コラム・種牡馬データを読む【8】6.92%の確率を引いたドゥラメンテ

今回も直近のトピックから種牡馬データをランダムに取り上げていく。取り上げたのは桜花賞馬・スターズオンアースと祖母・スタセリタについて、NHKマイルCを勝ったダノンスコーピオンとロードカナロアについて、母父として皐月賞、ヴィクトリアマイルを制したキングカメハメハについての3点。

スタセリタと孫の桜花賞馬・スターズオンアース

・今年の桜花賞馬・スターズオンアースの祖母はG1馬・スタセリタ。ブラッドホース誌による1998年~2008年の北米の繁殖牝馬を対象にした調査によると、「祖母が重賞勝ち馬」の場合、その時点で当該馬が重賞を勝つ確率は跳ね上がる事が分かっているが、当該馬が何番仔なのかによって確率が変動する事も分かっている。

・スタセリタはディアヌ賞(仏オークス)、ヴェルメイユ賞、サンタラリ賞、ジャンロマネ賞、ビヴァリーD.ステークス、フラワーボウルSの6つのG1を含む重賞7勝。スタセリタが英国で産んだ初仔がスターズオンアースの母・サザンスターズになる。

・スターズオンアースはサザンスターズの2番仔。この場合、ブラッドホース誌の調査によると全繁殖牝馬平均の1.99%を大幅に上回る6.92%の確率で産駒が重賞勝ち馬となっている。同様のケースで結果を残せなかった種牡馬は当然過去多くいたわけで、この好機を活かした父・ドゥラメンテの決定力、勝負強さはさすがと言える。

 ※重賞優勝牝馬を母とする繁殖牝馬の産駒競走成績

 初仔:重賞勝馬輩出率・6.04%(※全繁殖牝馬の率は1.50%)
 2番仔:重賞勝馬輩出率・6.92%(※全繁殖牝馬の率は1.99%)
 3番仔:重賞勝馬輩出率・7.60%(※全繁殖牝馬の率は2.02%)
 4番仔:重賞勝馬輩出率・5.88%(※全繁殖牝馬の率は2.41%)
 5番仔:重賞勝馬輩出率・5.13%(※全繁殖牝馬の率は1.85%)
 6番仔:重賞勝馬輩出率・5.53%(※全繁殖牝馬の率は1.78%)
 7番仔:重賞勝馬輩出率・3.90%(※全繁殖牝馬の率は1.53%)
 8番仔:重賞勝馬輩出率・3.98%(※全繁殖牝馬の率は1.70%)
 9番仔:重賞勝馬輩出率・5.69%(※全繁殖牝馬の率は1.59%)
 10番仔:重賞勝馬輩出率・2.47%(※全繁殖牝馬の率は1.61%)

・スタセリタ関連では興味深いデータがあり、「重賞優勝牝馬の3番仔として生まれた繁殖牝馬のブラックタイプ勝馬輩出率は13.16%、すなわちほぼ8頭中1頭がブラックタイプ勝馬となっている」、「重賞優勝牝馬の2番仔として産まれた繁殖牝馬はブラックタイプ勝馬輩出率12%」の2つ。このデータを踏まえると、スタセリタの2番仔・ソウルスターリング、3番仔・シェーングランツの産駒には特に大きな期待がかかることになる。ちなみにソウルスターリングは昨年、ブリックスアンドモルタルの牝駒を出産している。気が早い話になるが、この牝駒が母となり後年に産む産駒は「祖母(ソウルスターリング)が重賞勝ち馬」となり、シェーングランツ(重賞勝ち馬)が産む牝駒同様、引き続き高確率の期待がかかる。

 スタセリタ
 └サザンスターズ(♀初仔、父・Smart Strike)
 └ソウルスターリング(♀2番仔、父・Frankel)
 └シェーングランツ(♀3番仔、父・ディープインパクト)
 └スパングルドスター(♀4番仔、父・ディープインパクト)
 └Sentimental Mambo(♀5番仔、父・ディープインパクト)
 └スタニングスター(♀6番仔、父・Frankel)

