新種牡馬産駒データ考【38】スワーヴリチャード、ハーツクライ後継へ順調な船出

今回は先週、ヴェロキラプトル(新馬)、コラソンビート(未勝利)の2頭が一気に勝ち上がったスワーヴリチャード産駒を取り上げる。ハーツクライの後継種牡馬として期待がかかるが、幸先のいいスタートを切った印象。戦績、血統などについてまとめていく。

戦績

・スワーヴリチャードは2014年ノーザンファーム産のハーツクライ産駒。現役時は19戦6勝、G1-ジャパンカップ、G1-大阪杯、G2-金鯱賞、G2-アルゼンチン共和国杯、G3-共同通信杯の勝ち馬。他にダービー2着、宝塚記念3着、ドバイシーマクラシック3着、ジャパンカップ3着、安田記念3着。

・2歳時に東京スポーツ杯2着、3歳2月に共同通信杯勝ち、と好成績をおさめ、クラシック候補と目されたが、2番人気で出走した皐月賞はアルアインの6着。続くダービーはアドミラブル(3.4倍)、レイデオロ(5.3倍)に次ぐ3番人気(5.9倍)に推される。1000m、63.2秒のスローペースを見越して早めに上位進出したレイデオロのC.ルメールの好騎乗に屈し、このレースは3/4身差の2着。

・最初のG1タイトルは4歳4月のG1-大阪杯(1番人気)。鞍上は前年のアルゼンチン共和国杯から手綱を取っていたM.デムーロ。初手は後ろから2頭目に位置し、向う正面から一気にまくり上げると、4角では先頭に立ち、そのまま押し切っての勝利。

・大阪杯の後はG1での3着が4回あるも(安田記念、ジャパンC、ドバイシーマクラシック、宝塚記念)、勝利をあげることは出来なかったが、5歳11月のG1-ジャパンカップ(3番人気)で2つ目のG1タイトルを獲得。鞍上はテン乗りとなるO.マーフィー。中団イン追走から、直線ラチ沿いに進路を取ると一気に突き抜けての差し切り勝ち。重馬場を全く苦にしないパワフルな走りは実に印象的。

血統

・父はハーツクライでスワーヴリチャードはハーツクライの7thクロップ。この世代はハーツクライの当たり年でG1馬・リスグラシュー、Yoshida(ウッドワードS、ターフクラシックS)が同じ世代。ちなみに2014年のセレクトセール(当歳)でスワーヴリチャードは1億6740万円で取引されているが、これはこの世代のハーツクライ産駒の最高価格。翌2015年のセレクトセール(1歳)のハーツクライ産駒の最高価格馬(1億152万円)はYoshida。両馬とも期待と評価に見合う活躍を後に見せたのは素晴らしいといえる。

・母のピラミマは2005年米国産のUnbridled’s Song産駒。現役時は2戦0勝。母として本馬以外にも以下の産駒を輩出。

 初仔:ナンヨーカノン(父・フジキセキ、中央4勝)
 2番仔:バンドワゴン(父・ホワイトマズル、中央4勝、きさらぎ賞2着)
 3番仔:カレンオプシス(父・サムライハート、中央2勝)
 4番仔:エマノン(父・ハーツクライ、中央4勝)
 5番仔:スワーヴリチャード
 6番仔:ルナステラ(父・ディープインパクト、中央3勝)
 8番仔:ルナシオン(父・ディープインパクト、中央3勝)
 11番仔:バロッサヴァレー(父・ハーツクライ中央1勝、現役)

祖母のキャリアコレクション(その父・General Meeting)は米2歳G3-ランダルースS(d6f)、米2歳G3-ソレントS(d6.5f)の勝ち馬で、BCジュヴェナイルフィリーズ2着、ハリウッドスターレットS2着。2004年11月のキーンランドMixedセールにて、Unbridled’s Songとの仔(後のピラミア)を受胎した状態で上場され、45万米ドルにて吉田勝己氏が落札。

これまでの中央2歳戦戦績

【2-1-2-5/10】
勝率20.0%、連対率30.0%、複勝率50.0%
9頭がデビューし、2頭が勝ち上がり(22.2%)

・現時点でモーリス(4勝)、ヘニーヒューズ(3勝)に次ぐ3位タイの2勝をあげており、同じ新種牡馬ではブリックスアンドモルタルと同数。他に2勝をあげている種牡馬にダイワメジャー、サトノクラウン、ルーラーシップがいる。

・デビュー戦で2着(0.5秒差)、3着(0.2秒差)になった馬が各1頭おり、これらの馬が未勝利戦に出てくれば好勝負は必至な印象で勝ち上がり頭数はまだ増えていきそうな情勢。特にデビュー戦3着のシトラール(牡2)は母がBCディスタフなどG1・6勝、エクリプス賞最優秀古牝馬のジンジャーパンチで、ポタジェ、ルージュバックの下という良血馬。先々も含め楽しみな一頭と言えそうである。

