注目の海外種牡馬① Galileo(ガリレオ)

この稿では、直近の海外GⅠ競走勝馬がどの父系から出ているかを分析し、今後の世界的な父系発展の展望の一助とすべく、考察を進めていく。まずは、2017年の英愛仏米の全平地GⅠ勝馬を、父系別、芝・ダート別に下記のリンクにまとめてあるので、ご参照いただき、全体像を把握する上での一助としていただければ幸いである。

http://umahei.com/page-3269

上記対象GⅠを制した計136頭の勝馬の内、下記の11頭を輩出と、この年も断トツの存在感を示したのは大種牡馬 Galileo(ガリレオ)。この11頭の内8頭は、2017年中に複数のGⅠを制しており、数だけでなく、粒の大きさでも他を圧していると言える。さらに、2017年には直仔NathanielがEnable(2017年に凱旋門賞などGⅠを5勝)を、FrankelがチャンピオンS勝ちのCracksmanを、Teofiloが仏ロマネ賞勝ちのAjman Princessを出すなど、父系の発展という意味でも密度の濃い一年だったと言えよう。

Galileoのプロフィール

ご存知の方も多いと思うので、以下簡潔に。Galileoは1998年生まれ(同年代にジャングルポケット、マンハッタンカフェなど)のアイルランド産馬で、父に大種牡馬Sadler’s Wells、母に凱旋門賞馬Urban Sea(by Miswaki)、半弟にSea the Stars、叔父にKing’s Bestと、最高クラスの血統背景をもつ。競走成績は通算8戦6勝で、英ダービー、愛ダービー、キングジョージ&QESとGⅠを3勝。供用初年度から大成功を収め、中でも、14戦14勝の怪物Frankelの快進撃は記憶に新しいところ。その他の代表産駒にNew Approach、Australia、Found、Gleneagles、Highland Reel、Mindingなど、チャンピオンホースがずらりと並ぶ。

以下、2017年の産駒海外GⅠ勝馬を列挙する(太字は2017年に複数のGⅠ勝ち)。全て芝のレースでの勝馬である。

  • Churchill 英2000ギニー、愛2000ギニー
  • Winter 英1000ギニー、愛1000ギニー、英コロネーションS、英ナッソーS
  • Highland Reel 英コロネーションC、英プリンスオブウェールズS
  • Ulysees 英エクリプスS、英インターナショナルS
  • Capri 英セントレジャーS、愛プリティーポリーS
  • Clemmie 英チヴァリーパークS
  • Hydrangea 英チャンピオンフィリー&メアS、愛メイトロンS
  • Decorated Knight 愛タタソールゴールドC、愛チャンピオンS
  • Happily 愛モイグレアスタッドS、仏ジャン・リュック・ラガルデール賞
  • Order of St George 愛セントレジャーS
  • Rhododendron 仏オペラ賞
Galileo産駒の日本での供用

上述の猛威ぶりをみると意外感はあるが、本邦初供用となったのはGalileoの供用5年目の産駒ケープブランコ(Cape Blanco・愛ダービーや米アーリントンミリオンなどGⅠを5勝)で、しかも同馬は米国で3年間供用された後の日本輸出であるため、国内への後継導入には相当の時間を要したことになる。背景にはGalileoの父Sadler’s Wellsの直仔が日本でオペラハウスを除き良績を残せなかったこと、Galileoの持込や外国産馬で日本で活躍する馬がいなかったこと(これまで計37頭の血統登録がされたが、目立った活躍馬は出ず)などにより、適正面での疑問が根強かったことが影響しているものとみられる。

ただ、日本におけるディープインパクトのように、欧州でもGalileoの後継候補には事欠かない状況であろうし、今後、スピードに秀でたタイプのGalileo後継導入が叶えば、根を下ろす可能性もあるのでないだろうか?

・ケープブランコ

ケープブランコについては、また触れる機会があるだろうが、日本での初年度産駒は現在2歳で、今夏のデビューを控えている状態。米国での供用時の産駒は、英米でリステッドレース2着がある程度と不振で、それらを反映して日本での種付頭数も初年度の132頭→47頭→26頭、と急減してしまっており、このタイミングでは好材料が見当たらない状況に陥っている。セレクト・セレクションセールの1歳セリではそれなりの売却とはなったが…なお、ケープブランコ産駒の日本への持込・外国産馬はこれまで3頭で、その内、オクラホマがダ1800戦を2勝している。

・メイビー、リリーオブザヴァレー、ラッシュラッシーズ

上述の3頭はGalileo産駒の牝馬でいずれもGⅠ競走を勝っており、かつ、ディープインパクトと交配されている、という共通点がある。そして、メイビーの15(父ディープインパクト。ノーザンファーム生産)こそが、欧州に輸出され昨年の英レーシングポストT・GⅠを制し、今年の英クラシック候補として期待されているサクソンウォリアー(Saxon Warrior)に他ならない。また、リリーオブザヴァレーの13(父ディープインパクト。社台ファーム生産)は、青葉賞・GⅡを勝ってダービーでも期待されたヴァンキッシュラン。ラッシュラッシーズとディープインパクトの間に生まれた2頭の牡馬(ダブルバインド、ボナヴィーゴ)は、現在のところ未勝利となっているが勝利に手が届きそうなところ。日欧のBest to Bestの結晶、サクソンウォリアーの今後には注目が集まるところ。