新種牡馬産駒データ考【31】ファインニードルとビッグアーサー

今回は「芝1200m以下」に絞って新種牡馬の戦績をまとめていく。このカテゴリーは近年、ロードカナロア産駒の独壇場となっていたが、この牙城を切り崩すかもしれない新興勢力が台頭中で大変興味深い状況となっている。

芝1200m以下、OPでの種牡馬別戦績について(2020年以降)

・表記の条件で勝利数上位3頭の種牡馬は以下の通り。2020年以降、この条件で110レースが行われてきたが、この内、16レース(14.5%)はロードカナロア産駒が勝利。出走回数が圧倒的に多いのもあるが、ダノンスマッシュ、ファストフォースの両G1馬を筆頭に近年のこのクラスはロードカナロア産駒が席捲してきた感があるが、ここにビッグアーサーが食い込んでいる点が注目に値する。

 ロードカナロア
 【136-103-81/1163】
 勝率11.7%、連対率20.6%、複勝率27.5%
 重賞勝ち馬6頭(ダノンスマッシュ、レイハリア、ファストフォース、ボンボヤージ、ダイアトニック、ジョーカナチャン)、重賞勝利数9

 ダイワメジャー
 【73-63-56/732】
 勝率10.0%、連対率18.6%、複勝率26.2%
 重賞勝ち馬1頭(レシステンシア)、重賞勝利数1

 ビッグアーサー
 【32-24-20/235】
 勝率13.6%、連対率23.8%、複勝率32.3%
 重賞勝ち馬2頭(トウシンマカオ、ブトンドール)、重賞勝利数2

・注目されるのはビッグアーサーの数字。ビッグアーサーは2世代しか稼働していない中でこの数字をマークしており、トウシンマカオ(1stクロップ・G3-京阪杯、L-オパールS)、ブトンドール(2ndクロップ・G3-函館2歳S)、ビッグシーザー(2ndクロップ・L-マーガレットS)がこの条件で活躍。早々にこの条件でトップ3の一角に食い込んでいる。

現3歳世代+現4歳世代に限定した場合の戦績について

・条件を同一にし、芝1200m以下+OPで、現3歳世代と現4歳世代に限定して、この3頭の種牡馬の産駒を比較したものが以下になる。2世代限定で集計すると、ビッグアーサーがロードカナロアを凌ぎ、勝ち鞍数トップ。勝率はダイワメジャーに及ばないが、連対率と複勝率は3頭中、トップの数字となっている。

 ビッグアーサー
 【32-24-20/235】
 勝率13.6%、連対率23.8%、複勝率32.3%

 ロードカナロア
 【27-19-13/202】
 勝率13.4%、連対率22.8%、複勝率29.2%

 ダイワメジャー
 【25-15-12/177】
 勝率14.1%、連対率22.6%、複勝率29.4%

・現3歳世代(2019年種付け→2020年産)と現4歳世代(2018年種付け→2019年産)の種付料を比較すると、以下の通りとなる。繁殖の質では明らかに劣っていると思われるビッグアーサーが短距離に特化することで、確実に存在感を発揮していることが分かる。

 ロードカナロア800万円(2018年)→1500万円(2019年)
 ダイワメジャー500万円(2018年)→500万円(2019年)
 ビッグアーサー100万円(2018年)→100万円(2019年)

2020年産(現3歳世代)の芝1200m以下の現時点の上位種牡馬

・新種牡馬ではファインニードルが勝ち鞍数でロードカナロアを凌ぎ3位に入り気を吐いている状況。ファインニードル産駒がスプリント路線で今後、ビッグアーサー同様、存在感を発揮することが出来るかどうかを見ていきたい。

 ビッグアーサー
 【17-11-13/104】
 勝率16.3%、連対率26.9%、複勝率39.4%、4勝馬1頭(ビッグシーザー・L-マーガレットS)、2勝馬3頭(ブトンドール・G3-函館2歳S)
 2019年種付料:100万円

 ダイワメジャー
 【10-6-4/55】
 勝率18.2%、連対率29.1%、複勝率36.4%、2勝馬2頭
 2019年種付料:500万円

 ファインニードル
 【5-7-3/49】
 勝率10.2%、連対率24.5%、複勝率30.6%、2勝馬1頭
 2019年種付料:250万円

 ロードカナロア
 【4-2-1/23】
 勝率17.4%、連対率26.1%、複勝率30.4%、2勝馬2頭
 2019年種付料:1500万円

・ファインニードル産駒はウメムスビが唯一の2勝馬でOPのカンナS(中山芝1200)勝ち。ウメムスビは昨年のJRAブリーズアップセールにて1595万円で取引された馬でサンデーサイレンスの4×3のクロスを持つ。カンナS勝ち後は15着→8着→14着と頭打ち気味。

・勝ち上がり後に1勝クラスで入着しているファインニードル産駒が複数おり、2勝馬はまだ増えてきそうな状況。ファインニードルは自身、2勝目が3歳5月、3勝目が3歳10月だった馬で、5歳時に高松宮記念とスプリンターズSを制した馬。晩成寄りの資質を産駒が受け継いでいると、今後さらに成績が伸びてきそうだがどうなるだろうか。

 ダンシングニードル
 勝ち上がり後、2着(さざんか賞)→4着→7着→4着

 トレンディスター
 勝ち上がり後、4着→2着(中京2歳S)→2着(かささぎ賞)→5着

 ルーラルハピネス
 勝ち上がり後、2着(ゆきつばき賞)

ファインニードルとビッグアーサーの比較について

・ビッグアーサーの1stクロップ(現3歳世代)が天皇賞(春)終了時に芝1200m以下で残していた成績と比べると、ファインニードル産駒は種付料に大きな差があるとは言え、成績は凌駕している。この数字を見ると今後、スプリント路線でファインニードル産駒が一定の存在感を発揮していく可能性は十分見せている印象だが、どうなるだろうか。

 ファインニードル
 【5-7-3/49】
 勝率10.2%、連対率24.5%、複勝率30.6%、2勝馬1頭
 2019年種付料:250万円

 ビッグアーサー(1stクロップ)
 【5-4-6/64】
 勝率7.8%、連対率14.1%、複勝率23.4%、2勝馬1頭
 2018年種付料:100万円

・最後に両種牡馬の産駒数(血統登録頭数)を見ていく。両種牡馬ともに現1歳世代は頭数が少なくなっているが、今年デビューの現2歳世代はそれなりに頭数が揃っており、今後の2歳戦で両種牡馬の産駒が芝1200、芝1000辺りでどれほどの活躍をするのか、今から注目していきたい。

 ファインニード ル
 2020年産(現3歳):65
 2021年産(現2歳):72
 2022年産(現1歳):32
 ※2022年種付頭数は110頭。

 ビッグアーサー
 2019年産(現4歳):110
 2020年産(現3歳):111
 2021年産(現2歳):104
 2022年産(現1歳):68
 ※2022年種付頭数は85頭。

※参考記事