注目種牡馬コラム【6】新種牡馬・ウィルテイクチャージ

今回はダーレー・ジャパンスタリオンコンプレックスにて今年から供用開始となる新種牡馬・ウィルテイクチャージを取り上げる。昨年、アメリカでG1馬を出したばかりのUnbridled’s Song産駒の新種牡馬の戦績、血統、産駒成績について触れていく。

戦績

・ウィルテイクチャージは2010年米国産のUnbridled’s Song産駒。現役時は21戦7勝、G1-トラヴァーズS(d10f)G1-クラークH(d9f)、G2-オークローンH(d9f)、G2-ペンシルヴェニアダービー(d9f)、G2-レベルS(d8.5f)の勝ち馬。Fappianoの3×4のクロスを持つ。2011年9月キーンランド1歳馬セールにて42万5000米ドルにて取引された馬。馬体は大柄で体高は17ハンド(約172.72cm)を少し超えるまで成長していたとされる。尚、後述するが父のUnbridled’s Songも体高173cmを誇る大型馬。

・以下の動画は2013年8月のG1-トラヴァーズS(d10f)。3歳1月にL-スマーティジョーンズS、3歳3月にG2-レベルSを勝ち、米3冠に挑むもケンタッキーダービー8着→プリークネスS7着→ベルモントS10着といずれも勝ち馬から12馬身以上離された結果に終わる。その後、7/27のG2-ジムダンディS(d9f)でベルモントSの勝ち馬・Palace Maliceから1馬身差の2着と健闘。その後、臨んだのがこのレースになる。

・以下の動画は2013年11月のG1-BCクラシック(d10f)。トラヴァーズS1着→ペンシルヴェニアダービー1着とし、出走。単勝13倍の人気だったが、4角先頭からの押し切りを狙ったMucho Macho Man(当時5歳)目がけて直線外から猛追。惜しくもハナ差で2着となったが、好内容だった一戦。

・その後、中3週でG1-クラークH(d9f)に出走し、Game On Dudeをアタマ差抑えて1着。2013年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に選出される。古馬となり、ドンH(G1)2着→サンタアニタH(G1)2着→オークローンH(G2)1着→アリシーバS(G2)6着→スティーヴンフォスターH(G1)2着→ホイットニーS(G1)3着と走り、繋靭帯を痛めたことを理由に4歳9月で引退。

ウィルテイクチャージの父・Unbridled’s Song

・父のUnbridled’s Songは1993年米国産のUnbridled産駒。現役時は12戦5勝、2歳G1-BCジュヴェナイル、G1-フロリダダービー、G2-ウッドメモリアルSの勝ち馬。体高173cmを誇る大型馬で、父・Unbridledの初年度産駒。ちなみに同じUnbridledの初年度産駒からはケンタッキーダービー馬・Grindstoneも出ており、Grindstoneが勝った1996年のケンタッキーダービーでUnbridled’s Songは1番人気に推されていたが5着。

・初年度産駒からUnbridled Elaine(BCディスタフ)を輩出するなど、種牡馬として活躍。代表産駒・Arrogate(BCクラシック、ドバイワールドC、ペガサスワールドC、トラヴァーズS)やLiam’s Map(BCダートマイル等)、Midshipman(BCジュヴェナイル等)らを輩出。日本でもラヴェリータ(交流重賞7勝)、アグネスソニック(NHKマイルC2着等)らを輩出。近年はBMSとして輝きを放っており、日本ではコントレイル、スワーヴリチャード、ジャックドール、ノットゥルノ、ダノンプラチナ、トーホウジャッカルらが活躍。また「母父父」がUnbridled’s Songになる活躍馬にG1馬・ラウダシオン、重賞2勝のリトルゲルダ、重賞2勝のリアアメリアなどがいる。

ウィルテイクチャージの母、母父

・母のTake Charge Ladyは1999年米国産のデヒア産駒。現役時は22戦11勝、G1-スピンスターS×2G1-アッシュランドS、G2-フェアグラウンズオークス、G2-アルシバイアディーズS、G3-シルヴァーブレットデイS、G3-ドッグウッドS、G3-アーリントンメイトロンHの勝ち馬。

繁殖牝馬として成功を収め、2013年のケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選出される。ウィルテイクチャージの他にTake Charge Indy(父・A. P. Indy:フロリダダービー)、As Time Goes By(父・American Pharoah:ビホルダーマイルS)がG1馬となり、孫からTake Charge Brandi(父・Giant’s Causeway:BCジュヴェナイルフィリーズ、スターレットS)、Omaha Beach(父・War Front :マリブS、サンタアニタスプリントチャンピオンシップ、アーカンソーダービー)が出ている。この牝系の優秀さは種牡馬・ウィルテイクチャージのバックボーンとして好材料以外の何物でもないだろう。

・母父のデヒアは1991年米国産のDeputy Minister産駒。現役時は9戦6勝、2歳G1-ホープフルS、2歳G1-シャンペンS、G2-ファウンテンオブユースS、2歳G2-サラトガスペシャルS、2歳G3-サンフォードSの勝ち馬。BCジュヴェナイルは8着に敗れるも、エクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出される。3歳春に右後脚管骨を骨折し引退。母父としてTake Charge Ladyの直仔以外にCity of Light(ペガサスワールドC、BCダートマイル、マリブS、トリプルベンドS)を輩出。

