今回は社台グループの2023年1月の繁殖牝馬名簿をもとに、数年先の種牡馬動向を見通していく。この名簿は昨年の種付実績が載っているもので、産駒は今年産まれ、2年後の2025年にデビュー。本稿ではノーザンファームとは異なる種牡馬選択を行っている社台ファームの名簿を取り上げる。
※種付頭数は預託馬や白老ファーム繋養馬への種付けも含まれたものになる。
※前回のコントレイル編の記事は以下の通り。
※前々回のノーザンファーム編の記事は以下の通り。
※前年の2022年1月の社台グループ繁殖牝馬名簿に触れた過去記事は以下の通り。
右肩上がりの近年の社台ファームの2歳戦戦績について
・まず近5年の社台ファーム産馬の2歳戦の戦績を以下に示す。勝利数は2019年が底になり(39勝)、以後、40勝→51勝→85勝と大幅に数字を伸ばしており、勝率も8.2%→9.3%→10.1%→15.4%と4年連続で伸ばしている状況。
※上段は1着-2着-3着-着外-トータルの順。下段は勝率、連対率、複勝率の順。
2022年
85-67-63-336/551
15.4%、27.6%、39.0%
2021年
51-46-48-361-506
10.1%、19.2%、28.7%
2020年
40-48-46-296/430
9.3%、20.5%、31.2%
2019年
39-43-45-350/477
8.2%、17.2%、26.6%
2018年
49-39-42-312/442
11.1%、19.9%、29.4%
3歳世代(2020年産)のノーザンファームと社台ファームの違い
・昨年の2歳戦で85勝をあげた社台ファーム産の現3歳世代。この世代の社台ファームの種付頭数順はロードカナロア→イスラボニータ→マインドユアビスケッツ→ハーツクライ→ハービンジャーの順に多く、ノーザンファームの同世代の種付頭数順、ロードカナロア→ドゥラメンテ→モーリス→エピファネイア→ドレフォンとは大きく異なっている。以下にこの世代の種付頭数上位5頭と2歳戦での勝利数を示すが、社台ファームの2歳戦での好成績に大きく寄与しているのが、マインドユアビスケッツ産駒であることが分かる。
社台ファーム
ロードカナロア:種付頭数33頭→6勝
イスラボニータ:種付頭数31頭→7勝
マインドユアビスケッツ:種付頭数26→11勝
ハーツクライ:種付頭数23→4勝
ハービンジャー:種付頭数23→7勝
ノーザンファーム
ロードカナロア:種付頭数55→6勝
ドゥラメンテ:種付頭数39→9勝
モーリス:種付頭数39→12勝
エピファネイア:種付頭数38→13勝
ドレフォン:種付頭数36→4勝
・前々回の当コラムにてノーザンファームの昨年の種付実績について触れているが、今回はノーザンファーム編では取り上げなかった社台ファームだけで突出して種付頭数が多い3頭の種牡馬(ブリックスアンドモルタル、マインドユアビスケッツ、イスラボニータ)とコントレイル産駒について以下、触れていく。
ブリックスアンドモルタル
父・Giant’s Causeway、母・Beyond the Waves、母父・Ocean Crest
2014年産:9歳、体高:161.0cm
2022年トータル種付頭数:127
2022年社台ファーム種付頭数:29(※ノーザンファームは16頭)
2022年種付料:600万円
・今年1stクロップがデビューするブリックスアンドモルタル。ノーザンファームと比べて全体比で多くの種付頭数を確保しており、社台ファームでの昨年の種付頭数トップタイとなっている。ただ、2021年は51頭に種付けされており、それと比べると22頭減。
※ブリックスアンドモルタルの近年の種付料、種付頭数と社台ファームでの種付頭数
2020年種付け(600万円、現2歳):178頭-30頭
2021年種付け(600万円、現1歳):180頭-51頭
2022年種付け(600万円、今年産まれ):127頭-29頭
・昨年の配合相手をみていくと、29頭中、G1馬は5頭(シャンペルゼリーゼ、ダイワスカーレット、ジュリエットシアトル、ターフドンナ、チャリティーライン)。シャンペルゼリーゼは2020年の愛G1-メイトロンSの勝ち馬で、ブリックスアンドモルタルとの仔は初仔になる。ターフドンナは2015年の独G1-ディアナ賞(独オークス)の勝ち馬で、一昨年のチューリップ賞の勝ち馬・エリザベスタワー(父・Kingman)を出した牝馬。
マインドユアビスケッツ
父・Posse、母・Jazzmane、母父・Toccet
2013年産:10歳、体高:163.0cm
2022年トータル種付頭数:110
2022年社台ファーム種付頭数:29(※ノーザンファームは3頭)
2022年種付料:200万円
