今回は現時点の地方での新種牡馬産駒の戦績をまとめている。地方重賞勝ち馬を既に輩出した新種牡馬もおり、地方が主戦場になると思われる新種牡馬も多く、概要をご確認頂きたい。
※データは8月23日現在のものになりますが、地方重賞については8月24日終了時のものになります。
現在の地方ファーストシーズンサイアーランキング
・以下、賞金順ランキング上位3頭を列記する。目立つのは10頭が出走し、5頭が勝ち上がったシャンハイボビーの勝ち上がり率の高さ。1位のベストウォーリアは既に31頭が出走しているが、この数字は全体1位のホッコータルマエ(27頭)、2位のエスポワールシチー(26頭)を超える頭数。その割には勝ち上がり頭数は伸び悩んでいる状況で、3割を切る勝ち上がり率はやや物足りない印象。
1位:ベストウォーリア(全体4位)
31頭出走-9頭勝ち上がり(29.03%)
収得賞金:3768.9万円、AEI:1.18
1頭当賞金:121.5万円
1stクロップ(血統登録頭数):93頭
・最多賞金獲得馬はグリーリー(牡・川崎)で現在4戦2勝(川崎ダ900×2)。大栄牧場の生産馬。
2位:シャンハイボビー(全体8位)
10頭出走-5頭勝ち上がり(50.00%)
収得賞金:2621.4万円、AEI:2.55
1頭当賞金:262.1万円
1stクロップ(血統登録頭数):67頭
・最多賞金獲得馬はナイトオブバンド(牡・船橋)で現在3戦3勝(船橋ダ1500×3)。松本牧場の生産馬。昨年の北海道サマーセールにて1034万円で取引された馬。母のナイトオブドバイは独G1馬・ナイトマジックの半妹。近親にフォイヤーヴェルク(新潟ジャンプS)、グレートマジシャン(毎日杯2着)。
3位:ニシケンモノノフ(全体14位)
17頭出走-6頭勝ち上がり(35.29%)
収得賞金:1892.1万円、AEI:1.08
1頭当賞金:111.3万円
1stクロップ(血統登録頭数):34頭
・最多賞金獲得馬はデステージョ(牝・北海道)で現在3戦2勝(門別ダ1000、門別ダ1200)。オリエント牧場の生産馬。母のスレドボはダーレー・ジャパン・ファームの生産馬で高知で13勝。ニシケンモノノフ産駒は34頭の血統登録頭数の半分、17頭が既に地方でデビューしている。
現在の地方2歳賞金順ランキングTOP3
・ちなみに現時点の地方2歳賞金順ランキングTOP3はホッコータルマエ、エスポワールシチー、パイロの3頭。これら3頭の数字を以下に示す。この3頭の数字を物差しにすると、先に示したシャンハイボビーの勝ち上がり率50%は優れていると判断出来よう。
1位:ホッコータルマエ
27頭出走-14頭勝ち上がり(51.85%)
収得賞金:5284.4万円、AEI:1.88
1頭当賞金:195.7万円
現2歳血統登録頭数:134頭
・これまでの主な地方での活躍馬にママママカロニ(牡3・大井ゴールドジュニア)、ギャルダル(牡3・大井東京ダービー2着)などがおり、現3歳世代に限定すると地方2位、勝馬率69.39%の数字を残している。
2位:エスポワールシチー
26頭出走-15頭勝ち上がり(57.69%)
収得賞金:4397.6万円、AEI:1.62
1頭当賞金:169.1万円
現2歳血統登録頭数:85頭
・これまでの主な地方での活躍馬にヴァケーション(牡5・全日本2歳優駿、シアンモア記念、平和賞など)、イグナイター(牡4・かきつばた記念、黒船賞、楠賞など)。現3歳世代に限定すると地方1位、勝馬率81.25%の数字を残している。
3位:パイロ
21頭出走-10頭勝ち上がり(47.61%)
収得賞金:4275.6万円、AEI:1.95
1頭当賞金:203.6万円
現2歳血統登録頭数:67頭
・これまでの地方での活躍馬にミューチャリー(牡6・JBCクラシック、大井記念、羽田盃など)、ラインカリーナ(関東オークスなど)。現3歳世代に限定すると地方5位、勝馬率51.02%の数字を残している。
地方重賞勝ち馬5頭について
・これまでに行われた地方2歳重賞は門別5鞍、盛岡1鞍の計6鞍。地方重賞2勝馬が1頭おり、以下、5頭の勝ち馬について触れる。5頭の内、1頭は新種牡馬・プレティオラス産駒で注目される。
コルドゥアン(牡・北海道)
父・プレティオラス、母・ヴィジタンディーヌ、母父・ワイルドラッシュ
5戦2勝、6/28の栄冠賞(門別ダ1200)に勝利。
・サンシャイン牧場の生産馬。母のヴィジタンディーヌは11戦3勝(東京ダ1400、川崎ダ1500×2)。本馬は4番仔。祖母のオルレアンは交流重賞2着3回(TCK女王盃、スパーキングレディーC、サラブレッドチャレンジC)の活躍馬で、オルレアンともプレティオラスは交配されている。プレティオラスは現2歳が1stクロップで、血統登録頭数は6(全てサンシャイン牧場の生産馬)。この6頭が既に全てデビューしており、2頭が勝ち上がり。
