ステイゴールドをメジロマックイーン牝馬に配合した、いわゆる「黄金配合」の最終世代が静かに明け7歳を迎えている。まだ現役馬が僅かに残っているが、この辺りで一度その顛末を整理しておこう、というのが本稿の趣旨である。

同配合によるJRA出走頭数は全部で43頭。状況を下表にまとめている。

注)JRA現役馬は残り1頭。7歳牡馬ロゼフェニックスは3勝クラス在籍。長期休養後、昨年11月に久々に出走したが、10頭立て9着に終わり、現在は放牧中の模様。地方在籍の7歳牝馬オンワードマリーは中央未勝利ながら、名古屋転出後は息長く活躍をみせており、本年元旦に14勝目を上げている。

注)上記43頭の他に、地方デビューしたアドマイヤパワー(3歳秋に盛岡デビュー。水沢で1勝を上げた)がいる。

「黄金配合」馬の世代別実績(JRA)

注)赤字はオルフェーヴル・ドリームジャーニーの全兄弟
青字はゴールドシップの全兄弟

頭数内訳
2004年生1重賞勝馬 1(ドリームジャーニー)
3勝以上 0
2勝 0
1勝 0
未勝利 0
2008年生4重賞勝馬 2(オルフェーヴル、フェイトフルウォー)
3勝以上 0
2勝 1
1勝 0
未勝利 1
2009年生1重賞勝馬 1(ゴールドシップ)
3勝以上 0
2勝 0
1勝 0
未勝利 0
2010年生2重賞勝馬 0
3勝以上 1(リヤンドファミユ
2勝 0
1勝 0
未勝利 1
2011年生2重賞勝馬 0
3勝以上 1(トレジャーマップ
2勝 0
1勝 0
未勝利 1
2012年生6重賞勝馬 0
3勝以上 1(ジョンブドール)
2勝 0
1勝 1
未勝利 4
2013年生9重賞勝馬 0
3勝以上 2(メイケイレジェンド、ヤマニンリュウセイ)
2勝 0
1勝 0
未勝利 7
2014年生9重賞勝馬 0
3勝以上 1(ウインガナドル)
2勝 0
1勝 0
未勝利 8
2015年生9重賞勝馬 0
3勝以上 1(ゴールドフラッグ
2勝 3
1勝 1
未勝利 4
43重賞勝馬 4
3勝以上 7
2勝 4
1勝 2
未勝利 26

改めて眺めてみると、2004年生まれのドリームジャーニーを皮切りに2009年のゴールドシップまでの、6頭中4頭が重賞勝馬で内3頭がチャンピオンホースという、奇跡的という他ない傑出した実績には唖然とさせられる。その後は、2010年以降ではウインガナドルのラジオNikkei賞クビ差2着があるが、重賞タイトルには手が届いていない。

時系列に整理すると、ドリームジャーニーが5歳で宝塚記念・有馬記念とグランプリダブルを達成したのが2009年、これに続いたフェイトフルウォーの初重賞勝ち(京成杯)が2011年1月、怪物オルフェーヴルの初重賞勝ち(スプリングS)が2011年3月、そのまま三冠を制すわけだが、もう一頭の巨星ゴールドシップもこの年の夏に2歳デビューし、2011年10月の札幌2歳Sで2着と地力を発揮、2012年4月に皐月賞を制覇しスターダムにのしあがっていく。牧場サイドの視点では、2011年の種付シーズンにこのニックス(本稿では父と母父との相性、の意)が電磁を帯び始め、翌2012年春には沸点に達していたと考えられる(上表の通り、実際に2011年種付け→2012年出産から産駒数が増えている)。馬を走らせるサイド(馬主、厩舎関係者など)の視点では、2011年に1歳を迎えた幼駒(2010年生まれ)あたりから、この配合馬に特別な視線を向ける人々が出現したものと想像できる。

