今回はStorm Catのインブリードについて考察する。まだ該当インブリード馬の頭数自体がかなり少ないため初期評価的なものにとどまるが、過去にStorm Cat牝馬の輸入がブーム化したこと、同血脈を色濃く持つ馬の種牡馬入りが相次いでいること、により、今後インブリード馬の頭数が増加するのは確実な情勢と言える。今から動向に注目しておく意義があるのではないだろうか。

なお、分析手法は以前に行ったサンデーサイレンスのインブリードと類似のもので、重複する説明を省略している部分がある。本稿が初見という方は、下記も併せて一読されることをおすすめしたい。

コラム・配合論考【3】サンデーサイレンスのインブリードを評価する・Ⅲ
コラム・配合論考【2】続・サンデーサイレンスのインブリードを評価する

大種牡馬Storm Cat

Storm Catは1983年米国産。世代的にはSadler’s Wells(1981年産)、ブライアンズタイム(1985年産)、サンデーサイレンス・デインヒル(1986年産)と近く、Danzig(1977年産)よりは後で、A.P. Indy(1989年産)よりは前。競走馬としても2歳戦で活躍したが(米2歳G1・ヤングアメリカS/ダート8.5fに勝利し、ブリーダーズCジュヴェナイルでTassoのハナ差2着)、種牡馬としてはブレイクを遂げ、種付料はスタッドイン時の3万米ドルが50万米ドルへと暴騰し話題を呼んだ。1999・2000年の北米リーディングサイアーで、2歳リーディングには計7度輝いている。

外国産・持込としてJRAで走った直仔は48頭。シーキングザダイヤ(日本テレビ盃など)が目立つ程度と大物と呼べる存在は見当たらないが、勝ち上がり率は83%と流石の数値を残している。産駒は芝もこなしたがダートの勝ち星が多く、スプリント寄りの適正を示していた(平均勝利距離は1370m)。

2008年に種牡馬を引退、現在も父系は隆盛を続けており、Harlanの系統から2019年から北米リーディングサイアーの座を維持しているInto Mischief、ヘネシーの系統からScat Daddy(2018年の米三冠馬Justifyの父)、欧州で活躍したGiant’s Causewayから出た Shamardalらが枝葉を広げ、その影響力は欧州でも顕著となっており、ヘニーヒューズ・ドレフォンなど日本にもその波が押し寄せている現況。

さて、本稿のテーマであるインブリード影響を考察する上でキーとなる本邦種牡馬には、③ヘニーヒューズ(Storm Catの直系孫世代。丸数字は産駒の血統表上のStorm Catの位置)、③ロードカナロアキズナ(ともに母父Storm Cat)を筆頭とする現有勢力がいる。加えて、今後以下のラインナップにより拡充が強力に進行する見込み。
・現3歳世代が初年度
ドレフォン(Storm Catの直系曾孫世代)
・現2歳世代が初年度
リアルスティール(母父Storm Cat)
シャンハイボビー(Storm Catの直系曾孫世代)
・現1歳世代が初年度
ブリックスアンドモルタル(Storm Catの直系孫世代)
ホークビル(母父Giant’s Causeway)
・現当歳世代が初年度
サートゥルナーリア(父ロードカナロア)
モズアスコット(母父ヘネシー)
・今年スタッドイン
ダノンキングリー(母父Storm Cat)
ダノンスマッシュ(父ロードカナロア)

注)この他、⑤の位置にStorm Catが来る種牡馬にコントレイル、ミスターメロディ、ヴァンゴッホ、ミスチヴィアスアレックス、フォーウィールドライブなどがいる

Storm Cat系
└ヘネシー
 └ヘニーヒューズ
  └アジアエクスプレス
 └ヨハネスブルグ
  └Scat Daddy
   └Justify・No Nay Never・Mendelssohn・Caravaggio・ミスターメロディ
└Giants Causeway
 └Shamardal
  └Lope de Vega・Pinatubo
 └ブリックスアンドモルタル・Footstepinthesand
└Harlan
 └Harlan’s Holiday
  └Into Mischief・シャンハイボビー
└Tale of the Cat
 └Gio Ponti
  └ドレフォン
└Forestry
 └ディスクリートキャット