・6/24の新馬戦(東京芝1800)で勝ち上がったヴェロキラプトル(牡2)は社台ファームの生産馬で母父はGiant’s Causeway。2022年のセレクトセールにて6160万円で落札された馬。伯父にLoup Sauvage(イスパーン賞)、Loup Solitaire(仏グランクリテリウム)の2頭のG1馬がいる。11頭立ての5番人気でのデビュー戦となったが逃げきって勝利。

・6/25の未勝利戦(東京芝1600)で勝ち上がったコラソンビート(牝2)はビッグレッドファームの生産馬で母父はオルフェーヴル。サラブレッドクラブラフィアンにて1口11万円×100口で募集された馬で、サンデーサイレンスの3×4のクロスを持つ。叔母にウインマリリン(G1-香港ヴァーズ、G2-フローラS、G2-日経賞、G2-オールカマー)、叔父にウインマーレライ(G3-ラジオNIKKEI賞)がいる。6/4の新馬戦を3着とし、6/25の未勝利戦に1番人気で出走。2着に3馬身差をつけての逃げ切り勝ち。

種付頭数、血統登録頭数など

・供用初年度(2020年)は123頭に種付けされ、血統登録頭数は82頭。
・供用2年目(2021年)は94頭に種付けされ、血統登録頭数は64頭。
・供用3年目(2022年)の種付頭数は81頭。

・種付料は供用4年目(2023年)も含めて200万円で推移。今年供用されている「父・ハーツクライ」の種牡馬は以下の7頭になるが、今後、スタッドインすることになるであろうドウデュースも含めた後継争いは激化していきそうである。まずは今年産駒デビュー同士のスワーヴリチャード産駒とシュヴァルグラン産駒との比較は注目の的となる。尚、併記した種付料はフリーリターン特約付きの金額で統一したもので、供用場所は今年のものになる。

ジャスタウェイ
 (250万円、ブリーダーズスタリオンステーション)
スワーヴリチャード
 (200万円・社台SS、今年産駒デビュー)
サリオス
 (150万円・社台SS、今年供用開始)
シュヴァルグラン
 (100万円・ブリーダーズスタリオンステーション、今年産駒デビュー)
ウインバリアシオン
 (30万円・スプリングファーム(青森))
ロジクライ
 (プライベート・Yogibo Versailles Stable)
ワンアンドオンリー
 (プライベート・ストームファームコーポレーション(熊本))

・ちなみに現時点のシュヴァルグラン産駒の中央戦績は以下の通り。
 【0-1-0-2/3】
 3頭がデビューし、9着(11番人気)、2着(6番人気)、9着(11番人気)。
 6/25現在の中央CPI:0.42、中央AEI:0.69

・スワーヴリチャードは中央CPI:4.23、中央AEI:1.62。繁殖の質は種付料に比例する形で現状は明らかにスワーヴリチャードが上回っている。ハーツクライ後継争いにおいてまずはスワーヴリチャードが先行態勢に入っている印象だがどうなるか。ちなみに地方ではスワーヴリチャード産駒は2頭、シュヴァルグラン産駒は4頭がデビューしているが、いずれも勝ち馬は出ていない。

市場取引馬について

・現2歳馬で市場取引馬の内、取引価格上位3頭は以下の通り。1億超えの馬はいないが、重賞勝ち馬の下や近親に活躍馬がいる馬が揃っている。スワーヴリチャード自身が前述の通り、同世代のハーツクライ産駒の中で最高価格馬だったこともあり、これらの中から活躍馬が出てくる可能性も。

母・シャンブルドットの牝馬(馬名:シャドフ)

(栗東)庄野靖志、2022年セレクトセール:7260万円
ノーザンファーム産

・母のシャンブルドットは2016年愛国産のLope de Vega産駒、1戦0勝。シャドフは2番仔。初仔のベルシャンブルは中央現役1勝。シャンブルドットの半姉・イルーシヴウェーヴは仏G1-プールデッセデプーリッシュ(仏1000ギニー)を含む仏重賞4勝。産駒にサトノソロモン(京都新聞杯3着)、アドマイヤビルゴ(L-カシオペアS、L-アンドロメダS)など。

母・パシオンルージュの牝馬(馬名:ホウオウペトリュス)

2021年セレクトセール(当歳):6380万円
ノーザンファーム産

・母のパシオンルージュは2008年松田牧場産のボストンハーバー産駒、27戦3勝。ホウオウペトリュスは7番仔。4番仔のファインルージュ(父・キズナ)はG3-フェアリーS、G3-紫苑Sの勝ち馬で、秋華賞2着、ヴィクトリアマイル2着、桜花賞3着。

母・オールドタイムワルツの牡馬(馬名:アスクオーバーマン)

2021年セレクトセール(当歳):6380万円

・母のオールドタイムワルツは2014年米国産のWar Front産駒、現役時はA P O’Brien師に管理され、10戦1勝。アスクオーバーマンは3番仔。初仔のアグリはG3-阪急杯の勝ち馬で中央現役(5勝)。祖母のTogether(父・Galileo)は米G1-クイーンエリザベス2世チャレンジカップS、愛G3-シルバーフラッシュSの勝ち馬で、英1000ギニー2着、愛1000ギニー2着、愛メイトロンS2着などG1での2着が5回。