先週の小倉2歳Sを制したのはグレーターロンドン産駒・ロンドンプラン。早速重賞勝ち馬を送り出したグレーターロンドンには注目が集まることになるが、ディープインパクトを父に持つ種牡馬は数が多く、ライバル争いは熾烈。本稿ではグレーターロンドンを取り上げ、掘り下げていく。
※成績は中央は9/4終了時点、地方は9/6終了時点のもの。
グレーターロンドンの血統、経歴、レース動画
・2012年下河辺牧場産のディープインパクト産駒。現役時は15戦7勝、G3-中京記念(芝1600m)の勝ち馬(レコード勝ち)。他に毎日王冠3着。3歳2月の東京芝1600mの新馬戦を勝ち、次走の山吹賞は2着と敗れるも、以後、1年以上の休養を挟みつつ5連勝。余勢をかって5歳時に安田記念に出走するもサトノアラジンの4着。その後は3着2回(毎日王冠、ディセンバーS)が最高だったが、6歳7月の中京記念に1番人気で出走し1着。結果、これが最後のレースとなった。
・以下の動画は唯一の重賞勝ちとなった2018年7月22日の中京記念でのもの。外々を回り直線で一気に末脚を伸ばしての差し切り勝ち。斤量は56.5kg、鞍上は田辺裕信。1番人気(単勝オッズ5.0倍)。
・以下の動画はグレーターロンドンの今年のブリーダーズ・スタリオン・ステーションでの種牡馬展示会でのもの。画質が良く、馬体をよく観察出来る好動画。
・グレーターロンドンの母・ロンドンブリッジは1995年下河辺牧場産のドクターデヴィアス産駒。現役時は6戦3勝、G3-ファンタジーS(京都芝1400m)の勝ち馬で、桜花賞はファレノプシスの2着。
・以下の動画はロンドンブリッジが2着になった1998年の桜花賞。外から一気にハナを奪い、レースを主導。最後はファレノプシスの末脚に屈するも2着に逃げ残った内容は良好で、豊かなスピードを大舞台で堂々と披露した。鞍上は松永幹夫。単勝人気は4番人気(6.2倍)。
・ロンドンブリッジは繁殖牝馬としても優秀な成績をおさめており、以下の活躍馬を母として輩出。孫世代からもG1馬・キセキや今年重賞戦線を賑わせた3歳馬・タイセイディバインが出ており、牝系が優秀なのは種牡馬・グレーターロンドンにとって好材料。
初仔・ダイワエルシエーロ(牝、父・サンデーサイレンス)
G1-オークス、G3-クイーンC、G3-京阪杯、G3-マーメイドS
2番仔・ビッグプラネット(牡、父・ブライアンズタイム)
G3-アーリントンC、G3-京都金杯
4番仔・ダイワディライト(牡、父・アフリート)
カペラS2着
5番仔・ダイワスピリット(牝、父・ダンスインザダーク)
母としてタイセイディバイン(ファルコンS2着、アーリントンC2着)を輩出
8番仔・ブリッツフィナーレ(牝、父・ディープインパクト)
母としてキセキ(G1-菊花賞)を輩出
10番仔・グレーターロンドン(牡、父・ディープインパクト)
G3-中京記念
・グレーターロンドンの祖母・オールフォーロンドン(父・Danzig、1982年米国産)が輸入基礎牝馬で、米26戦3勝。下河辺牧場が5万米ドルで購買したもので、13頭の産駒を残した。産駒は出生順に【5-3-3-6-3-3(ロンドンブリッジ)-0-2-0-5-0-3-0】の計33個の勝ち鞍を中央であげ、牝祖として大きな足跡を残した。
中央産駒成績と種付頭数の推移について
【3-0-0-6/9】勝率33.3%、連対率33.3%、複勝率33.3%
・全て芝での成績でダートに出走した馬はゼロ。同じディープインパクトを父に持つ種牡馬で、ここまでの出走回数が同じ9という種牡馬にディーマジェスティ、ワールドエースがいるが、これらの産駒と比べてもここまでの数字はまずまずのもの。ちなみに()内の金額は現2歳馬に直結する2019年の種付料(受胎条件)になる。
グレーターロンドン(50万円):5頭デビュー、2頭勝ち上がり(40.0%)
ディーマジェスティ(100万円):4頭デビュー、1頭勝ち上がり(25.0%)
ワールドエース(50万円):4頭デビュー、1頭勝ち上がり(25.0%)
・2019年に65頭に種付けされ、翌年44頭の産駒(血統登録頭数)が誕生。この内、中央で5頭、地方で12頭が既にデビューし、中央では2頭(勝ち上がり率40%)、地方では4頭(勝ち上がり率33.3%)が勝ち上がり。中央でのCPIは0.34、世代別AEIは4.66。地方でのCPIは0.99、世代別AEIは0.87。
・種付頭数は2020年は48頭、2021年は43頭。ロンドンプランの重賞勝ちが直接的に影響を与えるのは来年の種付け頭数になり、再来年産まれの産駒(5thクロップ)は繁殖の質が上がると思われる世代で今から既に期待される。種付料が100万円未満の同じゾーンにいるディープインパクト後継種牡馬から頭一つ抜け出すことが出来るか。
父・ディープインパクトの種牡馬について
