注目種牡馬コラム【3】ホットロッドチャーリーが今年よりスタッドイン

今年より社台スタリオンステーションにて供用されることとなった新種牡馬・ホットロッドチャーリーをご紹介する。産駒デビューは2026年になるが、マインドユアビスケッツに続くDeputy Minister系の導入となる。

戦績とレース動画

・2018年米国産のOxbow産駒。現役時は19戦5勝、2着6回、3着3回。G1-ペンシルヴェニアダービー(d9f)が唯一のG1勝ちで、他にG2-ルイジアナダービー(d9.5f・レコード勝ち)、G2-マクトゥームチャレンジラウンド2(d1900m)、G2-ルーカスクラシックS(d9f)に勝利。他にドバイワールドC2着、ベルモントS2着、BCジュヴェナイル2着、ケンタッキーダービー2着、ホイットニーS3着のG1入着5回を誇り、大舞台で安定して好走。`Chuck’の愛称で親しまれ、ハスケルSで1着入線→7着に降着となったレースを含め、強い印象を残した現役生活を送る。

※3歳時にBCクラシックへ出走した際にHot Rod Charlieのオーナーに密着した動画。

https://twitter.com/WHR/status/1612777676971941888

※Hot Rod Charlieの幼駒時代の写真

https://twitter.com/WHR/status/1487881803935494152

・デビュー4戦目(2歳10月・d8f)に勝ち上がると、次走はG1-BCジュヴェナイルに出走。14頭立ての最低人気だったが、Essential Qualityの2着と大健闘。2歳から走れる産駒を輩出出来そうな期待が持てる戦績といって良いだろうか。

・3歳3月にG2-ルイジアナダービーをレコード勝ちし、次走G1-ケンタッキーダービーへ3番人気で出走。見せ場十分なレースとなるも、結果は3着入線(後に1着入線馬の失格に伴い2着に繰り上がり)。この世代上位の力量を持っていることを最高の舞台で示した。

・以後、2冠目のプリークネスSは使わずに次走は3冠最終戦のG1-ベルモントS。8頭立ての2番人気に支持され、逃げの手に出るも、直線では1番人気のEssential Qualityに競り負け、2着。3着以降は大きく離されての入線となっており、堂々たる内容だった一戦。尚、このレースでHot Rod Charlieが記録したベイヤースピード指数は108だが、過去の勝ち馬、American Pharoah(104)、Tapwrit(103)、Justify(101)を上回る優秀な指数。米3冠で2着→不出走→2着、という戦績は胸を張れるもので、レース内容も良好。

・次走はG1-ハスケルS。このレースは前代未聞の一戦となり、直線でHot Rod Charlieが左に斜行し、Midnight Bourbonを落馬させてしまうアクシデントが発生。レースはハナ差でHot Rod CharlieがMandalounを抑えて1着入線するも、7着に降着。

・捲土重来を期して出走した次走のG1-ペンシルヴェニアダービーは1番人気に応えて逃げ切り勝ち。結果的にこの勝利が唯一のG1タイトルとなっている。

・その後、11月のG1-BCクラシックは4着→12月のG2-サンアントニオSは2着。年が明け4歳となり、ドバイワールドカップに照準を絞り、早々にドバイ入り。前哨戦のG2-マクトゥームチャレンジラウンド2から始動すると、これを2着に5馬身1/4差をつけて圧勝。続くG1-ドバイワールドカップは激闘となり、人気のLife Is Goodが直線残り200を過ぎた辺りで一杯になったところを内から強襲し、2着

・アメリカへ帰国後、6月のG3で2着→8月のG1-ホイットニーSではLife Is Goodの返り討ちにあい3着→10月のG2-ルーカスクラシックSで1着→11月のG1-BCクラシックで勝ったFlightlineから15馬身差の6着。このレースを最後に引退。

血統

・父のOxbowは2010年米国産のAwesome Again産駒。母のTizamazingはBCクラシック連覇などG1・4勝のTiznowの全妹になる良血馬。現役時は13戦3勝、2013年のG1-プリークネスS、G3-ルコントSの勝ち馬で、同年のベルモントS2着、ケンタッキーダービー6着。Hot Rod Charlieが唯一の産駒G1馬で他に4頭の産駒が重賞勝ち。昨年のブラッドホースによる北米サイアーランキング31位。昨年は143頭が出走し92頭が勝利(64.3%)、5頭がブラックタイプ勝ち(3.5%)。今年の種付料は1万米ドル。

・母のIndian Missは2009年米国産のIndian Charlie産駒。現役時は2戦未勝利に留まったものの、母となり大成功を収め、2021年の最優秀繁殖牝馬に選出された。テーラーメードファームのKatie Taylor氏は「私がこれまで一緒に仕事をする喜びを感じた中で最も注目に値する牝馬の1頭です。印象的な身長、完璧な体型を持ち、理想的な繁殖牝馬の体現者であるために注目に値します」とコメント。Hot Rod Charlieの3つ上の半兄・Mitole(父・エスケンデレヤ)は2019年にBCスプリント、フォアゴーS、メトロポリタンH、チャーチルダウンズSの4つのG1を含む重賞5勝と大活躍し、同年のエクリプス賞最優秀短距離馬となった名馬。

