今回は主な新種牡馬の生産者別の戦績に着目し、データから実像を浮き彫りにしていく。端的に言えば成績がノーザンファーム生産馬でどれだけかさ上げされているかを明らかにし、非ノーザンファーム生産馬の数字に主眼を置きまとめたものになる。

ノーザンファーム生産馬の2歳戦での戦績について

・以下に今年の2歳戦でのノーザンファーム生産馬の戦績を示す。芝では全体の28.2%はノーザンファーム生産馬の勝利、という事実は踏まえておく必要があろう。

134-111-82-436/763】勝率17.6%連対率32.1%複勝率42.9%
 全650レース中、ノーザンファーム生産馬が134勝(全体の20.6%)
 芝408レース中、ノーザンファーム生産馬が115勝(全体の28.2%)
 ダ242レース中、ノーザンファーム生産馬が19勝(全体の7.9%)

・参考までにノーザンファーム生産馬の寡占具合を見る目的で今年のJRA全レースについてのデータを以下に示す。芝で行われるレースの26.6%はノーザンファーム生産馬が勝利しているというデータは2歳戦よりは多少劣るものの、圧倒的な数字であることには変わりはない。

627-551-489-3867/5534】勝率11.3%連対率21.3%複勝率30.1%
 全3460レース中、ノーザンファーム生産馬が627勝(全体の18.1%)
 芝1640レース中、ノーザンファーム生産馬が437勝(全体の26.6%)
 ダ1695レース中、ノーザンファーム生産馬が176勝(全体の10.4%)
 障害125レース中、ノーザンファーム生産馬が14勝(全体の11.2%)

2歳戦での新種牡馬産駒の戦績について

リアルスティール、サトノダイヤモンド、サトノクラウン、デクラレーションオブウォーの新種牡馬4頭を取り上げ、全体、ノーザンファーム生産馬、非ノーザンファーム生産馬のデータを見比べていく。尚、NFはノーザンファームの略として表記したもので、非NFは非ノーザンファームの意になる。

リアルスティール

16-15-13-112/156】勝率10.3%連対率19.9%複勝率28.2%
 NF【4-8-4-21/37】勝率10.8%、連対率32.4%、複勝率43.2%
 非NF12-7-9-91/119】勝率10.1%連対率16.0%複勝率23.5%

・リアルスティール産駒はノーザンファーム生産馬がそれほど勝っておらず、ノーザンファームの2歳戦トータル勝率17.6%よりも劣る数字しか残せていない。非ノーザンファーム生産馬が勝率10.1%と健闘しており、この中から重賞ウイナー・オールパルフェ(カタオカファームの生産馬)が出現。

・目下の状況の見方として、ノーザンファーム生産馬がそこまで走っていない点を強調し。繁殖の質の割に期待に見合っていないと見るか、非ノーザンファーム生産馬が頑張っているので種牡馬としての能力は低くなく期待に見合う戦果をあげていると見るか、分かれる部分があろう。

・前者の見方については連対率と複勝率はノーザンファームの2歳戦トータルの数字は上回っており、単に勝ち切れていない現状を示すもの、と読み解けば見方として正しくない印象はある。後者の見方については重賞勝ち馬を出し、10%を超える勝率を残し、連対率と複勝率も低くないので、そのままストレートに数字を受け止めれば自ずとポジティブな評価をくだすのが当然となろうか。

サトノダイヤモンド

11-12-13-79/115】勝率9.6%連対率20.0%複勝率31.3%
 NF【4-3-3-11/21】勝率19.0%、連対率33.3%、複勝率47.6%
 非NF7-9-10-68/94】勝率7.4%連対率17.0%複勝率27.7%

・阪神ジュベナイルフィリーズ2着のシンリョクカは下河辺牧場の生産馬、唯一の2勝馬、モンドプリュームは岡田スタッドの生産馬。ノーザンファームは札幌2歳S3着のダイヤモンドハンズを送り出している。

・ノーザンファーム生産馬の勝率19.0%と非ノーザンファーム生産馬の勝率7.4%を見比べると、大きな開きがあり、ノーザンファーム生産馬で比較すると、リアルスティールよりも成績は良い。非ノーザンファーム生産馬はリアルスティールより勝率は低いが、連対率と複勝率は上回っている。

サトノクラウン

13-9-9-114/145】勝率9.0%連対率15.2%複勝率21.4%
 NF【3-4-2-11/20】勝率15.0%、連対率35.0%、複勝率45.0%
 非NF【10-5-7-103/125】勝率8%連対率12%複勝率17.6%

