今回は5/25に門別で産駒が勝ち上がった新種牡馬・モーニンを取り上げる。新種牡馬産駒の勝ち上がりはこれで先日のキタサンミカヅキ産駒・キタサンヒコボシに続き2頭目。まずは上々のスタートを切ったモーニンの概要をまとめていく。
モーニンの戦績
・モーニンは2012年米国産のヘニーヒューズ産駒。2013年8月のファシィグティプトンサラトガ1歳馬セールにて9万米ドルにて取引され、翌2014年3月のOBS2歳馬トレーニングセールにて33万5000米ドルにて取引された馬。
・3歳5月にデビューし4連勝でオープン入り。5戦目の武蔵野S(G3)が重賞初出走となったが、このレースは勝ったノンコノユメから0.3秒差の3着。年が明け、根岸S(G3)から始動し重賞初制覇。
・7戦目はG1-フェブラリーS。1番人気はノンコノユメ、2番人気がモーニン。以下、ベストウォーリア、コパノリッキーと続いた一戦。好位追走から直線抜け出す競馬で2着のノンコノユメに1馬身1/4差をつけての勝利。このレース時の馬体重は522kg。
・以後、距離を1800mに伸ばしたり、芝を使われたりするも勝ち星はあげられず、日本テレビ盃(Jpn2)とさきたま杯(Jpn2)での2着が最高成績。大敗することも増えていたが、6歳3月のL-コーラルS(阪神ダ1400)で復活。トップハンデ58.5kgを背負い、中団やや後方追走からの差し切り勝ち。次走のかしわ記念(Jpn1)は勝ったゴールドドリームから1.2秒差の6着。
・その後、韓国遠征を敢行。L-コリアスプリント(ダ1200m)に1番人気で出走。初の1200mのレースで序盤はややついて行けず後方からのレースとなるも、直線で外から豪快に伸びて差し切り勝ち。このレースの2着馬・Fight Heroは香港調教馬で翌年のドバイゴールデンシャヒーン(G1)で6着となった馬。
・以後、7歳10月まで7戦するも4着が最高成績となり、スワンS(G2)で18着となったのを最後に引退。優駿スタリオンステーションにて種牡馬入り。28戦8勝、中央で2億4857万円、地方で3880万円、韓国で3億9900万ウォン(当時のレートで約3910万円)の賞金を獲得。引退時に管理した石坂正師が「長い間よく頑張ってくれた」「無事に種馬になれたことが何より」とコメントした通り、息の長い現役生活を送った。
モーニンの血統
・父はヘニーヒューズ。日本供用前の産駒でヘニーヒューズの5thクロップ。種付時(2011年)の種付料は1万2500米ドル。ヘニーヒューズは2007年にアメリカでスタッドインしているが、この時の種付料は4万米ドルで、3rdクロップから代表産駒のBeholder(G1・11勝、エクリプス賞4度受賞)を出すが、種付時(2009年)の種付料は3万米ドル。尚、モーニンの1つ上の世代で同馬主所有のアジアエクスプレスの時の種付料は2万5000米ドル。Beholderの活躍前に種付けされ、誕生したのがモーニンになる。
・母のGigglyは2005年米国産のDistorted Humor産駒、未出走。従妹のRoad to Victoryは米G2-ゴールデンロッドSの勝ち馬。
・母父のDistorted Humorは1993年米国産のフォーティナイナー産駒。現役時は23戦8勝、米重賞5勝。G1勝ちは無いが種牡馬として成功し、Drosselmeyer(BCクラシック、ベルモントS)を筆頭にFunny Cide(ケンタッキーダービー)、Flower Alley(トラヴァーズS)などを輩出。2021年に種牡馬は引退しているが、母父としても大成功を収めており、Arrogate、Golden Sixty、Life Is Good、Constitution、Practical Jokeらを輩出中。Arrogate、Constitution、Practical Jokeは種牡馬としてG1馬を出している点は注目に値するか。
・モーニンの5代血統表は以下の通り。
https://www.jbis.or.jp/horse/0001193277/pedigree/
モーニンの種付頭数、血統登録頭数など
・供用初年度(2020年・種付料50万円)は190頭に種付けされ、血統登録頭数は118頭。
・供用2年目(2021年・種付料50万円)は178頭に種付けされ、血統登録頭数は111頭。
・供用3年目(2022年・種付料80万円)の種付頭数は167頭。