産駒成績

・2015年にスタッドイン。2016年産の1stクロップ以降、2020年産の現3歳まで5世代が稼働中。2018年産の3rdクロップ・There Goes Harvardが昨年5月のG1-ハリウッドゴールドカップを勝ったのが初の産駒G1勝ち。他にEsidio(2020年のペルー最優秀古馬、最優秀ステイヤー、母父・Silver Deputy、1stクロップ)、Manny Wah(米G2-フィーニクスS)、Abaan(米G3-W.L.マックナイトS)、Will’s Secret(米G3-ハニービーS)が重賞勝ち。他に3頭のリステッド勝ち馬、5頭のステークス勝ち馬を出している。

・5世代でG1馬1頭、他に重賞勝ち馬4頭という数字をどうみるかだが、この数字の多くは昨年出したもので、以下の3頭が昨年重賞勝ち(併記した馬齢は昨年時のもの)。いずれも使い込まれて重賞制覇に達したもので、昨年に関しては古馬のみが重賞勝ち。芝、ダート、6f、10f、12fとバラエティに富んだ条件で重賞を勝っているのは注目に値するか。

 Abaan(せん5、母父・Tapit、2ndクロップ)
 ・1/29のG3-W.L.マックナイトS(芝12f)に勝利
 ・デビューから10戦目で重賞勝ち。リステッド勝ち後、初めての重賞出走だったが1番人気に応えて勝利。3歳9月のデビューで、勝ち上がりがデビュー6戦目の4歳9月という馬。

 There Goes Harvard(牡4、母父・Fusaichi Pegasus、3rdクロップ)
 ・5/30のG1-ハリウッドゴールドC(ダ10f)に勝利
 ・デビューから12戦目で重賞勝ち。ハリウッドゴールドCが初の重賞出走で、単勝オッズ9.8倍の評価だったが見事に勝利。

 Manny Wah(牡6、母父・Proud Citizen、1stクロップ)
 ・10/7にG2-フィーニクスS(ダ6f)に勝利
 ・デビューから34戦目で重賞勝ち。次走のG1-BCスプリントで4着と健闘。重賞勝ちまでにマリブS(G1)3着など3回の重賞入着やBCスプリント5着などの戦歴があり、こつこつ稼いできた馬。

・昨年は古馬3頭が重賞を制したが、3歳に重賞を制した産駒としてWill’s Secret(母父・Giant’s Causeway、3rdクロップ)がいる。デビュー6戦目になる2021年3月のG3-ハニービーS(d8.5f)を制し、以後、アッシュランドS(G1)3着→ケンタッキーオークス(G1)3着と3歳春にピークを迎え、以後は6着(G3)→4着(G1)→7着(G1)。その後、5歳1月まで走るが1勝のみに終わり、3歳春の輝きは取り戻せなかった馬である。

・3頭のリステッド勝ち馬、5頭のステークス勝ち馬を見ていくと、2歳時に勝っている馬が2頭いるが、先述した重賞勝ち馬の戦績と合わせると、産駒の傾向として2歳~3歳春にピークを迎える産駒よりは、3歳夏以降に活躍し出す産駒が多そうな印象で、これは「ミッドサマーダービー」トラヴァーズSが初のG1勝ちとなったウィルテイクチャージ自身の現役時の戦歴と重なるものがあり、日本での産駒も同様の傾向を踏襲しそうに一見すると見えるが後述の通り、実際は異なる傾向を示している。

 Luna Fortis(母父・Malibu Moon):ペルーで5歳から6歳にかけてリステッド3勝
 Cleopatras Charge(母父・Smart Strike);2歳11月にリステッド勝ち
 Rainbow Danny(母父・Indygo Shiner):ペルーで3歳にリステッド勝ち

 I’mgonnabesomebody(母父・Big Brown):4歳9月と4歳11月にステークス勝ち
 Maybe I Will(母父・ヘニーヒューズ):4歳6月にステークス勝ち
 Cashcheckorcharge(母父・Sky Mesa):3歳10月にステークス勝ち
 Great Sister Diane(母父・A.P.Indy):3歳9月にステークス勝ち
 KIM K(母父・Trippi):2歳9月にステークス勝ち。

中央ではこれまでに5頭が出走し、4頭が勝利。4頭とも2勝以上をあげており、日本競馬への適性は明らかに高いといえる。アメリカでの傾向とは異なり、2歳から勝利をおさめている馬が多く、勝ち鞍は全てダート。1800m前後が適距離と言える戦歴。

 ヘルシャフト(母父・Mr. Greeley):14戦6勝(中央3勝、高知3勝)(現役)
 ・3歳3月に伏竜S(中山ダ1800)勝ち。残り2勝は京都ダ1400×2(2歳11月、3歳1月)。

 ペルルドール(母父・Galileo);23戦2勝
 ・福島ダ1700(3歳4月)、札幌ダ1700(3歳8月)で勝利。

 シアトルテソーロ(母父・Southern Image):8戦2勝
 ・中山ダ1800(2歳11月)、東京ダ1600(4歳5月)

 フランスゴデイナ(母父・Curlin):11戦2勝(現役)
 ・阪神ダ1800(2歳11月、2歳12月)

・ダーレー・ジャパンは「ダート3冠を狙える種牡馬」とコメントしているが、来年から始まる3歳ダート3冠競走は4月下旬に羽田盃(大井ダ1800・1着賞金5000万円)→6月上旬に東京ダービー(大井ダ2000・1着賞金1億円)→10月上旬にジャパンダートクラシック(大井ダ2000・1着賞金7000万円)が行われる。

・ウィルテイクチャージの現役時の戦歴やアメリカでの産駒傾向を踏まえると、10月のジャパンダートクラシックが最も向いていそうだが、ヘルシャフトやフランスゴデイナが早々に賞金を積み重ねていた実績は羽田盃、東京ダービーを狙う上では心強い材料だろう。初年度の種付料は120万円と発表されており、同じダート系の新種牡馬ではチュウワウィザードと同額となっている。