新種牡馬産駒データ考【5】多彩な引き出しで未来を切り拓くシャンハイボビー

今週はシャンハイボビーを取り上げる。これまでの中央での勝ち上がりは1頭だが、複勝率は33.3%とまずまずの数字を残している。日本供用前に多彩な産駒を残してきた実績があり、南米では複数のG1馬も出しているStorm Cat系の種牡馬の概要について触れていく。

シャンハイボビーの血統、経歴、レース動画

・2010年米国産のHarlan’s Holiday産駒。ケンタッキー州のストーンヘイヴン牧場にて生産された馬。2011年のキーンランド9月1歳馬セールにてスターライトレーシング社のエージェントのフランク・ブラザーズ氏により10万5000米ドルにて落札される。馬名はスターライトレーシング社のオーナーの友人でパイロットのボブ・バートン氏(上海に頻繁に飛んでいた)に因んで名付けられたもの。

現役時は8戦6勝、2歳G1-BCジュヴェナイル(d8.5f)、2歳G1-シャンペンS(d8f)、2歳G2-ホープフルS(d7f)の勝ち馬2歳時は5戦5勝で、2012年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出されるも、3歳時は骨盤骨折により米3冠競走に出走出来ず、3戦1勝。3歳9月に繋靭帯の故障により引退。

・以下は2012年のBCジュヴェナイルの動画。4・シャンハイボビーは1番人気に推され、道中番手追走から3角過ぎに先頭に立つと、そのまま最後まで粘り切って勝利。

シャンハイボビーの日本供用前までの主な産駒について

・2014年から米アシュフォードスタッドにて種牡馬入り。2017年の北米フレッシュマンサイアーランキング4位。主な産駒はいずれも2ndクロップになり、Shancelot(米G2-アムステルダムSの勝ち馬でBCスプリント2着などG1入着3回)、Shang Shang Shang(英2歳G2-ノーフォークSの勝ち馬)。

Shancelotは3歳2月デビューから同年11月のBCスプリント2着まで僅か6戦のキャリアを一気に駆け抜けた快速馬。G1勝ちも十分見込める存在だったが負傷により大成出来なかった存在で、高い能力を秘めていたのは疑いない馬。以下の動画は結果的に現役最後のレースとなった2019年のBCスプリント。マテラスカイとのハナ争いを制し、逃げて2着に粘ったのがShancelot。このような優良産駒を日本でも送り出せれば面白いがどうなるだろうか。

Shang Shang Shangはフロリダ州産まれの馬で、2歳時にロイヤルアスコットのG2-ノーフォークSを制するも、その後、1年近い休養を余儀なくされ、3歳時に2戦して7着、5着。以下の動画はキーンランドでのダ4.5fのメイドンを勝って臨んだ2018年のノーフォークS。ハナを切り、ギリギリ粘り切っての勝利でWesley A Ward師の管理馬のワンツー。父譲りの早熟性は魅力の一つでこれを受け継いだ産駒の登場が待たれるところだがどうなるか。

・尚、2014年にはブラジル、2015年にはチリにシャトルされており、シャトル先のブラジルで産まれた1stクロップから5頭のG1馬、チリで産まれた2ndクロップから2頭のG1馬が出ている。1stクロップのAero Tremはアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、チリ、ペルーなど南米各国で持ち回りで開催され、各国の強豪が集結するG1-ラテンアメリカ大賞(d2000m)を昨年制したウルグアイ調教馬。今年のサウジカップ(5着)、ドバイワールドカップ(8着)にも出走した。以下の動画はAero Tremが勝った昨年のラテンアメリカ大賞。直線でインを強襲した脚はなかなかのもので、ダートのこれくらいの距離でも走れる活躍馬を出せているのはシャンハイボビーのセールスポイントになろう。

先週までの産駒成績について

・2018年10月に日本への導入が決まり、2019年よりアロースタッドにて供用開始。108頭に種付けされ、血統登録馬は67頭。現2歳馬が日本供用後の1stクロップとなる。

1-2-2-10/15】勝率6.7%連対率20.0%複勝率33.3%

 芝【1-2-2-6/11】勝率9.1%、連対率27.3%、複勝率45.5%
 →8頭が出走し1頭が勝ち上がり、他に3頭が入着。

 ダ【0-0-0-4/4】勝率0.0%、連対率0.0%、複勝率0.0%
 →4頭が出走し入着ゼロ。

地方では8/9時点で10頭がデビューし、5頭が勝ち上がり中。2歳チャンピオンとなった父の現役時の戦績や産駒が2歳重賞を制している実績が反映されている印象で、Shancelotを出した実績から今後中央でもダートで数字は上げてくるものと思われるが、現時点での実績は芝に偏っている状況。

・「新種牡馬で勝ち上がり頭数1」はファインニードル、サトノクラウンリアルスティールサトノダイヤモンド、レッドファルクス、グレーターロンドンと同じ。デビュー頭数が3頭のグレーターロンドンを除いて、勝率、連対率、複勝率の数字を以下にまとめる。デビュー頭数にバラつきはあるが、シャンハイボビーは複勝率ではサトノダイヤモンドに次ぐ数字を残しており、リアルスティールには全ての数字が上回っている。

種牡馬勝率連対率複勝率
サトノダイヤモンド14.3%42.9%57.1%
シャンハイボビー6.7%20.0%33.3%
サトノクラウン7.1%28.6%28.6%
リアルスティール4.5%13.6%27.3%
ファインニードル5.3%21.1%26.3%
レッドファルクス4.5%4.5%9.1%

・ちなみに日本供用前に日本に輸入されたShanghai Bobby産駒は7頭がデビューしており、3頭が中央で勝ち上がり(42.8%)。これまでの稼ぎ頭はマリアズハート(牝6)。OP特別の常連として息の長い活躍をしており、今年5月の韋駄天S(新潟芝1000直)、昨年10月のL-ルミエールオータムダッシュ(新潟芝1000直)に勝利し、L-春雷S(中山芝1200)で2年連続2着するなどし、これまでに積み上げた収得賞金は5000万円、本賞金は1億2740万円。

・この馬は2018年のOBS4月2歳トレーニングセールにて7万5000米ドル(当時のレート換算で約825万円)で購買された馬で、ノルマンディーサラブレッドレーシングにて1口5.9万円×400口で募集された馬。ノルマンディーサラブレッドレーシングではデアリングタクト、アナザートゥルース、ブラゾンドゥリス、ルールソヴァール、ビスカリアに次ぐ、6番目に総賞金が多い馬で、決して価格が高いわけではないがしっかりと稼ぐ、シャンハイボビー産駒の理想的なイメージの一つとしてあげられる存在だろう。

今週のシャンハイボビー産駒の出走予定馬

ゼンノエヴェック 牡
母・ウインマリアベール、母父・クロフネ

8/13(土)の小倉5R・新馬(芝1200m)に出走予定。母は2007年産まれ、社台ファームの生産馬で現役時は24戦4勝(中山芝1600、中山ダ1800×2、東京ダ1600)。産駒で中央で勝利をあげた馬はいない。本馬は5番仔。

・祖母が重賞4勝、2002年のJRA賞最優秀4歳以上牝馬のダイヤモンドビコー。曽祖母のステラマドリッドは米G1・4勝の活躍馬で、この馬を牝祖とする活躍馬にラッキーライラック、ミッキーアイル、アエロリットがいる。