新種牡馬産駒データ考【13】タリスマニック産駒の低空飛行はいつまで続くのか?

今回はここまで産駒が1勝のみに終わっているタリスマニックを取り上げる。初年度産駒(血統登録頭数)は70頭おり、既に21頭がJRAでデビューしているが、ここまで見せ場に乏しい戦績に終わっている。このまま低空飛行が続くのか、ここまでの産駒の走りをまとめていく。

タリスマニックの経歴、レース動画

・2013年英国産のMedaglia d’Oro産駒。現役時はアンドレ・ファーブル師に管理され、23戦8勝、G1-BCターフ(t12f)、G2-モーリスドニュイユ賞(t2800m)、G3-ゴントービロン賞(t2000m)の勝ち馬。他にフランスのリステッドを3勝(全てt2400m)。

・2歳7月にデビューし、デビュー3戦目の芝1800m戦で勝ち上がり。3歳6月のG1-ジョッケクルブ賞(t2100m)は勝ったAlmanzorから4馬身半差の4着で、同年10月のG1-凱旋門賞(t2400m)は11着。4歳7月のG2-モーリスドニュイユ賞(t2800m)で初重賞制覇を果たし、次走のG2-フォワ賞(t2400m)で3着。そこから凱旋門賞ではなく、G1-BCターフ(t12f)へ向かい、これに勝利。続くG1-香港ヴァーズ(t2400m)は2着。

・以下の動画は前々回の本稿(【11】目下4勝。ビーチパトロール産駒、渋く健闘中。)でも取り上げた、2017年のG1-BCターフでのもの。タリスマニックは5番人気で、Highland Reelとビーチパトロールが1,2番人気。タリスマニックはインで脚を溜めて直線で鋭く差し込んでの勝利。2着がビーチパトロール。

・以下の動画は2017年のG1-香港ヴァーズでのもの。タリスマニックは道中、Highland Reelをマークする形で進み、先に抜け出したHighland Reelに続く2着で入線。

・5歳時はドバイワールドC9着、凱旋門賞13着、BCターフ6着など、G1では結果を出せず重賞1勝のみに終わるが、3月のシャンティイでのダルシャーン賞(AW1900m)で前年の凱旋門賞2着馬・Cloth of Starsに勝利しているのは注目に値する戦歴かもしれない。

タリスマニックの父、母

・タリスマニックの父・Medaglia d’Oroは1999年米国産のEl Prado産駒。現役時は17戦8勝、トラヴァーズS(d10f)、ホイットニーH(d9f)、ドンH(d9f)の3つのG1を含む重賞7勝。他にベルモントS2着、BCクラシック2着2回、ドバイワールドC2着などG1での2着が6回。主な産駒にRachel Alexandra(プリークネスS、ケンタッキーオークス等)、Songbird(エクリプス賞最優秀3歳牝馬、最優秀2歳牝馬)、Golden Sixty(香港G1・6勝の現役馬)など。

・Medaglia d’Oro産駒でJRAで最も収得賞金が高い馬はフィドゥーシア(母・ビリーヴ、韋駄天S、春雷S)、2番目に高い馬はエーシンメンフィス(G3-愛知杯の勝ち馬)。Medaglia d’Oroの孫世代ではViolence産駒・ジャスパープリンス(エニフS2勝)、ヴィットリオドーロ産駒・オマツリオトコ(ヤマボウシ賞)などが活躍している。

・タリスマニックの母・Magic Missionは1998年英国産のMachiavellian産駒。現役時は24戦4勝、米G3-ロイヤルヒロインS(t8f)の勝ち馬。他にG1-メイトリアークS3着など重賞入着5回。牝系は4代母がBurghclere、5代母がHighclereでディープインパクトと同じファミリー。Highclereを牝祖とする一族からは明日の英チャンピオンSで引退となるBaaeedが出現している。

産駒成績、種付頭数の推移等について

1-0-1-39/41】勝率2.4%連対率2.4%複勝率4.9%

2019年種付頭数(種付料180万円):113頭、血統登録頭数:70頭
2020年種付頭数(種付料180万円):103頭、血統登録頭数:67頭
2021年種付頭数(種付料180万円):037頭
2022年(種付料180万円)

中央CPI:0.88、中央AEI:0.23
地方CPI:1.06、地方AEI:1.49

・ここまでのJRA2歳戦での戦績は総じて惨憺たるものとなっており、昨年、種付頭数が急減していることも合わせると、早くも大ピンチを向かえている印象。タリスマニックの戦歴から距離適性的に産駒が2歳戦の短い距離で真価を発揮するタイプではないであろうことは明らかだが、ほとんどが勝ち馬から1秒以上離されての敗戦が続いており、今のところ明るい兆しは見て取れない印象。

・ただ、地方では10頭がデビューし、8頭が勝ち上がりと優れた戦績を残しており、地方重賞2着馬1頭、3着馬1頭が出ている。地方での好戦績を見ると産駒のダート適性が気になるが、JRAでは産駒のダートでの戦績は【0-0-0-8/8】。勝ち馬との着差で1秒以内となったケースはゼロ、最高着順は4着。