ロードカナロアとダノンスコーピオン

・NHKマイルC勝ち馬・ダノンスコーピオンの母はレキシールー。レキシールーは加G2-ナッソーS、加G2-ダンススマートリーS、米G3-オータムミスSの勝ち馬で、カナダ産馬のみ出走可能なカナダの「ダービー」クイーンズプレート、カナディアントリプルティアラの2冠(ウッドバインオークス、ワンダーホワイS)にも勝利し、米G1-ハリウッドダービーではCalifornia Chromeの2着と健闘。2014年のカナダ年度代表馬に選出され、2019年にはカナダ競馬名誉殿堂入りした馬。2016年11月のキーンランドブラッドストックセールにて、ケイアイファームが100万ドルで購買。

・先のスタセリタの事例を踏まえると、レキシールーが産んだ牝馬、今後産む牝馬には繁殖牝馬として大きな期待がかかることになるが、現時点では初仔のダノンバジリア(中央2勝の現役馬)のみが牝馬となっている。

 レキシールー
 └ダノンバジリア(♀初仔、父・Frankel)
 └ダノンスコーピオン(♂2番仔、父・ロードカナロア)
 └レキシールーの2020(♂3番仔、父・ロードカナロア)
 └レキシールーの2021(♂4番仔、父・ロードカナロア)

・ダノンスコーピオンの父はロードカナロア。ロードカナロアの現3歳世代は1stクロップが2歳時に好成績を残した翌2018年に種付けされ、2019年に産まれた世代で、頭数が物凄く多くなっている世代。

 ※参考:2017年の中央2歳リーディング

 1位:ディープインパクト 57勝(重賞3勝)、7億2818.4万円
 2位:ロードカナロア(新種牡馬) 37勝 4億2867.1万円
 3位:ハーツクライ 23勝(重賞2勝) 4億6.6万円
 4位:ダイワメジャー 24勝(重賞1勝) 3億3001.5万円
 5位:ルーラーシップ 20勝 3億1678.7万円

 ※ロードカナロアの種付料、年度別種付頭数、翌年産まれの血統登録頭数の推移

 2014年【500万円】:254頭→180頭(現7歳:アーモンドアイ等)
 2015年【500万円】:276頭→195頭(現6歳:サートゥルナーリア等)
 2016年【500万円】:267頭→159頭(現5歳:パンサラッサ等)
 2017年【500万円】:250頭→173頭(現4歳)
 2018年【800万円】:307頭→216頭(現3歳:ダノンスコーピオン等)

・現3歳世代の芝マイル戦でロードカナロアは20勝でトップ。出走回数が138回と全種牡馬で最多ではあるが、複勝率はディープインパクトを上回っている。尚、現3歳世代の芝1200m戦ではロードカナロアは11勝でトップ。芝2000m超ではロードカナロアは5勝で13位。

・これまでに芝2000m超のG1を勝ったフサイチパンドラ、シーザリオとの間の仔から、アーモンドアイ、サートゥルナーリアの2000m超のG1勝ち馬を出してきたが、現3歳世代からは同様のケースから大物はまだ出せていない。これらの繁殖牝馬との間の産駒、特に若い繁殖牝馬との間の産駒がきっちり結果を出すと、種牡馬・ロードカナロアの評価はさらに上昇することになるが、どうなるだろうか。

 ※母が芝2000m超のG1を勝った主なロードカナロア産駒(現3歳)

 パンドレア(母・ショウナンパンドラ):2番仔・2戦1勝
 ミッキーキング(母・ミッキークイーン):初仔・2戦0勝
 ロードレガシー(母・レディパステル):11番仔・4戦0勝
 マリーナドンナ(母・ジェンティルドンナ):4番仔・1戦0勝
 スカーレットオーラ(母・ダイワスカーレット):9番仔・1戦0勝
 カルセドニー(母・マリアライト):2番仔・1戦0勝
 ブエナエルドラード(母・ブエナビスタ):6番仔・0戦0勝

