新種牡馬産駒データ考【29】タリスマニック産駒、ダートに活路を見出す

今回は当コラムの【13】にて昨年の10月に一度、取り上げたタリスマニック産駒のその後、についてまとめていく。当時は産駒が中央では1勝のみで、勝率2.4%、連対率2.4%、複勝率4.9%と惨憺たる成績だったが、半年が経過し数値が改善されている。

※タリスマニックの経歴、レース動画、血統等については以下の過去記事をご参照下さい。

現在のタリスマニック産駒の戦績

トータル

9-9-8/129/155】
勝率5.8%、連対率11.6%、複勝率16.8%

・同じ新種牡馬と比較すると、数値はサトノクラウン(勝率6.0%、連対率10.3%、複勝率16.0%)と類似しており、昨年10月時点よりはかなり盛り返している印象。もちろんタスティエーラ(弥生賞)、トーセンローリエ(アネモネS)を出しているサトノクラウンと質の面で大きな差があるのは否めないが。

1-0-4-53/58】
勝率1.7%、連対率1.7%、複勝率8.6%

・ファルコンSで最低人気で3着に入ったサウザンサニーは出ているが、芝での数値が極めて特徴的でこの低い数値が現状のタリスマニック産駒の実像を表していると言える。ちなみに産駒が芝で勝っている種牡馬で勝率、連対率が共に2%を切っている種牡馬は他にいない。

ダート

8-9-4-76/97】
勝率8.2%、連対率17.5%、複勝率21.6%

・タリスマニック産駒の主戦場は現状、明らかにダートで、現時点ではホッコータルマエ(勝率7.8%、連対率14.1%、複勝率20.9%)を上回っている数字を残しているのは明るい兆候と言える。ただ、質の面ではやはり差があり、2勝馬を3頭出しているホッコータルマエと比べると、タリスマニック産駒に2勝馬はまだいない。ちなみに現3歳馬と関連する2019年の種付料を比較すると、ホッコータルマエは120万円、タリスマニックは180万円。

・そもそもタリスマニックとの配合を考える際にダートを念頭に置く向きは少数派だったと思われるが、初年度産駒のここまでの成績を踏まえ、ダートを念頭に置いた配合が増えてくる可能性は少なからずあるだろう。だが、現状、1勝馬しか出ていない質の問題と150万円(2023年度)という種付料を考慮に入れると、タリスマニックがダートサイアーとして名を上げる未来まで想像するのはさすがに難しいとは言えるだろうか。

・4/11時点での地方でのタリスマニック産駒の戦績をまとめると、19頭が出走し、13頭が勝ち上がり(68.4%)。AEIは1.09。モーモーレッドが佐賀で地方重賞2着2回、サヤオンニが門別で地方重賞3着1回。昨年10月の時点で10頭が出走し、8頭が勝ち上がり、となっており堅調に推移しているといった感じだろうか。

タリスマニック産駒の今後

・勝ち上がりが近そうな未勝利戦入着馬が多く、勝ち上がり頭数はまだ増えそうである。以下に入着実績のある未勝利馬6頭の近5走の着順を示すが、入着回数12回中、11回はダートになる

 ロングウッド:2着2着→11着→3着3着
 ルーチェステラーレ:4着→3着(芝)→2着2着→6着
 リグレイアー:2着→7着→3着→7着→5着
 イリュージョン:2着→4着→4着
 エテルネル:12着→2着→5着
 ハブル:2着→6着

・2勝馬がまだ出ていないように、勝ち上がった後に苦戦している馬が多いのが現状。以下の4頭が勝ち上がった後に1勝クラスや重賞に出走しているが、勝ち馬から1秒以上離されての敗戦が殆どで苦しい戦いが続いている。ファルコンS3着のサウザンサニーは次走、ダートの1勝クラスに1番人気で出走するも9着。

 ウェザーコック:8着(1.3秒差)→8着(1.6秒差)
 エーティースピカ:10着(2.0秒差)→15着(3.8秒差)→5着(1.6秒差)→10着(5.0秒差)
 サウザンサニー:3着(ファルコンS・0.5秒差)→9着(2.4秒差)
 カムランベイ:11着(1.2秒差)→7着(1.0秒差)

「Medaglia d’Oro系」

・タリスマニックの父はMedaglia d’Oro。Rachel Alexandra、Songbird、Golden Sixtyなどを輩出した大種牡馬だが、タリスマニックの他にヴィットリオドーロ、ViolenceなどMedaglia d’Oroを父に持つ種牡馬の産駒も日本で出走してきた。ここでは「Medaglia d’Oro系」としてMedaglia d’Oroの直仔と孫の戦績をまとめ、収得賞金上位馬を以下に列記していく。

フィドゥーシア(父・Medaglia d’Oro、母父・サンデーサイレンス:5450万円)
・芝のオープンで2勝、G3-アイビスサマーダッシュ2着。
・母のビリーヴはG1-高松宮記念、G1-スプリンターズS、G3-セントウルS、G3-函館スプリントSの勝ち馬。

ジャスパープリンス(父・Violence、母父・Bernardini:5200万円)
ダートのリステッドで2勝

エーシンメンフィス(父・Medaglia d’Oro、母父・Pine Bluff:4000万円)
・G3-愛知杯1着、G3-京都牝馬S2着。
・母のテネシーガールはG3-セントウルS、G3-ファンタジーSの勝ち馬。

メダリアビート(父・Medaglia d’Oro、母父・Defensive Play:3500万円)
ダートのオープンで1勝
・おじ(せん馬)のBetter Talk NowはBCターフ、マンノウォーS、マンハッタンH、ユナイテッドネイションズS、ソードダンサーSの米芝G1を5勝。

オマツリオトコ(父・ヴィットリオドーロ、母父・スマートボーイ:3130万円)
Jpn2-兵庫ジュニアGP1着、Jpn1-全日本2歳優駿2着
・母のマツリバヤシはJpn3-エーデルワイス賞2着

エーシンゴールド(父・Medaglia d’Oro、母父・Pulpit:1640万円)
ダートのオープンで1勝、Jpn1-ジャパンダートダービー2着
・伯父に大種牡馬・Tapit(G1-ウッドメモリアルSの勝ち馬)。

・収得賞金上位6頭中、4頭はダートで実績をあげた馬。芝で実績をあげた馬は共に母が芝重賞を制していたという共通点がある。