新種牡馬産駒データ考【27】リアルスティール産駒、芝マイル以上で21勝。その意味とは?

今回はリアルスティール産駒の「芝マイル以上」での戦績を軸に現3歳世代の「芝マイル以上」での勢力図を2019年以降のデータと比較しつつまとめていく。

※各データは2歳戦開始から翌年の高松宮記念終了週までの期間内で当該世代があげたもの

まず、現4歳世代(2019年産)、現5歳世代(2018年産)、現6歳世代(2017年産)において、2歳戦開始から翌年の高松宮記念終了週までの間に「芝マイル以上」という切り口でみた場合、どのような勢力図になっていたのかをまとめていく。当然ながらこれらの世代では毎年、首位にはディープインパクトが君臨しており、ディープインパクト産駒と戦って各種牡馬の産駒は数字をあげていく必要があった、ということになる。尚、芝マイル以上で20勝以上している種牡馬のみをここでは取り上げている。

2017年産の芝マイル以上での勢力図について

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
ディープインパクト8031525.40%38.10%50.50%
【新】エピファネイア3126711.60%25.80%36.30%
【新】キズナ3128410.90%19.70%25.70%
ハーツクライ2717515.40%26.90%42.30%
オルフェーヴル242499.60%16.10%25.70%

・エピファネイア、キズナの両新種牡馬が2位、3位。両種牡馬とも出走回数がかなり多く、エピファネイア産駒は267回、キズナ産駒は284回。勝ち鞍では後れをとっているハーツクライ産駒の出走回数が175回なので、圧倒的に多い出走回数を背景に勝ち鞍を伸ばしていたことが分かる。

・この表には出ていないものも含め、有力種牡馬の勝率を列記すると、ディープインパクト産駒が25.40%、ハーツクライ産駒が15.40%、キングカメハメハ産駒が13.00%。この3頭にやや遅れを取っていたのがエピファネイア産駒(11.60%)、キズナ産駒(10.90%)ということになる。

2018年産の芝マイル以上での勢力図について

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
ディープインパクト5727820.50%33.10%41.00%
【新】モーリス3124912.40%25.30%34.50%
エピファネイア2825710.90%20.60%31.50%
【新】ドゥラメンテ2723511.50%17.90%24.70%
ハーツクライ2321710.60%23.00%30.40%
キズナ2221810.10%19.30%28.40%

・新種牡馬はモーリスが2位、ドゥラメンテが4位。前年のエピファネイア、キズナ同様、モーリス産駒もドゥラメンテ産駒も出走回数がかなり多く、モーリスは249回、ドゥラメンテは235回。ただ、この世代のエピファネイア産駒の出走回数257回よりは少なく、それでこの数字を出しているのは優秀と言える。

2019年産の芝マイル以上での勢力図について

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
ディープインパクト4621921.00%37.40%48.90%
ドゥラメンテ3228211.30%26.20%35.80%
ハービンジャー3026511.30%19.20%26.00%
エピファネイア2824611.40%22.00%33.70%
ハーツクライ2820113.90%23.40%36.30%
ロードカナロア2421211.30%23.10%32.50%
【新】キタサンブラック2113116.00%22.10%29.00%

・キタサンブラック産駒の勝率16.00%はディープインパクト産駒に次ぐものでかなり優秀。3世代目のエピファネイア産駒(11.40%)、キズナ産駒(6.10%)や2世代目のドゥラメンテ産駒(11.30%)、モーリス産駒(8.60%)を凌駕する勝率をマークし、この時点で非凡さを示していたことが分かる。

現3歳世代(2020年産)の芝マイル以上での勢力図について

・現3歳世代で芝マイル以上で20勝以上している種牡馬は以下の8頭で、新種牡馬はリアルスティールが唯一ランクイン。

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
エピファネイア3426013.10%21.20%31.20%
ハーツクライ2722811.80%21.90%30.30%
ハービンジャー2423210.30%19.40%29.30%
ドゥラメンテ2417513.70%25.70%37.10%
モーリス2218312.00%20.80%30.10%
キズナ2116312.90%25.20%31.90%
【新】リアルスティール2116812.50%23.80%32.10%
シルバーステート2114614.40%21.90%35.60%

・現3歳世代はディープインパクト産駒がほぼいなくなった最初の世代だが、芝マイル以上という切り口で見ると、出走回数が多い3頭(エピファネイア、ハーツクライ、ハービンジャー)がそのまま上位3頭となっており、ポストディープインパクトの時代の幕開けとしては、勝率を見る限り、毎年20%以上の勝率をあげていたディープインパクトに近い数字を残せた種牡馬はおらず、圧倒的に突き抜けた存在はまだいないように見えるのが現状だろうか。

・リアルスティールは連対率と複勝率はエピファネイアを超えており、健闘しているように見える。

近年の主な新種牡馬の1stクロップの芝マイル以上戦績(※高松宮記念終了週まで)

・これまでにあげてきたデータから当該世代の新種牡馬のみの数字を抜き出して以下にまとめる。

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
エピファネイア(2017年産)3126711.60%25.80%36.30%
キズナ(2017年産)3128410.90%19.70%25.70%
モーリス(2018年産)3124912.40%25.30%34.50%
ドゥラメンテ(2018年産)2723511.50%17.90%24.70%
キタサンブラック(2019年産)2113116.00%22.10%29.00%
リアルスティール(2020年産)2116812.50%23.80%32.10%

・リアルスティール産駒はほぼディープインパクト産駒とは戦うことがない点で、他の新種牡馬の1stクロップよりも恵まれている点がある、とすると、リアルスティール産駒の勝率はキタサンブラック以外の各種牡馬よりも優っている点を殊更に強調する事に大きな意味は見出しずらいだろう。

・ちなみにディープインパクトの後継種牡馬、キズナとシルバーステートの2019年産と2020年産の芝マイル以上での数字を比較すると、以下のようになるが、両種牡馬ともに分かりやすい程に数字が上がっている。両種牡馬とも出走回数に大きな増減は無く、エピファネイア、ドゥラメンテが2%弱しか勝率を伸ばしていない点を踏まえると、ディープインパクトが抜けた穴の一部を文字通り、後継種牡馬が埋めていることが分かる。

種牡馬勝ち鞍出走回数勝率連対率複勝率
キズナ(2019年産)101656.10%16.40%24.80%
キズナ(2020年産)2116312.90%25.20%31.90%
シルバーステート(2019年産)101566.40%17.30%25.60%
シルバーステート(2020年産)2114614.40%21.90%35.60%