・まず、全体像として今年の種付料(受胎確認後)を元に、現在のディープインパクト後継種牡馬の勢力図を見てみる。今年供用されている種牡馬の内、父・ディープインパクトの種牡馬は40頭いるが、グレーターロンドンの50万円という種付料はこのリストを見ると中堅どころの位置付け。50万円の上のランクに100万円というゾーンがあり、ここに今、注目を集めているダノンバラードらがいる。当面はここへ入り込み、これらの種牡馬によって種付けされていたより良いレベルの肌を獲得出来るか、が焦点になる。
1200万円:キズナ、コントレイル
600万円:シルバーステート
300万円:サトノダイヤモンド、リアルスティール
250万円:ダノンキングリー、ミッキーアイル
200万円:フィエールマン
120万円:アルアイン、エイシンヒカリ、ダノンプレミアム、ロジャーバローズ
100万円:サトノアラジン、ダノンバラード、ディーマジェスティ、リアルインパクト
50万円:グレーターロンドン、サトノアレス、ディープブリランテ、トーセンラー、ワールドエース、ワールドプレミア
30万円:アドミラブル、ヴァンセンヌ、エキストラエンド、キタノコマンドール、サトノジェネシス、サングレーザー、ヘンリーバローズ、ミッキーグローリー、レッドベルジュール
20万円:アレスバローズ、ウォータービルド
プライベート:ヴァンキッシュラン、サトノインプレッサ、スピルバーグ、ソールインパクト、ディープエクシード、トーセンホマレボシ、トーセンレーヴ
・次に今年の種付料がグレーターロンドンと同じで既に産駒がデビューしている種牡馬をピックアップし、セリでの取引価格の動向などを比較していく。
グレーターロンドン
種付け料:50万円(受胎確認後)、80万円(産駒誕生後)
2021年セリ取引馬:13頭(最高価格1155万円、平均価格428万円)
2022年セリ取引馬:2頭(682万円、440万円)
中央CPI:0.34、中央AEI:4.66
※グレーターロンドンの2021年セリ取引馬13頭の内、1155万円の最高価格で取引された馬が8/21の新潟芝1800の新馬戦を勝ち上がったロードプレイヤー(牡2)。
ディープブリランテ(※現2歳は7thクロップ)
種付け料:50万円(受胎確認後)、80万円(産駒誕生後)
2021年セリ取引馬:12頭(最高価格1265万円、平均価格568万円)
2022年セリ取引馬;3頭(737万円、220万円、220万円)
中央CPI:1.11、中央AEI:0.78
トーセンラー(※現2歳は5thクロップ)
種付け料:50万円(受胎確認後)、80万円(産駒誕生後)
2021年セリ取引馬:9頭(最高価格902万円、平均価格415万円)
2022年セリ取引馬:5頭(1210万円、902万円、462万円、330万円、330万円)
中央CPI:0.77、中央AEI:0.62
ワールドエース(※現2歳は4thクロップ)
種付け料:50万円(受胎確認後)
2021年セリ取引馬:14頭(最高価格1034万円、平均価格379万円)
2022年セリ取引馬:17頭(3410万円、2640万円、715万円、572万円、550万円、550万円、528万円、495万円、451万円、418万円、341万円、330万円、275万円、220万円、220万円、165万円、165万円)
中央CPI:1.07、中央AEI:0.70
・2021年のセリ取引馬の平均価格を比べると、ディープブリランテ>グレーターロンドン>トーセンラー>ワールドエースの順となっており、最高価格の順番はディープブリランテ>グレーターロンドン>ワールドエース>トーセンラー。市場の評価という観点ではグレーターロンドンは概ねこの4頭の種牡馬の中ではディープブリランテの次の2番目の位置にいることが分かる。
・ディープブリランテは初年度(2013年)の種付料(受胎確認後)は120万円、2018年には200万円まで上がるも、社台SSを離れた2019年以降は150万円→80万円→50万円→50万円と下降中。中央CPIが1を超えているように、これまでの繁殖の質は平均以上だったことが分かるが、期待に見合う成果は出ていない現況。この馬の評価を超えていくことは、グレーターロンドンにとっては現実的な直近の目標と言えるが、中央CPIの低さが示す繁殖の質で早々に重賞勝ち馬を出したポテンシャルから、目標達成は早期に可能と見るがどうだろうか。
今週のグレーターロンドン産駒の新馬戦出走予定馬
9/10(土)・中京3R・2歳新馬(芝1400m)
ナムラデュラン せん
母・ナムラキッス、母父・マツリダゴッホ、生産者・桑田正己
(栗)大橋勇樹、秋山真一郎
・母は中央16戦1勝(京都ダ1800)、本馬は4番仔。半姉のナムラリコリス(父・ジョーカプチーノ)は昨年のG3-函館2歳Sの勝ち馬。サンデーサイレンスの3×3のクロスを持つ馬で、「追い切りの動きが良かったね、時計もしっかり出ていた」との調教師評。