新種牡馬産駒データ考【37】ブリックスアンドモルタル【2】今後の展望について

今週もブリックスアンドモルタルを取り上げる。先週6/10(土)の東京でゴンバデカーブースが勝ち上がり、これで中央での勝ち上がりは早くも2頭。種付頭数、血統登録頭数、市場取引馬等について今週は触れていく。

※ブリックスアンドモルタルの戦績や血統に触れた、先週の新種牡馬産駒データ考【36】ブリックスアンドモルタル【1】戦績と血統について、は以下をご参照下さい。

ブリックスアンドモルタルの種付頭数、血統登録頭数など

・供用初年度(2020年・種付料600万円)は178頭に種付けされ、血統登録頭数は107頭。
 ※社台ファームでは30頭、ノーザンファームでは21頭に種付け

・供用2年目(2021年・種付料600万円)は180頭に種付けされ、血統登録頭数は129頭。
 ※社台ファームでは51頭、ノーザンファームでは17頭に種付け

・供用3年目(2022年・種付料600万円)の種付頭数は127頭。
 ※社台ファームでは29頭、ノーザンファームでは16頭に種付け

・社台ファームとノーザンファームの種付頭数を見ると、圧倒的に前者が多くなっている点が目立つ。現3歳世代のマインドユアビスケッツ産駒で多くの勝ち鞍をあげた社台ファームが、2歳世代で同様にブリックスアンドモルタル産駒で多くの勝利をあげることが出来るか、がまず注目ポイントとなる。その点において当然、新種牡馬ということで見込みのある馬のデビューを早くする戦略もあるのだろうが、社台ファームの生産馬であるテラメリタが早々に勝ち上がったのは良い兆候と言えようか。

・ブリックスアンドモルタルは3歳1月デビューでそこから4連勝した馬で、全盛期は1年近い長期休養があったこともあり5歳時。父の戦績からは晩成というイメージは無く、早めに能力を示し、一線級に名乗りをあげていく産駒も出てきそうな印象。

・これまでの中央での2頭の勝ち上がりはいずれも芝マイル戦。今後、ローカル開催で芝1200などのレースが増えてくる中でどれだけ勝ち鞍を上げられるかは未知数で、こうした条件のレースを主戦場とする種牡馬の産駒に対しては分が悪いとみるのが妥当だろうか。距離は2400までは守備範囲となりそうで、ダートや短距離をみて配合される事は少ないであろうことが想定される為、2歳戦はローカル開催が終わる秋以降に勝ち鞍をより多く積み重ねていきそうなイメージだろうか。

ブリックスアンドモルタル産駒の現実的なライバルとは

・そこで問題になるのが路線的に競合しそうな種牡馬の産駒との比較になるだろう。現4歳世代において、ディープインパクト産駒が1着となったレースでドゥラメンテ産駒が最も多く2着になっていたように、ブリックスアンドモルタル産駒が先輩種牡馬の産駒にアタマを抑えられ、思ったほど勝ち鞍が伸びない可能性はある。

・以下に芝中距離路線でライバルとなりそうな種牡馬の2歳世代の血統登録頭数をまとめている(2020年の種付料を併記)。この世代はキズナ、エピファネイア産駒の数が圧倒的に多く、これらの産駒との対決が多くなりそうだが、2020年の種付料を比較すると、キズナは600万円、エピファネイアは500万円、ブリックスアンドモルタルは600万円と大きな差はついていない。ちなみに同じ新種牡馬ではレイデオロがブリックスアンドモルタルと同額の600万円の種付料で、初年度産駒は128頭とブリックスアンドモルタルより21頭多い。尚、この世代で最も種付料が高かったのはロードカナロアで2000万円。

・エピファネイアは前年(2019年)の種付料は250万円だったが、昨年2歳リーディングの座に就いており、現2歳世代の種付料は倍の500万円になっていることから繁殖の質がアップしていると思われる状況。血統登録頭数も154頭→160頭と微増しており、今年の2歳リーディングの最有力候補といって差し支えない状況。

 キズナ:168頭(600万円)
 エピファネイア160頭(500万円)
 ドゥラメンテ118頭(700万円)
 モーリス105頭(400万円)
 キタサンブラック54頭(400万円)
 ハーツクライ:35頭(ラストクロップ・1000万円)
 新種牡馬・ブリックスアンドモルタル:107頭(600万円)
 新種牡馬・レイデオロ:128頭(600万円)