どこで線引きするかは立場によって若干変わる余地があるが、ここではわかりやすく、前期(2004年~2009年生まれのゴールドシップまで)、と後期(2010年~2015年生まれ)で二分して集計すると以下の結果を得る。後期(前期の成績は改めて集計するまでもないだろう)は、計37頭、勝率8.5%、勝ち上がり率32.4%、1頭当たりの本賞金1562万円。単純比較となるが、ステイゴールド産駒のJRAにおける総平均(ただし、母父メジロマックイーンを除く)は勝率7.6%、勝ち上がり率35.5%、1頭当たりの本賞金2273万円、同様に母父メジロマックイーン馬の総平均(ただし、父ステイゴールドを除く)は勝率6.3%、勝ち上がり率30.1%、1頭当たりの本賞金は1128万円

無論、前期・後期を通算すれば「黄金配合」の比較優位は明白で、37頭というサンプル数が少なすぎるという問題もある(もっと頭数がいればきっと大物が出たはず、という見方はあるだろう)。しかし、純粋に実践的に「前期の目の眩むような実績に何かがあると信じて、この配合に賭けたら結果はどうだったか」という観点では、大きな成果は上がらなかった、という結末となりそうである。

注)ただし、冒頭の注記に記した現役馬ロゼフェニックス、オンワードマリーがここから奇跡を起こさないなら、という前提が付く。念のため。

上記の例もそうだが、常識的にはニックスはサンプル数が蓄積される中で見出されるもので、その手法(成功例における類似点を考察して、そこから傾向や法則を導こうとする)は帰納法的な性質のものと言える。したがって、見出された傾向・法則自体に、それが正しいことを裏書きするような理論的な背景が存在するわけではなく、それが単なる偶然の積み重ねでそうなっているのか、そうでないのか(再現性があるのか)が、見えてくるのはかなり時間が経過した後、ということになると考えられる。

ところで、ここで常識的、と前置きしたのはこういう人がいるからである。

ステイ(注:ステイゴールドの意)はディープインパクトに比べると筋肉の収縮力、輪ゴムをどこまで引っ張れるかと言う意味の「粘り」がちょっと足りないから、パーソロン系の牝馬にステイを付けると、粘りの不足が補われてディープの体質に近くなるわけ。だから僕にいわせればあの配合があれだけ走るのは当然で…

故岡田繁幸氏の発言より 石田敏徳氏著「黄金の旅路」から抜粋

ニックスを相馬の観点から意味づけるのは興味深い試みで、こうした方向に深化が進むなら、ニックスの信頼度を別の角度から補強することが可能かもしれない。ただ一方で、相馬は個人の経験に根差した主観的な色彩を帯びたもので、他人に教え込んだり、評価を共有したりするのに難があるという側面も、おそらく存在するだろう(この2で割って「ディープの体質に近くなる」という見立ては、見る人が見れば共鳴できるものなのだろうか?)。なお、この発言はその場限りになされたものではないようで、岡田氏のビッグレッドファームを中心に、実際に同じパーソロン系のトウカイテイオー牝馬にステイゴールドを配した記録が相当数残っている。最後にその戦績をまとめたものを以下に記す。

頭数内訳
2003年生1未勝利 1
2004年生1未勝利 1
2007年生11勝 1
2009年生1未勝利 1
2010年生3未勝利 3
2011年生63勝以上 1(マイネルアウラート)
未勝利 5
2013年生1未勝利 1
2014年生1未勝利 1
15

注)JRA出走馬は15頭(全馬が既に抹消されている)、内、ビッグレッドファーム生産5頭。総平均は、勝率7.0%、勝ち上がり率13.3%、1頭当たりの本賞金1389万円。全体の数値としては厳しい結果だが、マイネルアウラート(ビッグレッドファーム生産)が気を吐き、計8勝、東京新聞杯3着などと活躍をみせた。

注)上表の通り、2010年産、2011年産の頭数が多いが、これらはオルフェーヴルのデビュー(2010/8)以前に種付けされた世代であり、「黄金配合」に触発された配合馬、とみなすのは時系列的に無理があるものと考えられる。