ケーススタディ:ヘニーヒューズ産駒

以下、種牡馬別にStorm Cat(以下、SCと表記)インブリード馬の状況をみていく。先ずはヘニーヒューズ。同馬は2003年米国産、キングズビショップS、ヴォスバーグSと米ダG1を2勝した。2007年に種牡馬入りし2013年まで米国で供用、種付料は初年度40,000$、2013年は7,500$。米国供用時の代表産駒にBeholder(BCディスタフなど米G1を11勝)、持込・外国産として日本で走った産駒にモーニン(フェブラリーS)、アジアエクスプレス(朝日杯FS)、ケイアイレオーネ、ヘニーハウンドがいる。2014年から日本で供用、以降の産駒重賞実績は以下の通りとなっている。

(初年度産駒:現7歳)
レピアーウィット G3マーチS/D1800
ドンフォルティス J3北海道2歳/D1800

(2年目産駒:現6歳)
ワイドファラオ J1かしわ記念/D1600, G2ニュージーランドT/1600, G3ユニコーンS/D1600

(4年目産駒:現4歳)
アランバローズ J1全日本2歳/D1600
ウェルドーン J2関東オークス/D2100

(5年目産駒:現3歳)
セキフウ J2兵庫ジュニア/D1400

上記6頭、米国供用時の産駒であるモーニン・アジアエクスプレスら、BeholderにはいずれもStorm Catのクロスはない。

国内供用後でJRAに登録された産駒のStorm Catのインブリード馬の頭数分布は以下の通りとなっている。インブリード馬は16頭、全体の4%弱と数は僅かである。

a 頭数構成比b 重賞勝馬頭数b/a 輩出率
SC3×330.7%00.0%
SC3×4132.9%00.0%
その他43796.5%61.4%
合計453100.0%61.3%

勝率・勝ち上がり率は下記の通り。サンプル数が少ないので参考データの域を出ないが、ここまではクロスのないグループのデータの方が上位となっているようだ(SC3×3の勝ち上がり率は高いが、上表の通り該当3頭のみのデータで強調しづらい)。競走成績は2022/2/13時点。

【累計勝率・勝ち上がり率(勝ち上がり率は3歳世代を除く)】
SC3×3 6.5%・66.7%
SC3×4 5.0%・16.7%
その他 9.9%・44.6%

ここまでのインブリード馬の上位活躍馬のプロフィールを紹介しておく。
・タイセイビルダー(牡6、母父サンデーサイレンス、母母父Storm Cat)
Storm Catの3×3。ノーザンファーム生産。半兄に中山金杯2着のカルドブレッサ。セレクトセール1歳で4968万円。2歳10月に未勝利戦(東京ダート1600)を勝ち上がり、その後笠松の交流競走で2勝目を上げた。
・ドンカポノ(牡4・現役、母父Tiznow、母母父Storm Cat)
Storm Catの3×3。土田農場生産。叔父に4勝のワンアフター。サマーセール1134万円。2歳10月に新馬戦(京都ダート1800)を勝利、最近は1勝クラスで入着が続いている。

ケーススタディ:ロードカナロア産駒

続いてロードカナロアの産駒。初年度産駒が現7歳で、ここまでの重賞実績は以下の通り。

(初年度産駒:現7歳)
アーモンドアイ G1桜花賞/1600, G1オークス/2400, G1秋華賞/2000, G1ジャパンC/2400×2回, G1天皇賞・秋/2000×2回, G1ヴィクトリアM/1600, G3シンザン記念/1600
ダノンスマッシュ G1高松宮記念/1200, G2セントウルS/1400, G2京王杯SC/1400, G3オーシャンS/1200, G3キーンランドC/1200, G3シルクロードS/1200, G3京阪杯/1200
ステルヴィオ
G1マイルCS/1600, G2スプリングS/1800
ダイアトニック G2スワンS/1400, G3函館スプリント/1200
トロワゼトワル
G3京成杯AH/1600×2回
ジョーカナチャン
G3アイビスSD/1000
アールスター
G3小倉記念/2000
レッドガラン
G3中山金杯/2000