・以下は6/28の栄冠賞の動画。後方追走の最低人気・コルドゥアンが直線一気の追い込み勝ち。10年前の東京ダービーで見事な追い込み勝ちをおさめた父・プレティオラスの雄姿を思い起こした地方競馬ファンも少なくなかったのではなかろうか。
プレティオラスについて
・2009年サンシャイン牧場産のフィガロ産駒。現役時は38戦7勝。門別でデビューし6戦目で勝ち上がり。その後、大井へ転厩し羽田盃(ダ1800)で11番人気ながら3着と好走。続く東京ダービー(ダ2000)では6番人気ながら見事に勝利。その後、東京記念(ダ2400)2勝、大井記念(ダ2000)に勝利し、2017年の帝王賞12着を最後に引退。
・以下の動画は2012年の東京ダービー。最後方追走のプレティオラスが直線で大外をぶん回し、直線一気の追い込み勝ちを見せたレース。尚、2着のプーラヴィーダも同じフィガロ産駒でサンシャイン牧場の生産馬。
・プレティオラスの父・フィガロは1995年米国産のFuture Storm(その父・Storm Cat)産駒で伊達秀和氏の所有馬。京都芝1200の新馬戦を勝ち、次走京都3歳S(OP/芝1800)も勝利。3戦目はG1-朝日杯3歳S(芝1600)に出走し、グラスワンダーの3着。結果的にこのレースが最後のレースとなり3戦2勝で引退、サンシャイン牧場にて種牡馬入り。プレティオラスの他にアンパサンド(東京ダービー等)、ハーミア(戸塚記念)などを輩出。
・プレティオラスの母・ユーロペは2003年サンシャイン牧場産、17戦2勝(新潟芝1800、東京芝1600)。プレティオラスは初仔。
ベルピット(牡・北海道)
父・パイロ、母・ベルライン、母父・ダイワメジャー
4戦4勝、7/28のブリーダーズゴールドジュニアC(門別ダ1700)、8/24のサッポロクラシックカップ(門別ダ1700)に勝利。
・厚賀古川牧場の生産馬。昨年の北海道サマーセールにて693万円で取引された馬。母のベルラインはノーザンファームの生産馬で2010年のセレクトセールにて1522万円で取引された馬。現役時は中央3勝、地方6勝。園田の地方重賞・六甲盃の勝ち馬。本馬は3番仔。母父・ダイワメジャーは目下、中央2歳戦で13勝。2位のキングカメハメハに4勝差をつけてトップ独走中。
・以下の動画は7/28のブリーダーズゴールドジュニアCの動画。好位追走から直線で内から抜け出しての勝利。栄冠賞の勝ち馬・コルドゥアンは4着。
フジラプンツェル(牝・岩手)
父・メイショウボーラー、母・ホワイトデイズ、母父・クロフネ
4戦4勝、8/14の若鮎賞(盛岡ダ1600)に勝利。
・橋本牧場の生産馬。昨年の北海道セプテンバーセールにて297万円で取引された馬。母のホワイトデイズは千代田牧場の生産馬で7戦未勝利。4代母がビクトリアクラウン(エリザベス女王杯)。本馬は7番仔。
・以下の動画は8/14の若鮎賞の動画。3番手追走から持ったままで4角先頭。直線は独走劇となり2着に1.6秒差をつけて快勝。
アサクサロック(牝・北海道)
父・ダンカーク、母・アイスカチャン、母父・ゴールドヘイロー
3戦2勝、7/14のフルールカップ(門別ダ1000)に勝利。
・絵笛牧場の生産馬。昨年の北海道サマーセールにて660万円で取引された馬。母のアイスカチャンは2012年の北海道サマーセールにて126万円で取引された馬。現役時は33戦10勝、水沢の地方重賞・あやめ賞の勝ち馬。本馬は初仔。
・以下の動画は7/14のフルールカップの動画。後方追走から4角を6番手で通過したアサクサロックが外から一気に差し伸びて1着。
スティールグレイス(牝・北海道)
父・ハタノヴァンクール、母・ファーマシスト、母父・Shamardal
4戦3勝、8/10のフローラルカップ(門別ダ1600)に勝利。
・グッドラック・ファームの生産馬。昨年の北海道サマーセールにて495万円で取引された馬。母のファーマシストはダーレー・ジャパン・ファームの生産馬で2戦未勝利。本馬は2番仔。ハタノヴァンクールの2歳世代は血統登録馬が7頭のみ。この内、5頭が地方でデビューし、唯一勝ち上がった本馬が地方重賞勝ち。ちなみに本馬はハタノヴァンクール産駒初の地方重賞勝ち馬になる。
・以下の動画は8/10のフローラルカップの動画。好位追走から外を通って上昇していったスティールグレイスが直線で良好な差し脚を駆使し差し切り勝ち。