※母・Indian Missが繋養されているテーラーメードファームのtwitterより。Indian Missの画像が出ている。

尚、Hot Rod Charlie、Mitoleの半妹・Lucky Dime(牝6、米7戦1勝、父・Creative Cause)は昨年11月のキーンランド繁殖セールにMedaglia d’Oroの仔を受胎した状態で上場され、吉田勝己氏が85万米ドルにて購買している。数年後には伯父に2頭の米G1馬を持つノーザンファーム産の馬がデビューすることとなりそうである。

・母父のIndian Charlieは1995年米国産のIn Excess産駒。現役時は5戦4勝、デビュー4連勝でG1-サンタアニタダービーを制し、次走のケンタッキーダービーでは1番人気に推されるもReal Quietの3着。結果的にこのレースを最後に引退。父としてUncle Mo(BCジュヴェナイル等)、Indian Blessing(BCジュヴェナイルフィリーズ等)などを輩出。Uncle Moは種牡馬としてGrey Sovereign→フォルティノと続くこの父系の屋台骨を支える後継種牡馬として、Nyquist(ケンタッキーダービー等)、Mo Donegal(ベルモントS)などを輩出中。

Indian Charlieは母父として近年特筆すべき実績を残しており、Hot Rod Charlie、MitoleのG1馬兄弟の他に昨年のロンジンワールドベストレースホースランキング首位のFlightline、昨年のドバイゴールデンシャヒーンの勝ち馬・Switzerlandを輩出。現在、アメリカで主流となっているMr. Prospectorが全く入っておらず、Northern Dancerは自身の血統表の「4」の位置にあるに過ぎず、Bold Rulerは「5」の位置にあるのみ、という血統構成。尚、日本調教馬で「母父・Indian Charlie」の主な活躍馬にシルクロードSを制したシヴァージがいる。

Deputy Minister

・Hot Rod Charlieの曾祖父はDeputy Minister。Deputy Ministerは直仔のAwesome Againやフレンチデピュティ、フレンチデピュティの2ndクロップになるクロフネなどを通じ、日本競馬において大きな足跡を残してきた。近年でもDeputy Ministerの血が入ったソダシ、レッドルゼル、ポタジェ、マルシュロレーヌがG1、交流G1を制覇するなど、父系からも母系からもその影響力を行使している。

・Hot Rod Charlieの5代血統表は以下の通り。合わせて同じDeputy Ministerの孫になるマインドユアビスケッツの5代血統表も示す。Hot Rod CharlieはDeputy Ministerの3×5、Mr. Prospectorの5×5のクロスを持ち、フレンチデピュティ、クロフネの血を持つ肌との配合ではDeputy Ministerのクロスが発生することになる。Hot Rod Charlieとマインドユアビスケッツは曾祖父が同じDeputy Ministerであること以外にも血統的に似た部分があり、共にBlushing Groom、Caroの血が入っている。ただ、大きな違いはマインドユアビスケッツにはHail to Reasonが5代血統表内において3本入っており、この内の1本はHaloが入っている点になる(血統表の「5」の位置)。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001349317/pedigree/

https://www.jbis.or.jp/horse/0001302899/pedigree/

・マインドユアビスケッツ産駒のこれまでの交流重賞勝ち馬2頭(デルマソトガケ、マルカラピッド)の母父はいずれもサンデーサイレンスの直仔。一応、両馬ともHail to Reasonの5×5のクロスを持っているが、サンデーサイレンスの血を持つ肌をつけやすい、という意味以上のものは特に無いと見てよいだろう。

・マインドユアビスケッツ産駒の実例をみても、Deputy Ministerのクロス(父方だけでなく母方にもDeputy Ministerが入っている意味でのクロス)を特に狙って配合されている印象は無く、実例は少ない。ただ、以下のデータを見るとDeputy Ministerの血を持つ肌との配合ではトータルよりも多く勝ちあがっているのは事実で、こうした傾向はHot Rod Charlieも引き継ぐ可能性があろう。

マインドユアビスケッツ産駒トータル
79頭デビュー→20頭が勝ち上がり(25.3%)

 「母父・クロフネ」+「母母父・フレンチデピュティ」Deputy Minister4+5(父方)×4(母方)
 4頭デビュー→2頭勝ち上がり(50.0%)

 「母父・フレンチデピュティ」Deputy Minister4+5(父方)×3(母方)
 3頭デビュー→1頭勝ち上がり(33.3%)

 「母母父・クロフネ」Deputy Minister4+5(父方)×5(母方)
 2頭デビュー→0頭勝ち上がり(0%)

・当面の注目は社台グループが何頭種付けするのか、どんな繁殖牝馬を種付けするのか、になろうが、その辺りの情報は例年出る社台グループの繁殖牝馬名簿の発表を待ちたい。ちなみにHot Rod Charlieの初年度の種付料は200万円。同額の種牡馬にはダノンキングリー、スワーヴリチャード、アルアイン、ファインニードル、ゴールドシップダノンバラード、ブラックタイド、マクフィがいる。