・1stクロップが昨年大活躍。近年の社台ファームでの種付頭数の推移をみると、2021年にほぼ半減となっているが、この年はその分がブリックスアンドモルタルに回った印象で、昨年の種付頭数はほぼ2020年並みに戻っている状況。
※マインドユアビスケッツの近年の種付料、種付頭数と社台ファームでの種付頭数
2019年種付け(200万円、現3歳):155頭-26頭
2020年種付け(200万円、現2歳):141頭-30頭
2021年種付け(200万円、現1歳):95頭-16頭
2022年種付け(200万円、今年産まれ):110頭-29頭
・今年は種付料が400万円に倍増。産駒は今年に入り、出世頭の交流G1馬・デルマソトガケがサウジダービーで3着と健闘。C.ルメール騎手に乗り替わった上で3/25のUAEダービーに転戦し、ケンタッキーダービー出走に向けたポイント獲得を狙う。他ではホウオウビスケッツが芝の1勝クラスを突破したのが目立つ戦績だが、3歳に限定した新種牡馬戦績ではリアルスティール(8勝)、サトノダイヤモンド(6勝)に劣る5勝のみ。デクラレーションオブウォーも同じ5勝だが、1勝クラスを2勝(タマモブラックタイ、ハウゼ)しており中身の濃さではこれにも劣っている。
イスラボニータ
父・フジキセキ、母・イスラコジーン、母父・Cozzene
2011年産:12歳、体高:161.0cm
2022年トータル種付頭数:175
2022年社台ファーム種付頭数:16(※ノーザンファームは3頭)
2022年種付料:200万円
・前年の2021年に1stクロップがデビューしているが、社台ファーム産のイスラボニータ産駒は12頭がデビューし、3頭が勝ち上がり(25.0%)。トータルでは59頭がデビューし、14頭が勝ち上がり(23.7%)。この数字がどの程度、反映されたかは不明だが昨年の社台ファームでの種付頭数は前年からほぼ半減の16頭にとどまっている。
※イスラボニータの近年の種付料、種付頭数と社台ファームでの種付頭数
2018年種付け(200万円、現4歳):170頭-25頭
2019年種付け(200万円、現3歳):142頭-31頭
2020年種付け(200万円、現2歳):122頭-23頭
2021年種付け(200万円、現1歳):159頭-35頭
2022年種付け(200万円、今年産まれ):175頭-16頭
・今年は種付料が150万円に減額となっているが、今年に入り、バトルクライ(1stクロップ)がリステッド勝ち、オメガリッチマン(2ndクロップ)が京成杯2着、アルーリングビュー(2ndクロップ)がリステッド2着、ヤマニンサルバム(1stクロップ)が3勝クラス1着・リステッド3着、コスタボニータ(1stクロップ)が3勝クラス1着と小粒ではあるが産駒の活躍が目立つ状況。プルパレイ(ファルコンS・社台ファーム産)に続く重賞勝ち馬の登場が待たれるが、種付頭数をみると社台ファームのバックアップは現1歳世代までは手厚いものになっていると言えそうである。
コントレイル
・注目のコントレイルにはソウルスターリング(コントレイルとの間の仔は3番仔になる)を筆頭に16頭が種付けされている。他では父も母も横文字の肌が12頭おり、この内、G1馬が半数の6頭もいる豪華な布陣。いずれも若い牝馬で、コントレイル産駒は2~5番仔になる走り頃。これらの中に大物が含まれている可能性は小さくなさそうだがどうなるか。
シャーラレイ(2012年米国産)
・G1-デルマーオークスの勝ち馬。コントレイル産駒は3番仔。
ジュマイエル(2013年愛国産)
・G1-サンタラリ賞の勝ち馬。コントレイル産駒は3番仔。
カラライナ(2012年米国産)
・G1-エイコーンS、CCAオークス、ラトロワンヌSの勝ち馬。コントレイル産駒は5番仔。2番仔のウィズグレイス(父・ディープインパクト)は東京芝2000mで2歳JRAレコード勝ちした現役馬。
エスキモーキセス(2015年米国産)
・G1-アラバマSの勝ち馬。コントレイル産駒は4番仔。
ファタルベーレ(2015年仏国産)
・G1-デルマーオークスの勝ち馬。コントレイル産駒は4番仔。
スピーチ(2017年米国産)
・G1-アッシュランドSの勝ち馬。コントレイル産駒は2番仔。
その他の主な種牡馬の種付頭数
エピファネイア:23
ロードカナロア:22
キズナ:15
モーリス:15
サートゥルナーリア:14
レイデオロ:14
ジャスタウェイ:12
ポエティックフレア:12
ニューイヤーズデイ:10
ナダル:9
アルアイン:7
トーセンラー:7
レッドファルクス:7
キタサンブラック:6
クリソベリル:6
シスキン:6
ドレフォン:6
エイシンフラッシュ:5
オルフェーヴル:5
サトノダイヤモンド:5
スワーヴリチャード:5
パドトロワ:5
リーチザクラウン:5
ルーラーシップ:5