(2年目産駒:現6歳)
サートゥルナーリア G1皐月賞/2000, G1ホープフルS/2000, G2金鯱賞/2000, G2神戸新聞杯/2400
レッドルゼル J1JBCスプリント/D1400, G3根岸S/D1400
ケイデンスコール G2マイラーズC/1600, G3京都金杯/1600, G3新潟2歳S/1600
ファンタジスト G2京王杯2歳S/1400, G3小倉2歳S/1200
キングオブコージ G2目黒記念/2500, G2AJCC/2200
イベリス G3京都牝馬S/1400, アーリントンC/1600
ヴァルディゼール G3シンザン記念/1600
グルーヴィット G3中京記念/1600
ファストフォース G3CBC賞/1200

(3年目産駒:現5歳)
バーナードループ G2兵庫CS/D1870
パンサラッサ
G3福島記念/2000

(4年目産駒:現4歳)
レイハリア G3キーンランドC/1200, 葵S/1200

(5年目産駒:現3歳)
キングエルメス G2京王杯2歳S/1400

上記21頭にSCのインブリードはない。ロードカナロア産駒にはこの他に海外の重賞勝ち馬がいるが、オーストラリア産で豪G1を2勝のTagaloa、英国産でアイルランドG3の勝ち馬Know It Allについても、SCのインブリードは配されていない。

頭数分布は以下の通りとなっている。インブリード馬の頭数は20頭、全体の2.5%とやはりかなり数が限られる点に留意。

a 頭数構成比b 重賞勝馬頭数b/a 輩出率
SC3×3111.4%00.0%
SC3×491.1%00.0%
その他78697.5%212.7%
合計806100.0%212.6%

勝率・勝ち上がり率データは下記の通り。ヘニーヒューズのケースと類似した傾向を示しており、インブリード馬が優勢とは言えない状況となっている。

【累計勝率・勝ち上がり率(勝ち上がり率は3歳世代を除く)】
SC3×3 6.0%・55.6%
SC3×4 1.8%・0.0%
その他 11.4%・44.9%

ロードカナロア産駒のインブリード馬の上位活躍馬には以下の馬がいる。
・ココリモアナ(牝7、母父サンデーサイレンス、母母父Storm Cat)
Storm Catの3×3。田上徹氏の生産。母アドマイヤマダムは2勝。サマーセールで1350万円。3歳1月デビュー、6戦して勝ち上がれず園田に転出、2勝を上げて再転入し、1勝クラスで勝利を上げた(福島ダ1700)。
・ロードイヒラニ(牡7、母父Giant’s Causeway)
Storm Catの3×3。ケイアイファーム生産。半姉ブリュネットは3勝、フローラS3着。ロードサラブレッドオーナーズ募集額2700万円。2歳10月の未勝利戦で勝ち上がり(新潟芝1600)、1勝クラスで2度2着となった。現在は地方在籍で水沢、高知で3勝を上げている。

ケーススタディ:キズナ産駒

最後にキズナ産駒をとりあげる。重賞勝ち馬は以下の11頭。

(初年度産駒:現5歳)
アカイイト G1エ女王杯/2200
ディープボンド G2京都新聞杯/2200, G2阪神大賞典/3000, 仏G2フォワ賞/2400
マルターズディオサ G2チューリップ賞/1600, G3紫苑S/2000
ビアンフェ G3函館SP/1200, G3函館2歳S/1200, 葵S/1200
アブレイズ G3フラワーC/1800
シャムロックヒル G3マーメイドS/2000
クリスタルブラック G3京成杯/2000
キメラヴェリテ J3北海道2歳/D1800

(2年目産駒:現4歳)
バスラットレオン G2NZトロフィー/1600
ファインルージュ G3フェアリーS/1600, G3紫苑S/2000
ソングライン G2富士S/1600

(3年目産駒:現3歳)
なし

上記に、SCのインブリード馬は含まれていない。頭数分布は以下の通り。インブリード馬の頭数は21頭、全体の5%強。

a 頭数構成比b 重賞勝馬頭数b/a 輩出率
SC3×210.3%00.0%
SC3×3102.5%00.0%
SC3×4102.5%00.0%
その他37294.7%113.0%
合計393100.0%112.8%