・現3歳のロードカナロア産駒は、ダノンスコーピオン(NHKマイルC、アーリントンC)、サブライムアンセム(フィリーズレビュー)、キングエルメス(京王杯2歳S)の3頭がこれまでに重賞勝ち。ダノンスコーピオンとキングエルメスは母が重賞勝ち馬、サブライムアンセムはスターズオンアース同様、重賞勝ちの確率が跳ね上がる「祖母が重賞勝ち馬」のケース。

BMS・キングカメハメハの未来

・皐月賞を勝ったジオグリフと、ヴィクトリアマイルを勝ったソダシのBMSはキングカメハメハ。キングカメハメハは2020、2021年と2年連続でサラ総合BMSリーディングの座に就いているが、目立つのは勝率の高さとAEIの高さ

・BMSキングカメハメハの馬は年々、出走回数が増えており、既に2頭のG1馬を輩出している事や今年の現時点のランキングが1位・キングカメハメハ、2位・クロフネ、3位・ディープインパクトで上位3頭の顔触れは昨年と同じな事を踏まえると、今後もBMSキングカメハメハの中身の濃い戦績は当面は薄まらずに維持されていくのではないだろうか。以下に近3年のサラ総合BMSランキングを以下に示す。

2021年

1位:キングカメハメハ
【5636回出走-556勝(勝率9.86%)-重賞12勝、AEI:1.26】収得賞金41億6510.6万円
代表産駒:アカイトリノムスメ

2位:ディープインパクト
【3689回出走-328勝(勝率8.89%)-重賞10勝、AEI:1.43】収得賞金34億3142.7万円
代表産駒:ステラヴェローチェ

3位:クロフネ
【5130回出走-465勝(勝率9.06%)-重賞17勝、AEI:1.09】収得賞金31億2786.2万円
代表産駒:クロノジェネシス

2020年

1位:キングカメハメハ
【5248回出走-516勝(勝率9.83%)-重賞19勝、AEI:1.47】収得賞金41億7834.4万円
代表産駒:デアリングタクト

2位:サンデーサイレンス
【7523回出走-595勝(勝率7.90%)-重賞16勝、AEI:1.13】収得賞金39億9433.2万円
代表産駒:アーモンドアイ

3位:クロフネ
【4948回出走-449勝(勝率9.07%)-重賞11勝、AEI:1.18】収得賞金31億3342.3万円
代表産駒:クロノジェネシス

2019年

1位:サンデーサイレンス
【8653回出走-719勝(勝率8.30%)-重賞16勝、AEI:1.06】収得賞金44億492.3万円
代表産駒:アーモンドアイ

2位:キングカメハメハ
【4175回出走-411勝(勝率9.84%)-重賞18勝、AEI:1.26】収得賞金28億8599.8万円
代表産駒:インディチャンプ

3位:クロフネ
【4543回出走-425勝(勝率9.35%)-重賞16勝、AEI:1.15】収得賞金27億3787.5万円
代表産駒:クロノジェネシス

・ちなみにサンデーサイレンスは2007年から2019年まで13年連続でサラ総合BMSリーディングの座に就いていたが、初めてリーディングになった2007年のAEIは2.51、勝率11.15%という凄まじい数字を残しており、翌2008年のAEIは2.31、勝率10.96%。AEIが2を超えたのはこの2年のみだが、両年の数字は歴史的なものだったことは確かだろう。

※参考:2007年のBMSサンデーサイレンスの主な活躍馬

 アドマイヤムーン(ジャパンC、宝塚記念)
 アサクサキングス(菊花賞)
 ヴァーミリアン(ジャパンCダート)
 トールポピー(阪神ジュベナイルフィリーズ)
 
※参考:2008年のBMSサンデーサイレンスの主な活躍馬

 スクリーンヒーロー(ジャパンC)
 トールポピー(オークス)
 レジネッタ(桜花賞)
 ヴァーミリアン(フェブラリーS)
 セイウンワンダー(朝日杯フューチュリティS)

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