・供用4年目(2023年)の種付料は100万円にアップ
・産駒未デビューの状態で年々、種付料がアップ。種付頭数も圧倒的な数を確保しており人気の一端が伺える。同じヘニーヒューズの後継種牡馬・アジアエクスプレスの種付料が120万円(2020年)→150万円(2021,2022.2023年)と推移中で、これと比べるとかなり安い種付料はやはり魅力的、という評価なのだろう。
・2020年以降、中央ダートサイアーランキングはヘニーヒューズが3連覇中で対抗する種牡馬が見当たらない状況となっているが、2021年以降、種付料は500万円をキープ中。ヘニーヒューズの前に一時代を築いたダートのチャンピオンサイアー・ゴールドアリュールの全盛期の種付料が300万円だった事と比較すると、500万円はかなりの金額。この金額では手が出ない向きや割高感を感じる向きにとって、後継種牡馬のアジアエクスプレスやモーニンは有力な選択肢となっている印象。
・モーニンはデビューが3歳5月だったがデビューから282日でG1を制した馬で、決して仕上がりが遅いタイプには見えない印象。勝ち鞍はマイルまでだったが1800mの日本テレビ盃でアウォーディーのアタマ差2着になった実績があり、1800位なら守備範囲だろうか。
・「中央ダ2000m以上」でヘニーヒューズの日本供用の1stクロップがデビューした2017年以降のデータをみてみると、ヘニーヒューズ産駒の戦績は【4-2-1-52/59】で勝率6.8%、連対率10.2%、複勝率11.9%。明らかに距離的な壁を感じさせる数字で、モーニン産駒が2000m以上でこのレベルを超えてくると推察する根拠を見つけるのはなかなか難しいだろう。
・ちなみにこのデータの1位はキングカメハメハ、2位はハーツクライ、3位はディープインパクトとなるが、4位以下で目立つ種牡馬をランダムにあげると、以下の2頭。大井ダ2000mで行われる東京ダービー、ジャパンダートクラシックを念頭に置くと、両種牡馬の産駒は距離的な不安が無いという点でかなりのアドバンテージがありそうである。
オルフェーヴル【18-17-13-129/177】(勝率10.2%、連対率19.8%、連対率27.1%)
ホッコータルマエ【13-7-13-60/93】(勝率14.0%、連対率21.5%、複勝率35.5%)
モーニン産駒の市場取引馬について
・昨年の北海道セレクションセール、北海道サマーセール、北海道セプテンバーセール、北海道オータムセールにて落札されたモーニン産駒65頭の内、1000万円以上で落札された産駒は9頭。
・最高価格馬は母・トウカイベルタの牡馬(1540万円)。以下、母・ナトゥーラの牡馬(1320万円)、母・ホクセーメジャーの牡馬(1320万円)と続く。
・トウカイベルタ(父・ワイルドラッシュ)の牡馬はユニコーンS(G3)2着のハルクンノテソーロの下で、祖母のトウカイティアラ(父・サンデーサイレンス)はトウカイテイオーの半妹。馬名はキングツェッペリン。5代までにクロスはなし。ナトゥーラ(父・フジキセキ)の牡馬は曽祖母がケンタッキーダービー馬・Winning Colors。Storm Catの4×3、Caroの5×4のクロスを持つ。
・ホクセーメジャー(父・ダイワメジャー)の牡馬は馬名・ゲンブ。美浦の高木登厩舎の所属でノルマンディーサラブレッドレーシングにて1口4.9万円×400口で募集された馬(満口)。ホクセーメジャーの半姉にG2-日経賞を勝ったユキノサンロイヤル(父・サンデーサイレンス)がいる牝系の出身。Mr. Prospectorの5×4のクロスを持つ。
産駒初勝利のパレスレガシーなど
・パレスレガシー(牡2)は門別の角川秀樹厩舎の所属で笹川大晃牧場の生産馬。母父はオルフェーヴル。5/3のデビュー戦(門別ダ1000)はキタサンミカヅキ産駒・キタサンヒコボシが勝った、2020年供用開始種牡馬産駒の限定競走で、パレスレガシーはキタサンヒコボシから1.2秒差の2着。5/25の2戦目(門別ダ1000)は3角過ぎに先頭に立ち、そのまま押し切って勝利。この日の馬体重は476kg。
・5/18に川崎でデビューしたドンドミノ(牡2)は1番人気で2着(勝ち馬から1.3秒差)。昨年の北海道セレクションセールにて1100万円で取引された馬で、母父はゴールドアリュール。祖母のニシノフジムスメは新潟2歳S2着、曽祖母のブランドアートはフラワーCの勝ち馬。デビュー時の馬体重は489kg。