注目種牡馬コラム【5】新種牡馬・ストラクター

今回は今年からレックススタッドにて供用開始となる新種牡馬・ストラクターを取り上げる。BCジュヴェナイルターフの勝ち馬で、父はPalace Malice。BCジュヴェナイルターフの優勝馬が日本で種牡馬入りするのは初となるが、戦績や血統について触れていく。

戦績

・ストラクターは2017年米国産のPalace Malice産駒。現役時は4戦3勝、2歳G1-BCジュヴェナイルターフ(t8f)、2歳G3-ピルグリムS(t8.5f)の勝ち馬。デビュー3連勝でBCジュヴェナイルターフを制するも、その後、戦線復帰したのは4歳2月。この復帰戦で4着と敗れたのが最後のレースとなり、引退。2018年9月キーンランド1歳馬セールにて16万米ドルにて取引され、2019年3月OBS2歳馬トレーニングセールにて85万米ドルにて取引された馬。

・以下の動画は2019年のG1-Bcジュヴェナイルターフ(t8f)でのもの。中団のインからうまく立ち回り、直線で鋭く差し込んで1着。

・以下の動画はデビュー戦勝利後に出走した2019年のG3-ピルグリムS(t8.5f)でのもの。出たなりに好位を進み、直線早め先頭からの押し切り勝ち。

ストラクターの父・Palace Malice

・父のPalace Maliceは2010年米国産のCurlin産駒。現役時は19戦7勝、G1-ベルモントS(d12f)、G1-メトロポリタンH(d8f)の2つのG1を含む重賞6勝。名馬・Curlinの初年度産駒で、Palace Maliceが勝ったベルモントSはCurlin産駒の初重賞制覇になる。Palace Maliceの母・パレスルーマーは、Palace MaliceがベルモントSを勝った年、2013年のファシィグティプトンノベンバーセールにて、吉田勝己氏が110万米ドルで落札し、ノーザンファームにて繁殖入り。アイアンバローズ(父・オルフェーヴル、ステイヤーズS2着、阪神大賞典2着)、ジャスティンパレス(父・ディープインパクト、神戸新聞杯1着、ホープフルS2着、菊花賞3着)らを輩出。

・Palace Malice産駒はストラクターの他にMr. Monomoy(1stクロップ:G2-リズンスターS)、Like the King(2ndクロップ:G3-ジェフルビーS)、Fly On Angel(1stクロップ:G3-チャールズタウンオークス)が重賞勝ち。産駒が勝った重賞はストラクターが2歳、Mr. Monomoyが3歳2月、Like the Kingが3歳3月、Fly On Angelが3歳8月。G1・7勝のMonomoy Girlの半弟・Mr. MonomoyがリズンスターS勝利後に戦線復帰出来ずに引退となったのが痛かったが、産駒は3歳春までに重賞を勝つものの、その後、目立った活躍が出来ておらず、3rdクロップ(2019年産・現4歳)、4thクロップ(2020年産・現3歳)からは重賞勝ち馬は出ていない状況で、総じて尻すぼみ感が否めないか。尚、Palace Malice産駒はノースヒルズのアクイール(牝5・現役)1頭のみが中央で出走しており、24戦1勝(中京ダ1800)。

初年度(2016年)は2万米ドルだったPalace Maliceの種付料は一時、2万5000米ドルまで上昇したが、昨年は1万2500米ドル、今年は7500米ドルと急降下中。ストラクターがG1を勝ったのは2019年。翌2020年は自身最高の2万5000米ドルに種付け料が上がっており、繁殖の質が上がったと思われる翌2021年産まれの現2歳はPalace Malice産駒の真価が問われる世代。ただ、直近の種付料の推移を見ると、Palace Maliceへの期待感は萎みつつある印象。

ストラクターの祖父・Curlin

・Palace Maliceの父、Curlinは以下のように後継種牡馬候補が続々と出ている。Curlin産駒は昨年のブリーダーズカップで3勝(Malathaat、Cody’s Wish、Elite Power)をあげ、他にNestがG1を3勝するなど、活躍が続いている。目下の状況はCurlinの後継種牡馬争いの真っただ中にあると言え、今年の種付料を見るとストラクターの父・Palace Maliceはこの後継争いからはやや脱落しかけている印象があり、ストラクターの日本行きに至った経緯とこうした状況は無縁ではなさそうだがどうか。