・ノーザンファーム生産のサトノクラウン産駒の勝率15.0%はノーザンファームの2歳戦トータルの勝率17.6%を下回る数字。非ノーザンファーム生産馬の戦績を見ると、勝率はサトノダイヤモンドを上回っているが、連対率と複勝率は大きく下回っており。複勝率が20%を切っているのはあまり印象が良くなく、繁殖の質を覆す程の成績は残せていない現状が見えてくる。

デクラレーションオブウォー

11-12-7-81/111】勝率9.9%連対率20.7%複勝率27.0%
 NF【0-1-1-1/3】勝率0.0%、連対率33.3%、複勝率66.7%
 非NF【11-11-6-80/108】勝率10.2%連対率20.4%複勝率25.9%

・萩S1着、ホープフルS2着、京都2歳S2着と活躍したトップナイフは杵臼牧場の生産馬。

・ノーザンファーム生産のデクラレーションオブウォー産駒はカレンパンピナップ1頭しか出走しておらず、新馬2着→未勝利4着→未勝利3着の3走のみの戦績。

非ノーザンファーム生産馬が11勝をあげ勝率10.2%を残したのは非常に優秀な数字。リアルスティール(10.1%)はほぼ同じ勝率だが、サトノダイヤモンド(7.4%)、サトノクラウン(8%)が10%を切る勝率しか残せておらず、デクラレーションオブウォーの資質を裏付けする実績といえる。

 ※非ノーザンファーム生産馬の勝率、連対率、複勝率

 デクラレーションオブウォー産駒:11勝、勝率10.2%、連対率20.4%、複勝率25.9%
 リアルスティール産駒:12勝、勝率10.1%、連対率16.0%、複勝率23.5%
 サトノダイヤモンド産駒:7勝、勝率7.4%、連対率17.0%、複勝率27.7%
 サトノクラウン産駒:10勝、勝率8%、連対率12%、複勝率17.6%

キズナ、シルバーステートとの比較について

・非ノーザンファーム生産馬の戦績を比較する実例として、初年度産駒にノーザンファーム生産馬が多く含まれていない中、好成績をあげたシルバーステート、キズナの2頭の種牡馬の2歳戦での戦績を振り返り、今年の状況と比較していく。

シルバーステート(※2021年の2歳戦での戦績)

17-12-13-120/162】勝率10.5%連対率17.9%複勝率25.9%
 NF【0-2-0-5/7】勝率0.0%、連対率28.6%、複勝率28.6%
 非NF【17-10-13-115/155】勝率11.0%連対率17.4%複勝率25.8%

・主な活躍馬:ウォーターナビレラ(ファンタジーS1着、阪神ジュベナイルフィリーズ3着・伏木田牧場生産)、コムストックロード(2勝・ビッグレッドファーム)、ベルウッドブラボー(2勝・チェスナットファーム)、ロン(2勝・三嶋牧場)

キズナ(※2019年の2歳戦での戦績)

33-30-28-232/323】勝率10.2%連対率19.5%複勝率28.2%
 NF【1-6-3-5/15】勝率6.7%、連対率46.7%、複勝率66.7%
 非NF【32-24-25-227/308】勝率10.4%連対率18.2%複勝率26.3%

・主な活躍馬:ビアンフェ(函館2歳S1着、京王杯2歳S2着・ノースヒルズ)、マルターズディオサ(2勝、阪神ジュベナイルフィリーズ2着・天羽禮治)、クリスティ(2勝・荻伏三好ファーム)、エグレムニ(2勝・社台ファーム)、ルーチェデラヴィタ(2勝・広富牧場)、シャンドフルール(2勝・ノースヒルズ)

両馬とも非ノーザンファーム生産馬が勝率10%超をマークしており、このラインを超えている今年のデクラレーションオブウォー、リアルスティールは評価に値することが分かる。

連対率は両馬とも非ノーザンファーム生産馬が17%超。この実績を超えている今年のデクラレーションオブウォー(20.4%)は非常に優秀。

複勝率は両馬とも非ノーザンファーム生産馬が25%超。今年の新種牡馬でこの数字を超えているのはサトノダイヤモンド(27.7%)、デクラレーションオブウォー(25.9%)。

各指標を見て行くとデクラレーションオブウォーは非ノーザンファーム生産馬という括りでいうと、2019年のキズナ、2021年のシルバーステート級の数字を残したと言えるが、2勝以上した馬はトップナイフ1頭のみ。シルバーステートはこの時期に4頭、キズナは6頭もの2勝以上した産駒を送り出している事実は大きく、中身の濃さではこの両馬には劣っていると言わざるを得ないだろう。ただ、今後に向けて情勢は明るいと思われ、2023年の種付料は今年から20万円増となっている。