勝率・勝ち上がり率データは下記の通り。SC3×4の数値は悪くないものの、ここでもインブリード優勢と言える数字は見えてこない。

【累計勝率・勝ち上がり率(勝ち上がり率は3歳世代を除く)】
SC3×3 3.8%・0.0%
SC3×4 10.5%・33.3%
その他 10.1%・46.8%

注)1頭のSS3×2馬は未勝利。SS3×3には勝ち上がり馬がいるが3歳世代のため、上記勝ち上がり率には反映していない

キズナ産駒のインブリード馬の上位活躍馬は下記の通り。
・ローウェル(セ4・現役、母父Songandprayer、母母父Cat Theifの父がStorm Cat)
Storm Catの3×4。社台コーポレーション白老ファームの生産。半兄にNHKマイル勝馬ラウダシオンがいる。シルクHC募集額3000万円。2歳12月デビュー、3歳3月に勝ち上がり(阪神ダ1400)、同条件の阪神ダ1400で4月に2勝目。2勝クラスで先週も3着とこのクラスで通用する力量を見せている。
・ヴェルザスカ(牝5・現役、母父スペシャルウィーク、母母母父にStorm Cat)
Storm Catの3×4で、サンデーサイレンスの3×3でもある。矢野牧場生産。近親に阪神牝馬S2着のアンシェルブルー。3歳8月とデビューが遅れたが初戦で勝利(新潟芝1400)、4歳5月で1勝クラスで2勝目(中京芝1600)。2勝クラスでは3着が2回ある。

総括

上記ヘニーヒューズ、ロードカナロア、キズナ産駒の実例でSCインブリード馬の頭数は60頭弱で、繰り返しとなるが、まだまだ頭数的に評価はこれからという段階。初動段階の印象として述べるなら、上記データは芳しいものではなく、また、これまでの活躍馬も小粒な感が否めないため、現状Storm Catのインブリードを積極的に狙う理由は乏しいと言えそうである。ただし、1頭大物が出てくれば印象が変わってしまうような、流動的な状況であることを断っておく必要もある、というところだろうか。今後、該当頭数が100頭、200頭となった段階で再評価を試みる所存である。なお、今回とりあげた種牡馬のインブリード実績の状況は、種牡馬データファイルの方で更新していくので、興味ある方はご参照いただきたい。

補足)ドレフォン産駒は、初年度となる現3歳世代に115頭のJRA登録馬がおり、内、Storm Catのインブリード馬は3頭となっている。その内の1頭ニシノアナ(SC4×4)は5戦目で勝ち上がっている(3歳1月の中山ダ1200)。その他の2頭は未出走。

補足2)輸入頭数の多い海外有力種牡馬の産駒の概況は以下の通りとなっている。
・Speightstown(母父がStorm Cat)はJRA登録がこれまで46頭、勝ち上がり率63%。Storm Catのインブリード馬は3頭で、エイシンテキサス(3×3)3勝、リアライズナマステ(3×3)1勝と2頭が勝ち上がっている。
・American Pharoah(母父Yankee Gentlemanの父がStorm Cat)はJRA登録30頭、勝ち上がり率61%。Storm Catインブリード馬が16頭とかなり多く、実績馬ではカフェファラオ(フェブラリーSなど重賞3勝)はインブリードなし、ダノンファラオ(ジャパンダートダービーなど)は4×4。勝ち上がり率はインブリードありが50%、なしが71%となっている。
・Scat Daddy(曾祖父がStorm Cat)はJRA登録19頭、勝ち上がり率74%。Storm Catインブリード馬は3頭おり、スポーカンテソーロ(4×4)2勝、スキャットエディ(4×3)2勝、エーシンブラスター(4×3)1勝、と3頭とも勝ち上がっている。
・Into Mischief(曾祖父がStorm Cat)はJRA登録18頭、勝ち上がり率は89%(!)。Storm Catインブリード馬は1頭のみで、シーヴィクセン(4×4)は1勝・現役。