・昨年の2歳戦でエピファネイア産駒は35勝しているが、この内、芝マイル以上で24勝。この芝マイル以上のレースでブリックスアンドモルタル産駒がどれだけ勝ち鞍を上げられるか、がまず注目となろう。言い換えると、昨年エピファネイア産駒が稼いでいた条件でブリックスアンドモルタル産駒がエピファネイアのパイをどれだけ切り崩せるかは、2歳リーディングの行方にも影響を与えかねない見どころの一つになりそうである。

ブリックスアンドモルタル産駒の市場取引馬について

・2021年のセレクトセール(当歳)、2022年のセレクトセール、北海道セレクションセール、北海道サマーセール、北海道オータムセール、2023年の千葉サラブレッドセールにて28頭のブリックスアンドモルタル産駒が取引されている。取引価格上位馬、注目馬を以下にまとめる。

母・ランズエッジの牡馬(馬名:ボスコヴェローチェ)

(栗東)武幸四郎、ノーザンファーム産
取引価格:1億1550万円(2021年セレクトセール当歳)

・母のランズエッジ(その父・ダンスインザダーク)はディープインパクト、ブラックタイドの半妹。母としてロカ(クイーンC3着)、ヴァルコス(青葉賞2着)を輩出。ボスコヴェローチェは10番仔。

母・マキシマムドパリの牡馬(馬名:アスクカムオンモア)

社台ファーム産
取引価格:1億1485万円(2022年セレクトセール)

・母のマキシマムドパリ(その父・キングカメハメハ)は愛知杯、マーメイドSの勝ち馬で秋華賞3着など重賞入着3回。アスクカムオンモアは3番仔。母の従妹にキンショーユキヒメ(福島牝馬S)。

母・マンハッタンセレブの牡馬(馬名:スピンザブラッド)

社台ファーム産
取引価格:9900万円(2021年セレクトセール当歳)

・母のマンハッタンセレブ(その父・サンデーサイレンス)はマンハッタンカフェの全妹。従姉にアプリコットフィズ(クイーンC、クイーンS)、従兄にダービーフィズ(函館記念)。スピンザブラッドは14番仔。

母・エルディアマンテの牡馬(馬名:セングンバンバ)

ノーザンファーム産
取引価格:8580万円(2022年セレクトセール)

・母のエルディアマンテ(その父・キングカメハメハ)はディアデラマドレ(府中牝馬S、マーメイドS、愛知杯)、ドレッドノータス(京都大賞典、京都2歳S)の下。セングンバンバは2番仔。

母・レーヌミノルの牡馬(馬名:グローリアミノル)

フジワラファーム産
取引価格:7260万円(2022年北海道セレクションセール)

・母のレーヌミノル(その父・ダイワメジャー)は2017年の桜花賞馬。グローリアミノルは2番仔。

今週出走予定のブリックスアンドモルタル産駒

6/18(日)阪神5R(芝1600m)

イーグルノワール(牡2)
母・アルティマブラッド、母父・シンボリクリスエス
(栗東)音無秀孝、生産者・社台ファーム

・1口125万円×40口で社台レースホースにて募集された馬。母のアルティマブラッドは中央29戦6勝、L-ラピスラズリS(中山芝1200)の勝ち馬。イーグルノワールは2番仔で初仔のメロディーフェア(父・ノヴェリスト)は7戦未勝利。祖母のアルティマトゥーレ(セントウルS、シルクロードS)、曽祖母のエアトゥーレ(阪神牝馬S)はいずれも重賞勝ち馬。アルティマトゥーレの下に皐月賞馬・キャプテントゥーレ、クランモンタナ(小倉記念)、シルヴァーソニック(ステイヤーズS、レッドシーターフH)。

・「血統はいいがどんなものか。新馬戦だけはやってみないと分からん。確かに攻め馬は思ったより時計は出たが」と音無師はコメント。母はスプリンターだったが、「アルティマって感じはない。マイルの距離も良さそう」と攻め馬担当の生野助手がコメント。芝マイル戦で3頭目のブリックスアンドモルタル産駒の勝ち上がり馬となれるか。