 Keen Ice(3rdクロップ:トラヴァーズS等)※今年の種付料1万2500米ドル
 └父としてRich Strike(2022年ケンタッキーダービー)を初年度産駒から輩出。

 Connect(4thクロップ:シガーマイルH等)※今年の種付料2万5000米ドル
 └父としてRattle N Roll(2021年ブリーダーズフューチュリティ)を初年度産駒から輩出

 Good Magic(6thクロップ:BCジュヴェナイル等)※今年の種付料5万米ドル
 └父としてBlazing Sevens(2022年シャンペンS)を初年度産駒から輩出

・Curlinの直仔、孫は中央でこれまでに25頭が出走しているが、大物はまだ出ておらず2勝クラス勝ちまで。ヴォワドアンジェ(牝5・中央抹消)は2勝クラスを勝った後に3勝クラスで2着2回、3着3回と善戦。ビヨンドザファザー(牡4)は2勝クラス1着→3勝クラス2着。

・母父に3代までにCurlinの血が入っている馬は中央で20頭が出走しているが、ガストリック(父・ジャスタウェイ、母父・Curlin)が昨年のG2-東京スポーツ杯2歳S勝ち、サンライズラポール(父・Constitution、母父・Curlin)が3勝クラス勝ち。実績的にはCurlinは母系に入ったほうが日本ではここまでは好結果を出していると言える。

ストラクターの母、母父

・母のMiss Always Readyは2012年米国産のMore Than Ready産駒。現役時は5戦1勝。Miss Always Readyの全姉・More Than RealはG2時代のBCジュヴェナイルフィリーズターフの勝ち馬。More Than Realの孫に2頭の豪重賞勝ち馬がいる。

・母父のMore Than Readyは1997年米国産のサザンヘイロー産駒。現役時は17戦7勝、G1-キングズビショップS(d7f)、2歳G2-サンフォードS(d6f・2着に9馬身3/4差)、G2-ハッチソンS(d7f)、2歳G3-トレモントS(d5.5f・レコード勝ち)の勝ち馬。昨年8月に老衰のため死亡。南半球に長年シャトルされ、北半球で7頭、南半球で6頭のチャンピオンホースを輩出し、史上最年少でステークス勝ち馬100頭と勝ち馬1000頭を達成。北米の種牡馬としては史上最多のブラックタイプ勝ち馬216頭を輩出(2022年8月末時点)。主な産駒にRoy H(BCスプリント2勝)、More Joyous(豪G1・7勝)、Sebring(ゴールデンスリッパー等)、Uni(BCマイル等)、Rushing Fall(BCジュヴェナイルフィリーズターフ等)。母父としてはカフェファラオ、Wellington(香港G1・4勝)などを輩出。

ストラクターの5代血統表

・ストラクターの5代血統表は以下の通り。

https://www.jbis.or.jp/horse/0001364823/pedigree/

・ストラクターはMr. Prospectorの4×5、Deputy Ministerの4×4のクロスを持つ馬。以下にストラクターの4代までに入っている父系の血統(=産駒の5代血統表までに入る血統)を列記する。

 産駒の「2」の位置に入る血統:Palace Malice
 産駒の「3」の位置に入る血統:Curlin、More Than Ready
 産駒の「4」の位置に入る血統:Smart Strike、Royal Anthem、サザンヘイロー、デヒア
 産駒の「5」の位置に入る血統:Mr. Prospector、Deputy Minister、Theatrical、Red Ransom、Halo、Woodman、Deputy Minister、Bold Ruckus

・産駒の「3」の位置に入るMore Than Ready。この馬を3代内に持つ日本での活躍馬にいずれも母父がMore Than Readyになるカフェファラオ(フェブラリーS2勝、マイルChS南部杯等)、ナックビーナス(キーンランドC)や、More Than Readyの直仔・ジャングロ(ニュージーランドT)がいる。