみえる。

・尚、ハービンジャーは2014年産から3世代連続で2%超の数字を記録し、ポテンシャルの高さを感じさせているが、以後、2世代連続で重賞勝ち馬を出せずやや低迷。ただ巻き返しの要素はあり、ハービンジャー産駒は2017年秋にディアドラ(秋華賞)、モズカッチャン(エリザベス女王杯)、ペルシアンナイト(マイルチャンピオンシップ)が次々にG1を制覇。その翌年の2018年は種付頭数が前年比プラス50頭と急増した年で(164頭→214頭)、この時に種付けされ、2019年に産まれた世代が現2歳馬。この世代はハービンジャーの真価が問われる世代と言え、先週までに17頭が勝ち上がり、2勝馬を2頭出している2歳戦の現況からみて、あまりいいところが無かった近2世代とは異なる雰囲気が既に漂っている。ハービンジャー産駒の現2歳馬は今後要注目となる。

・ちなみに2018年産(現3歳)のディープインパクト産駒は重賞勝ち馬頭数(4頭)、重賞勝ち馬輩出率(2.8%)が生涯最低の成績となった世代。Snowfallが欧州で大活躍したようにクオリティは落ちていないが、結果的に晩年感を感じさせる成績となっており、ライバル種牡馬にはある種のチャンスが生じていた世代。このチャンスを最も活かした種牡馬を探ると、2017年産は重賞勝ち馬を出せなかったキングカメハメハが2018年産からは3頭の重賞勝ち馬(アンドヴァラナウト、ホウオウアマゾン、ヴァイスメテオール)を出し、4.2%の重賞勝ち馬輩出率を記録。前述したステイゴールドの最高潮期に匹敵する数字を残し大種牡馬の貫禄を見せている。

エピファネイアのG1馬輩出率はハーツクライ超え

・続いてロードカナロア、キズナ、エピファネイア、モーリス、ドゥラメンテのG1馬輩出率を以下に示す。

種牡馬名血統登録頭数G1馬頭数G1馬輩出率
ロードカナロア70730.42%
キズナ32000.00%
エピファネイア30020.67%
モーリス17610.57%
ドゥラメンテ18910.53%

G1馬輩出率は先に示したかなり優秀なレベルの0.7%をクリアしている馬はゼロ最も近い数字はエピファネイアの0.67%になり、2世代での数字にはなるがハーツクライ(0.6%)、ダイワメジャー(0.5%)は上回っている。尚、キズナは産駒のアカイイトがエリザベス女王杯を勝っているが4歳馬のため、ここではノーカウント扱いになる。繰り返しになるが、本稿は3歳ジャパンカップ終了週までにどれだけの重賞勝ち馬、G1馬を出しているのか、をまとめようとしている点にご留意頂きたい。

種付料の推移からみる暫定チャンピオン争い

・エピファネイアは先日、来年の種付料が1800万円になると報じられたが、デアリングタクトもエフフォーリアも種付料250万円の時の世代。ハーツクライの種付料の最高額が1000万円だったのと比べると割高感があるように見えなくもないが、主砲ディープインパクト無き時代の今、最もクラシックホース生誕の期待がかけられる種牡馬としての位置にエピファネイアがいた、という時代の流れがそうさせた側面が大きいだろう。ただ、今週の阪神ジュベナイルフィリーズでサークルオブライフ or タナザウィングが勝つと、早々に3世代連続でのG1馬輩出達成となり、仮にそうなればポストディープの座を巡る争いにおいて暫定的に名実ともにエピファネイアがポールポジションについたと言って良さそうで、その意味で今週は王手がかかった重大局面となる。尚、サークルオブライフとタナザウィングはデアリングタクト、エフフォーリア、アリストテレス、オーソクレース、ディヴァインラヴと同じくエピファネイア産駒の成功事例を踏襲するサンデーサイレンス4×3のインブリードを持つ馬である

種付料種付頭数当該世代の代表産駒
2016250万円221頭デアリングタクト
2017250万円210頭エフフォーリア
2018250万円220頭サークルオブライフ
2019250万円224頭※現1歳
2020500万円240頭※現当歳
20211000万円218頭
20221800万円-

・アーモンドアイがドバイターフ、天皇賞(秋)を制し、サートゥルナーリアが皐月賞馬となった翌年、ロードカナロアは自身最高の2000万円の種付料となったが、これも前年のディープインパクトの死という大きな要因があった上に、立て続けに活躍馬が出たという時代の流れが大きく後押しした同様の現象だろう。その時点では暫定的にポストディープの座の筆頭に躍り出たロードカナロアだが、近2世代のロードカナロア産駒の成績を見ると(最初の2世代で9頭の重賞勝ち馬を出すも、近2世代では3歳11月末までという条件下では1頭しか重賞勝ち馬を出せていない)、継続的に活躍馬を送り出すことはそう簡単なことではないことが分かる。もちろん、種付料2000万円の時の世代のデビューは2023年なので、まだ2000万円が適正価格だったかどうかは分からないのだが。

種付料種付頭数当該世代の代表産駒
2014500万円250頭アーモンドアイ
2015500万円276頭サートゥルナーリア
2016500万円267頭パンサラッサ
2017500万円250頭レイハリア
2018800万円294頭キングエルメス
20191500万円245頭※現1歳
20202000万円179頭※現当歳
20211500万円155頭
20221500万円-

海外産の繁殖牝馬に多く種付されている種牡馬について

・前回のコラムでディープインパクトは母が海外産のG1(級)競走勝ち馬が31頭、母が日本産のG1(級)競走勝ち馬が15頭というデータを示したが、参考データとして今年1月の社台グループの繁殖牝馬名鑑より、有力種牡馬の昨年の配合相手に海外産の母が何頭含まれているか、ノーザンファーム生産馬の動向をまとめて示す。あくまでも参考資料になるが、先々、これらの中にG1馬が含まれている可能性は高いと思われ、3年後にデビューする世代を展望する上で非常に有益なデータと思われるのでご参照頂きたい。

種牡馬名2020年種付頭数配合相手が海外産馬
モーリス52917.3%
ロードカナロア451124.4%
レイデオロ4424.5%
キズナ362672.2%
ドゥラメンテ352674.3%
エピファネイア3326.1%
リアルスティール322475.0%
スワーヴリチャード231252.2%
サトノダイヤモンド221463.6%
キタサンブラック151280.0%
ハーツクライ1212100.0%

・このリストを見ると、エピファネイア、モーリスの少なさはサンデーサイレンスのクロスをまず意図して、日本産馬との配合が最優先となっているのではないか、と推察出来る。レイデオロも同様にウインドインハーヘアの牝馬クロスを意図すると、当然、選択肢は海外産馬では無くなるだろう。

・逆に海外産馬との配合が多数を占めているのがキズナ、ドゥラメンテ、リアルスティール、キタサンブラック、ハーツクライ。中でもキズナ、ドゥラメンテ、リアルスティールの3頭は頭数が多く、否が応でも3年後にデビューする世代では注目を集めることとなろう。

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