先週6/3(土)の阪神でテラメリタが勝ち上がり、幸先のいいスタートを切った新種牡馬・ブリックスアンドモルタルを2回に渡り取り上げていく。2019年のエクリプス賞年度代表馬という輝かしい経歴を引っ提げての種牡馬入りとなった大物だが、期待に見合う戦果をあげられるか。今回は戦績と血統についてまとめていく。
ブリックスアンドモルタルの戦績
・ブリックスアンドモルタルは2014年米国産のGiant’s Causeway産駒。現役時は13戦11勝、2019年のエクリプス賞年度代表馬、最優秀芝牡馬に選出された馬。2015年9月のキーンランド1歳馬セールにて20万米ドルで取引され、Chad C. Brown厩舎に入厩。
・3歳1月にデビューし、デビュー4連勝で3歳8月にG2-アメリカ競馬名誉の殿堂博物館S(t8.5f)に勝利(ちなみにこの時の2着馬は同世代のハーツクライ産駒で後にG1馬となるYoshida)。以後、2戦連続で重賞3着となるが、後肢に跛行を発症し、重大な手術を要するほどその症状は悪化。手術の成功の見込みは五分五分だったが、馬主たちは思い切って高名な獣医師ラリー・ブラムラージ(Larry Bramlage)博士に手術を依頼。結果、手術は成功し期待を上回る回復を見せ、1年近い休養を経て4歳12月のオプショナルクレーミングで復帰。これを制すると、翌年、5歳となったブリックスアンドモルタルは快進撃を見せることになる。
※ラリー・ブラムラージ博士は国際的に認められた馬の整形外科医。米国のサラブレッド競馬への献身と貢献に対して1994年ジョッキークラブ金メダルを受賞。1997年には骨折の内固定に関する業績に対し、ティアリンクホッホモール賞、1998年には英国馬獣医師会からの特別功労賞を受賞。さらに2009年には馬の球節関節固定術の開発に対して米国獣医師会レジェンド賞を受賞。博士による手術が成功しなかった場合、ブリックスアンドモルタルのその後の活躍は無かったと思われる為、博士のプロフィールの紹介に多めの文字数を割かせて頂いた点はご容赦願いたい。
・復帰2戦目は5歳1月のG1-ペガサスワールドカップターフ招待S(t9.5f)。1番人気は先に触れたハーツクライ産駒・Yoshida。この時点で芝とダートのG1を制していた馬で、ブリックスアンドモルタルは2番人気。日本からアエロリットも出走していたレースだが、ブリックスアンドモルタルは直線俊敏な差し脚を見せ勝利。
・続いて3月のG2-ムニスメモリアルH(t9f)も制すると、5月のG1-ターフクラシックS(t9f)も勝利。さらに6月のG1-マンハッタンS(t10f)も制覇(以下のレース動画)。中団追走から直線スパっと切れる末脚で、あっさりケリをつける勝ち方で、これで復帰後5連勝。
・マンハッタンSを勝った後、8/7に吉田照哉氏が種牡馬としての所有権を購入したことが発表され、翌年から日本で種牡馬入りすることが決定。発表後に出走した8/10のG1-アーリントンミリオン(t10f)はいつも通り、中団追走からの差し切り勝ち。これで4つ目のG1タイトルを獲得。
・現役最後のレースは5歳11月、サンタアニタ競馬場でのG1-BCターフ(t12f)。初の12f、欧州調教馬との対戦など、不確定要素もあったが1番人気に推され、同年の英ダービー馬・Anthony Van Dyckが2番人気。例によって中団追走から直線鋭伸。同じGiant’s Causeway産駒のUnitedをアタマ差抑えて1着。
ブリックスアンドモルタルの血統
・父は1997年米国産のGiant’s Causeway(その父・Storm Cat)。現役時は13戦9勝、3歳6月のセントジェームズパレスSからエクリプスS、サセックスS、インターナショナルS、アイリッシュチャンピオンSとG1を5連勝し、2000年のカルティエ賞年度代表馬となった名馬。2009、2010年の北米リーディングサイアーとなり、Shamardal(仏2冠馬)、Footstepsinthesand(英2000ギニー)、エイシンアポロン(マイルチャンピオンシップ)などを輩出。ブリックスアンドモルタルは13thクロップ。
・母のBeyond The Waves(その父・Ocean Crest)は1997年米国産、25戦3勝、ロワイヤリュー賞(G2)2着、フロール賞(G3)2着、コリーダ賞(G3)2着、ビウィッチS(G3)2着、ヴァントー賞(G3)3着。母として優秀でブリックスアンドモルタルの他にEmerald Beech(米G3-グレンズフォールズSの勝ち馬)、Beyond Smart(ステークス勝ち馬)、Sir Ector(重賞入着)、Water View(リステッド入着)を輩出。
・ブリックスアンドモルタルの5代血統表は以下の通り。Storm Birdの3×3のクロスを持つ点が特徴的。
http://p.bogus.jp/ped.php?id=213077
今週出走予定のブリックスアンドモルタル産駒
6/10(土)函館5R(芝1000m)
ヒポカンポ(牝2)
母・レコードチェイサー、母父・ディープブリランテ
(美浦)伊藤圭三、生産者・グランド牧場
・2022年北海道サマーセールにて935万円で取引された馬。母のレコードチェイサーは14戦4勝(門別2勝、京都芝1200、函館芝1200)。ヒポカンポは初仔。調教の動きも目立つものではないようで、あまり人気にはならなさそうだが、この距離でどんなレースをするか。
6/10(土)東京5R(芝1600m)
ゴンバデカーブース(牡2)
母・アッフィラート、母父・ディープインパクト
(美浦)堀宣行、生産者・社台コーポレーション白老ファーム
・G1レーシングにて1口125万円×40口で募集された馬。母のアッフィラートは中央19戦4勝(中山芝1800、東京芝1600、中京芝1600、小倉芝1800)、中山牝馬S3着。祖母のレディオブヴェニスは米重賞3勝。ゴンバデカーブースは2番仔。ノーザンファーム産の2頭(モーリス産駒・エリカエスティーム、エピファネイア産駒・ミッキーアプローズ)と共に上位人気が予想される。ここでノーザンファーム産の2騎を撃破することになると、ブリックスアンドモルタル産駒の評判は一躍高まることになるがどうなるか。